先週末のNYではドル円は買われ、150円99銭まで上昇。151円にもう一歩という水準まで反発しましたが、テクニカル的にはまだドルの底値を確認できたわけでもなく、ドル買いで攻めるにはまだ時間がかかりそうな気配です。
「週足」チャートでは、一目均衡表の「基準線」を下回ったものの、週明け本日は、その線(149円22銭)の上方から取引が始まっており、完全に下抜けしたとは言えません。現時点では、この線に下落を止められた格好になっています。一方、「日足」では上昇機運のサインは全く出ておらず、敢えて言えば「MACD」が、ゴールデン・クロスしそうな気配ではあります。ただ、それでも依然として「マイナス圏」で推移している状況は変わっていません。仮にこのまま上昇が続いたとしても、153円76銭前後には日足の「雲の下限」があり、ひとまず反発してもこの水準で上昇が抑制される可能性もありそうです。
また、いわゆる投機筋のポジションを見ても、ドルが上昇するとは考えていないことも分かります。シカゴ先物取引協会(CFTC)が発表した2月25日現時点のポジションを見ると、円の買い越し(ドル売り)枚数は6万8916枚と、2021年2月10日以来およそ4年ぶりの高水準に積み上がっていました。彼らは、この先ドルが売られると予想していることがうかがえます。ただ注意したいのは、だからと言って必ずしもドル安が進む保証はありません。彼らも、何らかの指標で米インフレ懸念が確認されれば、直ぐにポジションを変えて来るからです。逆に言えば、円買い枚数が多ければ多いほど、円売りの余地が残っていることにもなります。
今週は、週末には恒例の「2月の雇用統計」があります。ここで労働市場が軟調に推移する兆しが見えれば、FRBによる利下げ観測が強まりドルが再び下落する可能性があります。また、もし好調な結果が示されれば、FRBにとっては「目先の懸念材料はインフレ」に絞れることから、政策金利を維持し、トランプ政権の政策がインフレ率にどのような影響を与えるのかデータを確認出来る、「時間的な余裕」を得ることとなり、その際にはドルがある程度買われることになりそうです。今週はそのほか、5日(水曜日)には内田日銀副総裁が静岡県金融経済懇談会で講演を行います。足元では円金利の上昇傾向が続き、債券市場では早期の追加利上げを織り込む動きとなっていますが、この状況にどのようなコメントをするのかが注目されます。因みに植田総裁はG20会合後の南アフリカでの会見で、足元で上昇している長期金利については、「経済や物価の情勢に対する市場の見方、あるいは海外金利の動向を反映して変動することは当然想定される」と述べていました。さらに注目されるのは、6日(木曜日)に連合が発表する、「25年春闘での要求集計結果」です。植田総裁を始め、日銀執行部はこれまでも、利上げには「賃金と物価上昇の好循環が必要」と何度も繰り替えし述べてきました。25年の賃上げが少なくとも昨年並みかそれ以上であれば、追加利上げのタイミングが早まり、円買いが加速する可能性もありそうです。
今週4日からは、カナダとメキシコに対する関税が発動され、さらに中国に対しても20%の関税が適用されます。中国ではようやく景気底入れの指標も出始め、5日から始まる全国人民代表大会(全人代)では景気浮揚と米国との貿易戦争に備え、巨額な資金を投入すると見られています。紆余曲折を経て、いよいよ発動される「トランプ関税」。各国の対応次第では、為替市場を揺らすことになります。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。