歴史は繰り返す「【ジョージソロスの話】Vol:9」|FX|外為オンライン FX取引 − あなたの為の、外為を。

歴史は繰り返す

第9話 NYダウ暴落

1980年代後半、日本はバブルの絶頂期だった。

土地は上がり、株もあがり、日本中がマネーゲームにうつつを抜かしていた頃、

ソロスは「フォーチュン」誌に、株式市場の高騰は長くは続かないと発言した。

そして日本市場における暴落の危険性を指摘している。

日本企業の多く、とくに銀行と生命保険会社が他の日本企業株に巨額の投資を

行っていることを、ソロスは知っていました。

中には、そのために借入金に頼っている企業すらあることも。

そのような株式投資が盛んになるにつれ、東京市場は上昇し、それら企業の資産価値も

上がった。・・・・・しかし、一歩間違えば暴落する危険性は、常にはらんでいました。

再帰理論の観点に照らして、暴走しつつある投資家の熱狂ぶりは、いずれに日本の株式

市場に暴落をもたらすだろうとソロスは読んでいました。

日本の株式市場に対して悲観的になっていたソロスは(もし、東京市場で暴落が

起こっても、アメリカ市場にはさほど影響をうけないだろう)と考えていました。

ソロスは、1987年秋に数十億ドルに及ぶ資金を東京市場からNY市場へ移しました。

 そして、10月19日、劇的な1週間が幕を開けました。

その月曜日、508.32ポイントも暴落したのはNY市場だったのです。

ソロスはそれ以上の規模で日本市場が暴落すると予想していましたが、

NY暴落の翌日の火曜日,東京市場はたいして下げませんでした。

ウオール街での暴落は、5年間つづいた強気相場の終わりを告げました。

10月22日、木曜日、市場は一旦300ポイントほど回復しましたが、再度下降線を

たどり、大幅な下げが続き、ソロスは保有株の大部分を売ることを余儀なくされました。

結果的にみてソロスは、この時のウオール街の暴落で最大の損出を被った一人でした。

彼は、自分の判断ミスを認めて「私が大きなミスを犯したのは、暴落がまず東京市場で

起こると思い込んでいたからだ。私は、東京市場の暴落に対する用意をすっかり整えて

いたし、その前提に基づいてウオール街の投機戦略を組み立てていた。

しかし、実際には暴落は東京ではなく、ウオール街で起こった。

従って、私は間違っていたというわけだ。」

暴落直後に掲載された記事は、ソロスが6億5千万ドルから8億ドル程度の損出を

被ったという見方で一致しているようです。

この時の損出はソロスにとって1981年の債券市場での失敗以来最悪のものだったようです。




次回は12月16日(火曜日)に更新する予定です。

外為オンラインのシニアアナリスト 
佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。