「米金利上昇でドル円104円に迫る」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は大幅に反発し、約3週間ぶりの水準となる103円95銭までドル高が進む。リスクオンが高まったものの、長期金利の上昇に素直に反応。
- ユーロドルは反落。ドルが買い戻された流れに、1.2246までドル高に。
- 株式市場はバイデン政権の景気刺激策期待から主要指数は揃って大幅に上昇。ダウは初の3万1千ドルの大台に。
- 債券は続落。新政権で大規模な財政出動が見込まれることから債券は売られ、長期金利は1.08%台まで上昇。
- 金は反発し、原油は続伸。
新規失業保険申請件数 → 78万7千件
11月貿易収支 → −681億ドル
12月ISM非製造業景況指数 → 57.2
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ドル/円 | 103.52 〜 103.95 |
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ユーロ/ドル | 1.2246 〜 1.2282 |
ユーロ/円 | 127.04 〜 127.49 |
NYダウ | +211.73 → 31,041.13ドル |
GOLD | +5.00 → 1,913.60ドル |
WTI | +0.20 → 50.83ドル |
米10年国債 | +0.044 → 1.079% |
本日の注目イベント
- 日 12月景気先行指数(CI)(速報値)
- 日 12月景気一致指数(CI)(速報値)
- 独 独11月貿易収支
- 独 独11月鉱工業生産
- 米 12月雇用統計
- 米 11月消費者信用残高
- 加 カナダ12月就業者数
- 加 カナダ12月失業率
本日のコメント
4人もの死者を出したワシントンでの混乱を経て、ジョー・バイデン氏が正式に第46代米国大統領に決まりました。市場は暴動や混乱による不安よりも、「トリプルブルー」、「ブルーウェイブ」を好感し、リスクオンが急速に高まっています。米株式市場では3主要指数が揃って大幅に買われ、最高値を更新しました。特に前日にはダウやS&P500が上昇したにもかかわらず下落したナスダックの上昇には目を見張るものがあります。そして、3主要指数とも揃って「大台替え」を示現しました。ダウは3万1000ドル、S&P500は3800ポイント、そしてナスダックは1万3000ポイントの大台をそれぞれ達成しています。また小型株で構成する「ラッセル2000指数」は、ここ3営業日で8%近い上昇を見せています。
債券市場でも前日の流れが続き、債券はさらに売られ長期金利は一時1.08%台まで上昇する場面がありました。「リスクオンのドル売り」も影を潜め、ドル円は素直に長期金利の上昇に沿った動きを見せ、103円95銭までドルが買い戻されています。これは昨年12月16日以来、約3週間ぶりのドル高水準です。株価の上昇よりも、急激な金利上昇に追随した格好です。このように、円が安全通貨の本領を発揮し、リスクオンでは売られ、リスクオフでは買われる展開であれば、投資家にとっても判り易いと思われますが、この傾向が定着するかどうかは残念ながらわかりません。
1月20日の大統領就任式までわずか2週間を切った、ぎりぎりのタイミングで正式に決まったバイデン次期大統領。就任式には共和党のブッシュ元大統領も出席する予定です。それにしても今回の大統領選は非常に後味の悪さが残りました。4人の死者を出し、60人以上の逮捕者も出ています。民主主義の根幹を揺るがした今回の行動には、各方面からも非難の声が多く上がりました。JPモルガンのダイモンCEOや、トランプ大統領の支持者として知られるブラックロックのシュワルツマンCEOも「今日の大統領発言に続く暴動は驚愕するものであり、われわれが米国人として大切にしている民主主義の価値観を侮辱している」と非難し、「私は憲法を弱体化させようとした暴徒の試みにショックを受け、恐怖を感じる。11月に述べた通り、選挙の結果は非常に明確であり、平和的な政権交代が実施されなければならない」と付け加えています。(ブルームバーグ)トランプ氏は秩序ある移行を表明しましたが、今回の暴動を扇動したことは事実です。民主党のシューマー上院院内総務は、トランプ氏が政府への反乱を扇動したとして、20日の任期を待たず「即刻免職されるべきだ」と訴えています。
「矢折れ刀尽きる」とは、このような時に使う言葉でしょうか。ホワイトハウスでは次々と辞任が相次いでいます。その数はすでに5人以上に上っており、メラニア大統領夫人の首席補佐官、グリシャム氏も辞任しています。船が沈むのを察知したネズミが一斉に逃げる行動を思い浮かべましたが、今回の大統領選は、「混乱」と米国の「分断」を増幅したという意味では大きな汚点を残しました。その意味では、「ドナルド・トランプ」の名は歴史に刻まれることでしょう。これで、市場の不確定要素が一つなくなります。
ドル円は今週水曜日に102円59銭まで売られ、昨日は104円手前まで戻ったことで、日足では昨年11月11日の105円68銭を起点とするトレンドラインを上抜けしてきました。もっとも、昨年2月の112円台から引くことの出来る「メインのトレンドライン」はまだ上抜けには至っていません。ドルの上値は重いという「基本スタンス」は依然維持できると思いますが、日足の「MACD」ではマイナス圏にいながらも「ゴールデンクロス」を示現している点には注意が必要です。「ひょっとしたら、ドルは戻すのではないか」といった警戒感を持ちながら、ドルショートのポイントを探るスタンスでいいと思います。同時に、決め手となるのが米長期金利の動向です。債券は急激に売られていますが、FRBが恒常的に債券を購入するという構図は変わっていません。この先さらに金利が上昇した場合、FRBが金利上昇を容認するのかどうかも重要なポイントです。FOMCのメンバーである地区連銀総裁の発言内容から探るしかありませんが、ここにも注意を払いたいと思います。これに関して昨日フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は、「米金融当局による債券購入プログラムが早ければ年末にも縮小を始める可能性がある」と、バーチャル形式の講演で述べています。ただ、「余りに早期に開始しようとすれば、市場に混乱を引き起こしかねない。そのため、私はこれに関してかなり慎重だ。景気の修復が実際に見られるようになるまで、変わらない姿勢でいるべきだ」とも述べています。(ブルームバーグ)ハーカー総裁は今年のFOMCでの議決権は持っていませんが、今後このような発言には耳を傾ける必要があります。
本日のドル円は103円30銭〜104円10銭程度を予想します。
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毎年恒例のバイロン・ウィーン氏の「びっくり10大予想」が今週発表されました。同氏は、ブラックストーンのプライベートウェルス・ソリューションズ・グループ副会長を務めており、今回は最高投資ストラテジストのジョー・ザイドル氏と共同執筆になっています。ウィーン氏の「びっくり予想」は、投資家予測では発生確率が3分の1ですが、自身は5割以上とみる事象を集めていることが特徴です。
さて、当たるも八掛当たらぬも八掛・・・・、皆さんはどのように受け止めますか?
良い週末を・・・・・。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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1/7 | ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 | 「米金融当局による債券購入プログラムが早ければ年末にも縮小を始める可能性がある」、「余りに早期に開始しようとすれば、市場に混乱を引き起こしかねない。そのため、私はこれに関してかなり慎重だ。景気の修復が実際に見られるようになるまで、変わらない姿勢でいるべきだ」 | -------- |
1/4 | シカゴ連銀のエバンス総裁 | 「インフレ率が2.5%を大幅に超えて上昇することは懸念していない。3%でさえ恐れていない」、「インフレ率が3%に向っているのを見れば、われわれは間違いなく政策対応をどう調整するかについて話しているだろうが、同時に、最大限の雇用を達成しインフレ率を適正化させることにも間違いなく焦点をあてているだろ」 | -------- |
12/24 | フォンデアライエン・欧州委員長 | 「長く、曲がりくねった道だった。しかしその成果を示す合意だ」、「公平であり、バランスの取れた合意だ。英国とEUの双方にとって、適切かつ守る責任ある内容だ」 | ユーロドルは1.22台からじり安の展開に。 |
12/24 | ジョンソン・英首相 | 「数十年にわたり英国の政治を悩ませてきた問題を解決した」、「いいとこだけを集めた協定ではないが、現段階で英国に必要なものであると信じている」 | ポンドドル、1.35台半ばから1.36台に乗せる。 |
12/16 | バイトマン・ドイツ連銀総裁 | (拡大するECBの国債保有が危険だとしながら)「そうしなければ、われわれは市場への支配的影響力を得て国債のリスクプレミアムの違いをならす危険を冒すことになる。これは市場の規律をさらに弱める。とりわけ最近のPEPP拡充によりこの問題が増幅された」 | -------- |
12/16 | パウエル・FRB議長 | 「経済活動と雇用は回復を続けたが、今年初めの水準をなお大きく下回っている」、「ようやくトンネルの先に明かりが見えるような状況になった」としつつ、「あと数カ月が持ちこたえられず事業を失う人がいることを思うと心が痛む」 | -------- |
12/16 | FOMC声明文 | 「委員会は長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指す。インフレがこのより長期の目標を下回る状況が長く続いていることを踏まえ、委員会はインフレが一定期間2%を適度に上回ることを目標とし、それによって期間平均が2%となり、より長期のインフレ期待は2%でしっかりとどまるとうにする。委員会はこうした結果が得られるまで、緩和的な金融政策スタンスを維持する見通しだ」、委員会の目標である最大限の雇用と物価安定に向けて一段と顕著な進展があるまでそれを継続する」 | 株価が下落し、債券が売られ、ドル円は小幅に上昇したが、その後元の水準に。 |
12/10 | ラガルド・ECB総裁 | 「望ましい金融環境が維持できているならば、全額を使う必要はない」(新型コロナウイルスのパンデミックについて)「先を見れば、ワクチン接種開始の見通しが健康危機の段階的な解消という想定への自信を深める」、「しかしながら、幅広く免疫が獲得されるには時間がかかり、さらなる感染再燃が公衆衛生と経済見通しに課題を突き付ける可能性は排除できない」 | 追加緩和策発表後、ユーロドルは1.20台後半から1.21台半ばへ。 |
12/1 | シュナーベル・ECB理事 | 「さらに大きく緩和することよりも、現状を維持していくことに集中するのが適切だ」 | -------- |
12/1 | パウエル・FRB議長 | 「一定程度の財政支援を行えば、経済を前進させる助けになる他、特に中小企業にとって下方リスクへの備えにも役立つ」、「対応が過剰によるリスクは、過小なものに留まるリスクよりも小さい」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書