先週末のNYで153円80銭まで買われたドル円は、週明け東京時間でも上値を追い、153円97銭までドル高が進んでいます。日米金利差の拡大を手がかりに、ドルが連日買われ、日足チャートでは先週のローソク足は全て「陽線」を示しています。つまり、東京時間の寄り付きよりも、NYの引け値の方が高く、結局NY市場でドル高が進んでいることを表しています。強い経済指標の発表や米金利の上昇を手掛かりに、主にNY時間にドルが買われていることになります。
今週は今年最後の荒れ相場になる可能性があります。「今日のアナリストレポート」でも触れましたが、FRBによる25ベーシスポイントの利下げはほぼ確実とみられ、日銀の方は見送りの可能性が高いとみられますが、こちらはまだ不確実だと言えます。16日の日経新聞でも、「日銀、利上げ見送りを視野に」という見出しで、今回は見送りに傾いている可能性が高いようだと伝えていました。筆者の懇意にしている日銀記者クラブ詰めの彼に言わせると、「日銀内部の話だと、利上げは半年に1回程度だといった認識があるようだ」と話していました。日銀による利上げで「金利のある世界」に足を踏み入れたのは今年7月31日でした。仮に半年に1度の利上げが前提となるとしたら、今回は見送られ、来年1月の会合で追加利上げがなされたら、彼の情報はかなりの精度を持つことになります。因みに、7月に想定外の利上げを決めた際、ドル円は151円台半ばから153円80銭まで急騰しましたが、153円80銭というのは、偶然ですが足元の相場とほぼ同水準です。
またFRBにしても今会合で利下げを決めたとしても、来年以降のトランプ政権の政策実施を考慮した場合、インフレ圧力が高まることが予想され、このまま順調に利下げを継続できる保証はありません。FOMCが9月に公表した経済見通しでは、2025年度のドットチャートが示した利下げ回数は25ベーシスポイントを前提とすれば「4回」でした。今回もドットチャートが示されますが、少なくとも4回の利下げはなく、「3回、もしくは2回」という予想が示されるのではないかと思われます。米大手銀行のウェルズファーゴは「25年の利下げ回数は、3、6、9月の計3回になる」との予想を公表しています。
注意したいのは、日米金融当局トップの発言です。FOMCメンバーの多くは、「今後金融政策の中心に座るのは、労働市場の動向ではなく、インフレ見通しだ」という見方で大方一致しているものと思われます。パウエル議長が会見でこの見方をより鮮明にするようだと、ドルがもう一段買われる可能性があります。また植田総裁も、「経済・物価見通しが日銀の想定通りに推移すれば、追加利上げの選択肢は排除しない」といった文言を繰り返すとみていますが、加えてどのような言葉を添えて来るのかというところです。それでも気を付けたいのが、会合前までに大幅な円安が進行した場合、急遽利上げに踏み切る可能性はないとは言えないという点です。可能性は否定できませんが、それでも個人的には155円まで円安が進んだ程度では、利上げに踏み切る可能性は低いと予想します。BNPパリバは「ドル円が160円台を抜けない限り、12月利上げはない」と、かなりタカ派的な見通しを維持しています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。