今週のレンジ予想[毎週月曜日 更新]

今週のレンジ予想
12月9日 〜 12月15日
ドル/円
147.00〜152.00
ユーロ/円
155.00〜161.00
豪ドル/円
94.00〜99.00

先週末に発表された「11月の雇用統計」では、雇用者数は上振れしたものの、失業率が予想よりも悪化しており相場は上下しましたが、結局、FRBが金融緩和策を踏みとどまるほどの内容ではなかったことでドル売りが優勢となりました。ボウマンFRB理事は今回の雇用統計の結果を受け、「現時点において労働市場よりもインフレの方がより大きな懸念だと引き続き見ている」と講演で述べていましたが、これが現時点で米国が置かれている状況に関して正鵠を射ている見方だと考えられます。

その米国のインフレと労働市場の今年これまでの推移を改めて振り返ってみたいと思います。インフレ率は2021年3月辺りから、それまでとは異なり急激な上昇を見せ始めました。コロナ禍からの回復基調やサプライチェーンの混乱、さらにはロシアのウクライナへの侵攻からエネルギー価格の高騰等が引き金でした。インフレ率はその後も急激に上昇し、2022年6月には「9.1%」(年率)に達しています。その後FRBは2022年9月の0.75%という、通常の3倍となる大幅な政策金利引き上げを含む、強力な金融引き締めを行い、インフレ阻止に強い姿勢を見せました。その効果もありインフレ率は徐々に低下に向かい、今年9月には「2.4%」と、FRBが目標とする「2.0%」にもう一息という水準にまで低下して来ました。ただ、10月には再び上昇に向かい、現在は足踏み状態です。

一方労働市場の方は、今年最初の3カ月は平均でも「27.9万人」と、極めて好調なスタートを切り、人手不足を反映して求人件数も850万件を大きく超える状況でした。しかし、9月に発表された雇用者数が予想を大きく下回り、市場は「景気抑制的な金融政策が長期にわたり続いたことで、好調だった労働市場にも影響が及んできた」と考え、FRBが早期に金融緩和策に転換するとの見方が急速に台頭しました。FRBによる急速な利下げは日米金差縮小に向かうと予想され、ドル円は円の買い戻しが進み、一時は139円台半ばまでドル売り円買いが加速しました。ただ、これも結局上記11月の雇用者数が示したように、巡航速度に戻り好調な労働市場が引き続き健在であることが確認されました。

今後FRBが労働市場ではなく、再びインフレに目を向けるようなら、12月会合での利下げがあったとしても、これまでに予想されていたほど政策金利は下がらない可能性があります。来週の会合で仮に25bpの利下げを決めたとしても、水準にもよりますが、ほぼ織り込まれていることから、それほどドル売りが進まないかもしれません。注目したいのは、次回会合で発表されるFOMCメンバーによる「ドットチャート」です。メンバーが2025年の政策金利の水準がどの程度になると予想しているのかが判明します。少なくとも前回9月の見通しよりも上方に修正されていると思われます。

今週の注目材料

  • 12/9(月)
    日 7−9月GDP(改定値)
    日 10月国際収支・経常収支
    日 10月貿易収支
    日 11月景気ウオッチャー調査
    中 中国11月消費者物価指数
    中 中国11月生産者物価指数
    米 NY連銀インフレ期待(11月)
  • 12/10(火)
    豪 豪11月NAB企業景況感指数
    豪 RBA、キャッシュターゲット
    中 中国 11月貿易統計
    独 独11月消費者物価指数(改定値)
    英 英11月消費者物価指数
  • 12/11(水)
    米 11月消費者物価指数
    米 11月財政収支
    加 カナダ中銀政策金利発表
  • 12/12(木)
    豪 豪11月雇用統計
    欧 ECB政策金利発表
    欧 ラガルド・ECB総裁記者会見
    英 英10月鉱工業生産
    英 英10月貿易収支
    米 新規失業保険申請件数
    米 11月生産者物価指数
    米 7−9月期家計純資産変化
    加 カナダ10月住宅着工件数
  • 12/13(金)
    日 7−9月期日銀短観
    英 英10月鉱工業生産
    英 英10月貿易収支
    米 11月輸入物価指数
    米 11月輸出物価指数
  • 12/14(土)
  • 12/15(日)
 
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。

・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。

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外為オンラインのシニアアナリスト 
佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。