歴史は繰り返す「【ジョージソロスの話】Vol:10」|FX|外為オンライン FX取引 − あなたの為の、外為を。

歴史は繰り返す

ソロス、ワシントンへ行く


 それは、あまりにも皮肉なことでした。

ジョージ・ソロスは長年、政治家から注目されることを欲し、今やっとその願いが

叶おうとていました。

当然のことながらソロスが望んでいたのは、彼らの不信ではなく尊敬のはずでした。

しかし、ソロスが実際に得たのは前者でした。

1992年に6億5千万ドルも稼ぎ、翌年もとどまることを知らない成功を続ける

ソロスの快進撃ぶりは、政治家たちに疑いを抱かせることになるのです。

ソロスのファンドが違法な方法で利益を稼ぎ出しているのではないかという疑いを

持ち、仮に、そうでないとしても「彼らがいったい何をしているのか、

どのような方法で巨額の利益を上げているのか」

議会で証言させるべきだという空気になってきたのです。

そのような経緯で、強力な権限を持つ下院銀行委員会の委員長ヘンリー・ゴンザレスは

1993年6月FRBとSECに、ソロスのクォンタムファンドの通貨取引について

調査を命じるつもりだと発表しました。

そして「ソロス氏のような一個人が、通貨市場を巧みに操作することが可能なのか

どうかを見極めるためである。」と

 実際に、ソロスがゴンザレス委員長率いる下院銀行委員会の公聴会に呼ばれたのは

およそ一年後でした。

1994年4月13日、委員会は投機の達人ソロスをワシントンの公聴会に呼びました。

公聴会は満員となり、立ち見がでるほどでした。

ソロスは声明文を読むことで「セミナー」を開始しました。

そこでソロスは、自らの編み出した再帰理論を駆使して、金融当局がなぜ過ちを

犯そうとしているのかを語りました。

彼は何度も自らの理論を引っ張り出して説明しました。

ソロスはまず、金融市場は、将来を正確に把握することなど到底できないが、

ファンダメンタルズに影響を与えると指摘しました。

市場に上昇、下降のサイクルが起こるのは、市場がトレンドを追う行動に支配される

からであり、価格が上がれば買い、下がれば売るという行動をとる。

トレンドは片寄った時に暴落が起こるが、トレンドを追う行動だけでは

暴落は引き起こされない。

ソロスは(ヘッジファンドではなく)ミューチュアル・ファンドや機関投資家が

市場を不安定にしていると指摘しました。

そして単刀直入に、ヘッジファンド全体でも扱う取引高は、通貨市場全体の、

せいぜい0.005%程度だと主張しました。

さらに、「だから、そのヘッジファンドというのは、一体何なんだ?」

という委員からの質問に対して、「その名称は、あまりにも乱雑に使用されていて、

きわめて広い分野を含んでしまっている。唯一共通なのは、

ファンド・マネージャーは運用を任せられている資産から固定歩合制ではなく

、その成績次第で報酬を受け取るということだ。」と答え、

最後に「われわれは、市場を不安定にするよりも、安定させる役割を果たしている。

とはいえ、われわれは、これを公共サービスだとは考えていない。

これが、われわれの儲け方のスタイルなのだ。」

 ソロスは公聴会を無事終えた。

二ヵ月後、SECの一人は

「ジョージ・ソロスが見事なまでの証言をしてくれたので、

SECは心配することを止め、議会もヘッジ・ファンドについて心配することを止めた。」

と経済紙に述べていたそうです。



(次回の掲載予定は12月30日です。)

外為オンラインのシニアアナリスト 
佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。