週明けのドル円は朝方からドル売りが先行し、午後には149円台を割り込み、148円84銭前後まで売られています。先週金曜日のNY株式市場で主要3指数が大きく売られたことを受け、東京株式市場でもほぼ全面安の展開となり、日経平均株価は先週末の引け値から一時1500円以上も売られ、これがリスク回避の円買いにつながっています。今週水曜日にはトランプ大統領が「相互関税」を発動することとなっており、「貿易戦争」へと発展しそうな通商政策に戦々恐々とした中で、株価には相当な売り圧力がかかっている状況です。これに対して世界の多くの国々から非難の声があがっていますが、トランプ氏は「どこ吹く風」とばかり、粛々と「トランプ関税」の発動に向けて歩みを進めており、「不確実性」が金融市場全体に拡大しています。世界の主要中央銀行も、この先インフレが加速するのか、あるいは景気後退に進んでいくのか、正確に見通せないことから、金融政策も様子見といったところです。前者は政策金利を引き上げなければならず、後者では引き下げる必要があるため、実際の影響を見極めなければなりません。
先週の金曜日に、全国物価の先行指標となる「3月の東京都区部消費者物価指数」が発表されました。生鮮食品を除く「コア指数」は「2.4%」と、市場予想の「2.2%」を上回り上昇が加速していました。これで日銀が目標とする2%を「5カ月連続」で上回っています。エネルギーを除く「コアコア指数」も「2.2%」と、先月からプラス幅が拡大していました。発表元の総務省の説明によると、生鮮食品を除く食料は「5.6%」上昇、エネルギーは「6.1%」と、さらに米類は「89.6%」の上昇でした。石破首相は27日の予算委員会で「強力な物価対策をとっていく」と発言し、立憲民主の辻本清美代表代行に揶揄されていましたが、このままだと3月の「全国の消費者物価指数」も上振れしている公算が大きく、日銀に対しても利上げ圧力がかかる可能性も意識されます。植田総裁も26日の国会答弁では、インフレが経済に広がる場合は、「利上げで対応することも考えないといけない」と述べていました。ただそれでも直ぐに利上げを実施できないのは、上記トランプ政権の通商政策の影響が読み切れないからです。
FRBはまさにその岐路に立たされそうです。4日には「3月の雇用統計」が発表されますが、事前予想は非農業部門雇用者数(NFP)が「13.8万人」と見込まれ、2月の「15.1万人」から伸びが鈍化すると予想されています。仮にこの通りだとすれば、直近3カ月平均では昨年10月以来となる低水準になります。堅調だった労働市場にも減速の兆候が見られるとすれば、FRBは利下げを急ぎたいところでしょうが、そこに「インフレ再燃」といった見方が立ちはだかります。FRBとしても、拙速な利下げは避けないところで、アトランタ連銀のボスティック総裁は24日のブルームバーグとのインタビューで、「今年の利下げ回数は2回ではなく、1回にとどまる公算が大きいと見ていると」いった予測もFRB内部にあります。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。