就任演説の内容次第では相場が大きく動く可能性もあるのではないかと予想していた先週20日のトランプ大統領の就任式でしたが、多少動きはあったものの、結果的には155−157円のレンジをどちらかに大きく抜け切る動きには至っていません。さらに先週末の日銀決定会合もひとまず無事にこなして、今朝は156円台を少し下回る水準で推移している状況です。
引き続き材料視されるのが、29日のFOMC会合になります。ここでも政策金利の据え置きはほぼ決まりかと思いますが、これまで通り、パウエル議長がデータ重視の姿勢を維持し、市場の緩やかな利下げ期待を修正しない限り、相場へのインパクトは限定的と見られます。昨年12月時点の労働市場は依然好調で、「FRBは労働市場への刺激策よりも、インフレをこれ以上加速させないことに注力する」とする見立てが、市場のコンセンサスかと思います。そうなると、今年の利下げ回数は多くて2回、場合によっては1回に限定される可能性もないとは言えません。市場参加者だけではなく金融当局者の多くも、今後のトランプ大統領の言動あるいは、公言した政策の実施状況次第ではインフレが再燃する可能性が高く、警戒感を解いてはいません。
テレビなど多くのメディアでも、大統領就任以来連日「トランプ大統領」という文字や、言葉を目や耳にしない日はありません。トランプ氏は、相手から自国に出来るだけ有利な条件を引き出すために、「関税」という武器を最大限利用しています。この「アメリカファースト」を実現する姿勢が半数以上の米国民の支持を得ていることになっています。そこには他国の損出や迷惑など一切返りみない「自国主義」と「ポピュリズム」が混在しているように思えます。まだ始動したばかりのトランプ政権ですが、「2期目は、再選という政治的制約がなくなり、もはや有権者の顔色をうかがう必要がないことから、トランプが1期目と同じ道を辿ると思うな」と、「トランプ大統領との453日」という著者の中で警告している、ジョン・ボルトン元大統領補佐官の言葉が想い起こされます。ロシアのプーチン大統領と「刎頚の友」(ふんけいのとも)とも呼べる、ベラルーシのルカチェンコ氏が7期目の大統領への当選を確実にしています。ベラルーシ中央選挙管理委員会はルカシェンコ氏の得票率が「86.8%」だったと報告しています。投票が厳格に管理されている中で反対勢力は見当たらず、欧州連合(EU)からは「偽り」と批判する声が出ています。確かに「86.8%」の得票率は、公正な選挙制度の中では、どう見ても異常です。亡命中の反体制派指導者のシハノフスカヤ氏はブルームバーグとのインタビューで、「今回の投票は模倣、茶番劇で、ルカシェンコ氏のための儀式」と批判しています。また、EUのカラス欧州委員副委員長も、「今回の選挙は偽りであり、民主主義に対する露骨な侮辱である」と批判していました。かつて、「欧州最後の独裁者と呼ばれてもいい」と、公然と自身を独裁者と認めたこともあるルカシェンコ氏、プーチン氏とともに、今年も存在感を見せそうです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。