今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2019年7月11日(木) 「議会証言を受け市場はドル売りで反応」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • パウエル議長の議会証言を受け、ドル円は108円35銭まで下落。109円手前まで買われていたドル円は、再び利下げ観測が高まりドルが売られる。
  • ユーロドルは今回も1.12を割り込めずに反発。議会証言を受けてドル売りが活発となり、1.1264までユーロ高が進む。
  • 金利低下観測が株価を押し上げ、主要3指数は揃って上昇。ナスダックは60ポイント上昇し、初の8200台乗せ。
  • 債券相場は反発。長期金利は2.06%台と小幅に低下。
  • 金は続伸。原油価格はハリケーンがメキシコ湾岸に近づく可能性があることと、原油在庫が予想以上に減少していたことで大幅高に。
ドル/円 108.35 〜 108.95
ユーロ/ドル 1.1213 〜 1.1264
ユーロ/円 121.98 〜 122.26
NYダウ +76.71 → 26,860.20ドル
GOLD +12.00 → 1,412.50ドル
WTI +2.60 → 60.43
米10年国債 −0.004 → 2.061%

本日の注目イベント

  • 独 独6月消費者物価指数(改定値)
  • 米 6月消費者物価指数
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 6月財政収支
  • 米 パウエル・FRB議長、上院銀行委員会で証言
  • 米 クオールズ・FRB副議長講演
  • 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
  • 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演
  • 米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁講演
  • 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁講演

注目された半期に一度のパウエル議長の議会証言では、米中通商協議の再開や、力強い6月の雇用統計を受けても 米景気に対する見方は変わらず、議長は利下げを示唆しました。議長は、「貿易問題での緊張を巡る不確実性と、世界経済の強さに対する懸念が引き続き重しとなっている」と分析し、当局の見通しは変わらなかったと証言しました。

議員との質疑応答では、6月の雇用統計で、非農業部門雇用者数が市場予想を上回る伸びを示したことが金融当局の見解を変えたかとの質問に、「率直な答えはノーだ」と答え、引き続き雇用の不確実性を強調する姿勢を維持していました。その上で議長は、「見通しに対する不確実性はここ数カ月で増してきている。海外の幾つかの主要国で経済の勢いが鈍化しているようだ。そうした弱さが米経済に影響を及ぼす可能性はある。その上、通商を巡る動向や連邦債務上限、英国のEU離脱など、政府が扱う多くの政策課題がなお解決されていない。」と説明しています。また、トランプ大統領がパウエル議長に対し、金融緩和をするよう圧力を強めていることに関しては、最大限の雇用と物価安定の確保というFRBの2大責務とともに、その独立性に触れ、「それには説明責任と透明性が必要だ」との認識を示しました。(ブルームバーグ)

この発言を受け市場では再び利下げ観測が強まり、先週までに見られたように、株と債券が買われ、金利低下を受けドルが主要通貨に対して売られる展開になっています。ドル円は昨日の東京時間に108円99銭まで買われ、その後も何度か109円乗せを試したものの、結局109円台を見ないまま反落しています。ただこのまま6月末に見られたような、106円台に突っ込むような急激な円高に向かうのかどうかはまだ不透明です。昨日の議会証言を受けた後の各市場の動きを見ると、株は買われたものの、債券の買われ方はいまいち力強さはなく、長期金利の低下もわずかに留まっています。108円割れは十分あり得ますが、これまでのようなやや前のめりの利下げ観測にはならないかもしれません。証言から窺えることは、今月末の利下げは確実だとしても、その先利下げは1回なのか、2回なのかは今後の経済データ次第だということは変わっていません。

ドルの上値は引き続き重い印象です。目先の下値のメドは、今回の上昇局面で反発した値幅の半値戻し(107円88銭)辺りとし、107円80−90銭程度と予想します。従って本日の予想レンジも107円90銭〜108円70銭程度とします。

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明日の「アナリストレポート」は都合によりお休みとさせておただきます。ご愛読者の方々にはご迷惑をおかけ致しますが、ご理解下さいますようお願い申し上げます。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
6/2 中国国防相 対話したいならドアは開いている。戦いたいなら戦う。準備はできている。 --------
6/2 王受分中国商務次官 米中貿易協議の中断について米国に全責任がある。今後いかなる議論も誠実さと相互尊重、平等を基礎におく必要がある。全てが合意されるまで、何も合意はない。 --------
6/3 ブラード・セントルイス連銀総裁 インフレ率とインフレ期待を目標に近づけるのを助け、予想より急激な景気減速に備えた保険を確保するためにも、政策金利に下方向の調整を加えることは近く正当化される可能性がある。貿易の抑制が米経済に直接及ぼす影響は比較的小さいが、世界の金融市場を通じて広がる影響はより大きくなる可能性がある。 ドル円108円台前半から107円台後半に。
6/4 パウエルFRB議長 これまでと同様、景気拡大を維持するためわれわれは適切な行動を取る。労働市場は力強く、インフレ率は当局の対称的な2%の目標付近にある。 NYダウが512ドル急騰するなど、米国株はほぼ前面高の展開に。
6/4 エバンス・シカゴ連銀総裁 インフレがやや低めのため必要に応じて政策を調整する余地はあるが、経済のファンダメンタルズは引き続き底堅い。個人消費も底堅い。これが実際に何を意味するのかわれわれは熟慮する必要がある。 --------
6/5 カプラン・ダラス連銀総裁 (政策金利を引き下げるという)その判断を下すには時期尚早だ。 --------
6/6 ドラギ・ECB総裁 最新の経済指標は世界的な向かい風がユーロ圏経済の見通しを圧迫していることを示している。理事会は不測の事態には行動し、あらゆる措置を取る準備ができている。 --------
6/10 トランプ大統領 中国の習近平国家主席がG20での会談に応じない場合、中国からの輸入品3000億ドル(約32兆5000億円)に対して直ちに25%の関税を課す可能性がある。 --------
6/10 トランプ大統領 当局は大きな誤りを犯し、私の言うことを聞かなかった。金利を大幅、かつ急速に上げすぎた。米国の金融当局はわれわれにとって、とても有害だ。 --------
6/13 クドロー国家経済会議委員長 トランプ大統領は会談への強い意欲を表明したが、会談はまだ正式に準備されてない。会談が実現しない場合には重大な結果に直面する可能性がある。しかし、大統領は会談をする方を好むだろう。 --------
6/14 ロス商務長官 G20では、よくても前向きに協議を再開するという合意にとどまりそうだ。 --------
6/18 ドラギECB総裁 見通しが改善せずインフレ圧力が強まらない場合は追加の刺激策が必要になるだろう。利下げは政策手段の一部であり、資産購入も選択肢だ。 ユーロドル小幅に下落。
6/19 FOMC声明文 「見通しを巡る不確実性が高まった」「これらの不確実性と落ち着いたインフレ圧力を考慮し、委員会は経済見通しに関する今後の情報が示唆するものを注視し、景気拡大や力強い労働市場、対称的な2%目標近くのインフレの維持に向けて適切に行動する」 ドル円は108円台半ばから108円割れまで下落。株高、債券高となり長期金利は2.02%台まで低下。
6/24 ロウ・RBA総裁 世界経済は減速しているが、なお、それほど悪くない状態にある。金融緩和が以前ほど有効でない可能性が高い。 豪ドルドル、0.6935近辺から20ポイント程上昇。
6/24 カプラン・ダラス連銀総裁 貿易を巡る緊張と不確実性がこの2カ月で大幅に高まり、見通しの下振れリスクが高まったが、それでも利下げの準備はまだ整っていない。米金融政策のスタンス変更が適切かどうか考える上で、より多くの時間をかけて状況の変化を見るのが賢明だろう --------
7/2 カーニー・BOE総裁 貿易を巡る緊張の高まりで、英国を含む世界の成長に対する下振れリスクが強まっている。(そのため)大規模な政策対応が必要になる可能性がある。 ポンドドル、1.12台半ばから1.12割れまで下落。
7/7 トランプ大統領 イランは気をつけた方がよい。良いことでは全くない。(イランがウラン濃縮度を引き上げたことで) --------
7/10 パウエルFRB議長 貿易問題での緊張を巡る不確実性と、世界経済の強さに対する懸念が引き続き重しとなっている。見通しに対する不確実性はここ数カ月で増してきている。海外の幾つかの主要国で経済の勢いが鈍化しているようだ。そうした弱さが米経済に影響を及ぼす可能性はある。通商を巡る動向や連邦債務上限、英国のEU離脱など、政府が扱う多くの政策課題がなお解決されていない。 ドルは売られ、株、債券、金などが買われる。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和