今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「円売りが加速し、ドル円は106円台まで続伸」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は続伸し、約4カ月ぶりとなる106円台を回復。米長期金利の上昇と、リスクオンの加速から円売りが継続。
  • ユーロドルはややドル高が進み、1.2095まで下落。ユーロ円は2018年12月以来となる128円40銭近辺まで上昇。
  • 株式市場は売り買いが交錯する中、ダウは64ドル上昇し、最高値を更新。ナスダックとS&P500は反落。
  • 債券は大きく売られる。長期金利が1.31%台まで上昇し、約1年ぶりの高水準。
  • 金は続落し1800ドル台を割り込む。原油は続伸し、60ドル台に。
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2月NY連銀製造景況業指数 → 12.1
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ドル/円 105.53 〜 106.08
ユーロ/ドル 1.2095 〜 1.2151
ユーロ/円 127.95 〜 128.40
NYダウ +64.35 → 31,522.75ドル
GOLD −24.20 → 1,799.00ドル
WTI +0.58 → 60.05ドル
米10年国債 +0.106 → 1.314%

本日の注目イベント

  • 日 1月貿易収支
  • 英 英1月消費者物価指数
  • 米 1月生産者物価指数
  • 米 1月小売売上高
  • 米 1月鉱工業生産
  • 米 1月設備稼働率
  • 米 2月NAHB住宅市場指数
  • 米 FOMC議事録(1月26−27日分)
  • 米 ローゼングレン・ボストン連銀総裁、討論会参加
  • 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁、討論会参加
  • 加 カナダ1月消費者物価指数

本日のコメント

ドル円はNY市場で昨年10月9日以来となる106円台に乗せました。実は、昨日の東京時間にすでにその兆候はありました。たまたま昨日の午後、当社のお客様から短期的な相場の見通しを尋ねられたので、「今夜のNYで、もしかしたら106円前後までドル高が進む可能性があると思います」と答えました。

前日3万円の大台を回復した日経平均株価は、昨日も午後には一時600円を超える上昇を見せる局面もあり、ドル円は「リスクオン」の流れから105円60銭近辺まで買われていました。注目したのは、米債券先物市場の動きでした。東京時間では、米債券が大きく動くことはめったにありません。その米10年債が昨日の午後には、1.24%前後まで上昇していました。米国では祝日でしたが、投資家が「リスクオン」のさらなる進行を見込んで米債券売りを強めていたと思われます。米国市場が始まると、さらに債券が売られる可能性があり、ドル円でも円売りが強まると予想したわけです。

その米10年債は予想通りというより、予想以上に売られ、長期金利は1.314%まで上昇し、先週末から10BP以上の上昇を見せました。利回りは、この日の最高水準(価格は最安値)で引けており、約1年ぶりの水準になります。先週2%の大台を突破した30年債も2%を大きく超え、2.09%台で取引を終えています。米金利高に素直に反応したのが円でした。円は全面安の展開となり、ドル円だけではなく、ユーロ円も128円台半ばに。豪ドル円でも82円30銭を超える「円安」となっています。ドル円は前回2月5日に記録した105円77銭を明確に上抜けしたことで、重要な日足の「200日移動平均線」を完璧に抜け切りました。これで日足チャートを見る限り、上方にはドルの上昇を遮るものはありません。

「週足」の雲の上限が、106円20−30銭近辺にあることから、目先の抵抗帯はこのレベルかと思われますが、これを抜ければ、「遅行スパン」もローソク足を上抜けすることから「週足」でも「三役好転」が実現することになります。さらに言えば、昨年ドルが最高値を記録したのが、偶然ですが、1年前の今日です。この時は112円23銭までドル高が進み、その後はドルのじり安が続き、今年1月6日には、102円60銭までドルが売られたことは記憶に新しいところです。この間の下落幅を「フィボナッチ・リトレースメント」で検証してみると、38.2%戻しが、106円28銭前後という数値が導き出され、上記「週足の雲の上限」にも重なります。ということで、目先のレジスタンスはこの辺りと考えます。今朝の8時前の時点ですでに、106円22銭近辺までドルが続伸しており、早朝に「NY市場の高値を超えている現象」も、かなり稀です。ここを抜ければ、ドル高がさらに進む可能性も浮上して来ます。ここは重要なポイントでしょう。

リスクオンが加速し、リスク資産に資金が流入しています。今朝の日経新聞は、資金の流入で上昇している資産の順位を1月末比で掲載しています。1位が「原油」で、以下「日経平均」、「世界株」、「銅」、「米ダウ」、「世界のREIT」とランクされています。もっとも、これに「ビットコイン」を入れれば、断トツの1位でしょうが・・・・今後は、米国でインフレ懸念が台頭してくる可能性があります。足元の米金利の上昇は、この動きを先取りしているのかもしれませんが、まだ景気拡大による金利上昇とは言えません。大規模な財政出動に伴い、債券の需給が崩れていることが主因で、発表される経済指標からはまだインフレを示唆するものは見当たらないと考えます。ただ一方で株高による「資産効果」が見込めるため、今後は個人消費の動きには注目する必要があります。今後さらにリスク資産が買われるようだと、FRBが「金融政策の変更」を示唆し、行き過ぎの市場に対して警告を発してくる可能性もあります。そうなると、買われて来た全ての資産が「逆回転」を起こすことになります。これまで大きく買われて来ただけに、「山高ければ谷深し」ということです。ただFRBとしても、そのような事態は避けたいはずで、難しい政策判断が続きます。

本日のドル円は105円80銭〜106円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
2/16 オーストラリア準備銀行議事要旨 「債券購入プログラムは実施しなかった場合と比べ、金利と豪ドル相場の押し下げにつながった。これを考慮すれば、金融刺激策の巻き戻しを検討するのは時期尚早だろう」 --------
2/10 パウエル・FRB議長 「恩恵が広く共有されるような力強い労働市場からは、なお非常に遠い状態にある」、「最大限の雇用を達成し、それを維持するには、金融政策による支援以上のものが必要となる」 --------
2/7 バイデン大統領 習主席に「電話しない理由はない」、(中国に対するアプローチはトランプ前大統領とは異なるものになるとし)「対立する必要はないが、激しい競争になるだろう」、「彼の中には民主主義という概念はみじんもない」 --------
2/7 イエレン財務長官 「労働市場は深い穴に沈んでおり、抜け出すのはまだずっと先だ」、「十分な支援がなければ労働市場は2025年まで回復しない可能性がある」 --------
1/28 クノット・オランダ中銀総裁 「ユーロ高に対抗する必要が生じた場合、ECBは預金金利を現在の−0.5%からさらに引き下げる余地ある。もちろんそれは、資産購入、TLTRO、フォワードガイダンスなどの多様な手段によって決定される全体的な金融スタンスと合わせて見なければならない」 ユーロドル1.21台から1.20台半ばへと下落。
1/27 パウエル・FRB議長 「大規模な経済支援を縮小する状況からは程遠い」、「しかるべき時に資産購入のテーパリングを開始する時に、誰も不意を突かれたと受け止めることがないよう。金融当局として明瞭なコミュニケーションを心がける」、「出口に焦点を合わせるのは時期尚早だ」 --------
1/25 習近平・中国国家主席 「対立はわれわれを袋小路に陥れる」、「覇権にコミットし続けるのではなく、国際法と国際的なルールにコミットし続けるよう」 --------
1/20 イエレン・次期財務長官 中国の悪質な慣行にはあらゆる手段を積極的に使う」、「対中関税は同盟国と協議するまで変更するつもりはない」、「通商上の不公正な優位を得るための人為的な為替操作に対しては、バイデン大統領は反対の意思を明確にしている。この意向を支持しており、承認を受ければ、いかなる為替操作に対しても政権内で協力して反対していく」 --------
1/19 イエレン・次期財務長官 (承認公聴会で)競争上の優位を得るため弱い通貨を米国が目指すことなく、他国によるそうした試みを求めるべきでない」、「貿易における優位性を得るため人為的に通貨価値を操作する外国によるいかなる、またあらゆる試みに反対すべく、取り組んでいく」 ドル円は小幅に上昇し、104円台をつける。
1/14 パウエル・FRB議長 「必要となれば利上げはするが、その時は直ぐ来ない」(2%の物価目標について)、「新たな枠組みの信認のためには2%を一定期間上回る必要がある」、「一時的な物価上昇は、基調としての物価上昇を意味しない」 --------
1/11 クラリダ・副議長 (長期金利が1%を超えたことについて)「ワクチンや経済成長期待などのプラスの期待を織り込んで金利が上昇しているのであれば、それは懸念すべきでない」 --------
1/7 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「米金融当局による債券購入プログラムが早ければ年末にも縮小を始める可能性がある」、「余りに早期に開始しようとすれば、市場に混乱を引き起こしかねない。そのため、私はこれに関してかなり慎重だ。景気の修復が実際に見られるようになるまで、変わらない姿勢でいるべきだ」 --------
1/4 シカゴ連銀のエバンス総裁 「インフレ率が2.5%を大幅に超えて上昇することは懸念していない。3%でさえ恐れていない」、「インフレ率が3%に向っているのを見れば、われわれは間違いなく政策対応をどう調整するかについて話しているだろうが、同時に、最大限の雇用を達成しインフレ率を適正化させることにも間違いなく焦点をあてているだろ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和