今回の米国によるイラン核施設への空爆は、多くの人が想定外のタイミングの早さに驚きましたが、東京時間における市場の反応にはパニック的なものは見られず、ある程度落ち着いたものでした。ただそれでもドル円は146円79銭辺りまで買われましたが,東京株式市場で日経平均株価が一時370円ほど下げたことで「リスク回避の円買い」がドル高を抑制しているのか、ドルは堅調に推移してはいるものの、現時点ではドルが大きく上昇する気配でもありません。また、金価格についても今のところ先週末よりも若干売られている状況です。
ただ、原油価格は中東情勢が一気に緊張感を増してきたことで大きく上昇しています。WTI原油先物市場では一時78ドル台と、5ヵ月ぶりの高値を付ける場面もありました。イランが石油輸送の大動脈である「ホルムズ海峡」を封鎖する可能性があることを反映しています。「7月にホルムズ海峡が封鎖される確率」は朝方50%まで上昇しましたが、その後は34%前後まで低下しています。考えてみると、石油価格がさらに上昇すれば、明らかにドル高要因となります。自動車社会の米国では、原油価格の上昇がガソリン価格の上昇にすぐにつながります。その結果、関税引き上げの影響に加えて、ガソリン価格の上昇に伴う物流コストの増加がインフレを上昇させる可能性があります。また、日本にとってもほぼ全量を中東からの輸入に頼っている原油価格の上昇は、ドル需要の増加という形でドル買いが増え、これもドル高要因になります。日本時間午後には日経平均株価のマイナス幅が縮小したことで、一時147円を付ける場面もありました。仮にこのままNYでもドルが買われるとすると、6月13日に記録した148円45銭近辺が次の上値のメドになります。
米国の「バンカーバスター」による攻撃で、イラン核施設が完全に破壊され、イランは再び核開発を進めるこができなくなったのか、現時点では不明です。米軍が公開した衛星画像では、フォルドウ・ウラン濃縮施設付近では、新たなクレーターや複数の大きな穴が確認されており、大型貫通爆弾が着弾した跡と見られます。トランプ関税、とりわけ日米通商協議が遅遅として進展していない中での中東情勢の悪化です。日本にとっても、関税発動までの残された時間は刻々と過ぎて行き、安閑としてはいられません。先ずは、イランの次の出方が非常に重要になります。イランがこれ以上の抵抗を見せなければ、米国の軍事介入がイスラエルとイランの紛争を早期に終わらせたことにもなります。バンス副大統領はABCテレビとのインタビューで、「われわれはイランと戦争しているわけではない。イランの核開発計画と戦っているのだ」と述べていました。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。