今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円2週間ぶりに109円まで下落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は続落。米長期金利がさらに低下したことを受けドル売りが優勢となり、約2週間ぶりに109円までドル安が進む。
  • ユーロドルもドル安ユーロ高の流れから、2週間ぶりに1.1928まで上昇。
  • 株式市場は反発。FRBが低金利政策の維持を継続することが改めて意識されたことで主要3指数は揃って上昇。S&P500は17ポイント上昇し、連日の最高値更新。
  • 債券は続伸し、長期金利は1.61%台まで低下。
  • 金は反発し、原油は反落。
ドル/円 109.00 〜 109.32
ユーロ/ドル 1.1872 〜 1.1928
ユーロ/円 129.56 〜 130.18
NYダウ +57.31 → 33,503.57ドル
GOLD +16.60 → 1,758.20ドル
WTI −0.17 → 59.60ドル
米10年国債 −0.055 → 1.619%

本日の注目イベント

  • 中 中国3月消費者物価指数
  • 中 中国3月生産者物価指数
  • 独 独2月貿易収支
  • 独 独2経常収支
  • 独 独2月鉱工業生産
  • 米 3月生産者物価指数
  • 加 カナダ3月就業者数
  • 加 カナダ3月失業率

本日のコメント

ドル円の方向性を決めるカギとなる米長期金利は落ち着きを取り戻したというより、足元では低下傾向が続いています。昨日のNY債券市場では、10年債が買われ長期金利は1.61%台まで低下しています。米金利低下を受け為替市場ではドル売りが強まり、ドル円は109円近辺まで、ユーロドルも1.1928まで上昇し、いずれも約2週間ぶりとなるドル安を記録しています。

手掛かりとなったのが、パウエルFRB議長がIMF春季会合のバーチャルパネル討論会で行った発言です。議長は、「現在の回復は不均衡で不完全なままだ」と述べ、「全ての場所で新型コロナウイルスの感染を収束させるまで、世界は経済活動を完全に再開することはできないだろう」との認識を示しました。またインフレ見通しについては、「経済再開に伴い物価圧力が高まることが想定されるが、一時的となる公算であり、仮に長く続くようであれば対策を講じるだろう」と述べ、一時的になると見込まれるインフレ圧力を抑制する手段を金融当局は持っていることを強調しました。この発言自体は目新しいものではありませんが、債券市場では価格が上昇し、長期金利は一時1.615%前後まで低下し、約2週間ぶりに低水準を付けています。先月末には1.77%台まで上昇した米長期金利の上昇を受けて、翌日の東京時間昼には110円97銭までドル高が進みましたが、その後長期金利の低下と共にドル円の下落傾向が強まるなど、足元のドル円は米長期金利の動きと極めて密接になっています。上記米長期金利が、1.77%台まで上昇した際には、「2%まで上昇する」と言った声だけではなく、「2.5%」といった観測も台頭していました。相場の先行きの不透明さというよりも、市場参加者の過熱感、市場参加者がどこまで強気になっているのか、あるいは弱気になっているのかを、冷静に見極めることが重要だということです。もちろん、それを判断することはそう簡単なことではありません。

米商務省は8日、中国でスーパーコンピューターの開発を手掛ける企業や研究機関など7社・団体を、安全保障上の問題がある企業を並べた「エンティティー・リスト」に追加することを発表しました。レモンド商務長官は声明で「中国が軍事の近代化のため米国技術を活用するのを防ぐため、全ての権限を使う」と述べています。また議会上院外交委員会でも、「米国の極めて重要な利益と価値を保護し、促進する上で、中国と戦略的競争を行うための政策」を採用するよう、政府に求める法案の作成に取りかかっているとブルームバーグは伝えています。バイデン政権は日本、オーストラリア、インドを加えた、いわゆる「クアッド」の構築など、中国に対する強硬な姿勢を徐々に強めているように思えます。「民主主義と専制主義」の対立がさらに深まる可能性が高まっているのではないでしょうか。

今週に入りドル円は東京時間では底堅い動きを見せるものの、NYでは長期金利の低下に伴いドル安が進む流れが続いています。109円までドルが反落したことで今後、110円台、あるいは111円に近づく水準ではドル売りが集まり易くなり、ドルの上値を抑えることになりそうです。ただ、ここまではまだ想定内と言えます。日足チャートでは下落傾向が見て取れますが、依然として主要移動平均線が「上向き」です。一目均衡表の「転換線」が「基準線」を上から下に抜ける「逆転」を示現するまでドルの上昇傾向を支持していたいと考えます。

本日のドル円は109円〜109円80銭程度を予想します。

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ウォーレンバフェット氏率いるバイクシャーハサウェーは円建て債券を発行します。5年、10年、20年の3本で、総額1600億円の起債です。発行条件は順に、0.173%、0.437%、0.969%に決まりました。バークシャーはS&Pで「AA」(ダブルA)の格付けを得ているため、低金利での発行が可能になっていますが、同社は昨年8月日本の5大商社の株式をそれぞれ5%買っていたことで話題になりましたが、今回も手にした資金で商社株を買うのではないかとの噂が一部にあるようです。商社株は比較的配当利回りが高く、今もっとも勢いがあると言われている伊藤忠でも2.5%程度の利回りがあり、他の商社はほぼそれよりも高い利回りになっています。単純に調達した資金で商社株を買っただけで、結構な利ザヤが抜けます。もちろん、株価が下がるリスクもありますが、逆に株価でも利益を取れる可能性もあります。因みに昨年8月の伊藤忠の株価は2600円台で、足元では3500??台で推移しています。個人の富裕層もそうですが、法人も「カネがカネを生む」世界になっています。

良い週末を・・・・・。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
4/8 パウエル・FRB議長 「現在の回復は不均衡で不完全なままだ」、「全ての場所で新型コロナウイルスの感染を収束させるまで世界は経済活動を完全に再開することはできないだろう」、「経済再開に伴い物価圧力が高まることが想定されるが、一時的となる公算であり、仮に長く続くようであれば対策を講じるだろう」 長期金利は1.61台まで低下。株式市場では株価が上昇。
4/7 エバンス・シカゴ連銀総裁 「2.5%のインフレ率はいかなる状況でも限度を超えたと捉えるべきではない」、「3%でも一定の期間は歓迎されよう」 --------
4/7 FOMC議事録(3月16、17日分) 「委員会の目標である最大限の雇用と物価安定に向け一段と顕著な進展が実現するには、しばらく時間がかかる公算が大きいだろうと参加者らは認識した」 --------
4/5 イエレン・財務長官 「米国第一が、米国単独ということであっては決してならない」、「世界におけるリーダーシップと関与の欠如は、米国の機関と経済を脆弱させる」、(トランプ政権は)「米国を自ら孤立させ、米国が築いた国際秩序から後退させた」 --------
4/1 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 ( インフラ計画は)「全体的に成長が押し上げられるものの、インフレが高進することはないだろう」、(利上げについては)「急ぐ必要はない。私が目にする必要があるのは、2%のインフレ率が一定期間続き、さらに一定の期間2%を上回ると予想される状況だ。そうなれば、次の景気拡大期にインフレ率が必ず期間平均で2%になると私は確信できる」 --------
3/31 ラガルド・ECB総裁 「投資家は好きなだけわれわれを試すことができる。ECBは現在、例外的な手段があり、必要に応じて使用する」 --------
3/31 バイデン・米大統領 われわれは誰も置き去りにすることはない」、「誰もが成功すれば、皆がもっとうまくいく」、「米経済を中流階級から構築するべき時だ」、(計画は)「富みだけではなく、勤労に報いるものだ」 米ナスダック指数が買われ、債券は下落。
3/30 クオールズ・FRB副議長 FOMCはインフレ率が目標値の2%を幾らか上回っても問題ないと考えているとの見方は、非常に確実性の高いFOMCのコミットメントであり、私はこれを強く支持する」、「早まるべきではない」、「マクロ経済や金融政策の動向を過去10年だけでなく、15年や20年分まで見ることによって、優れた結果を導きだせるのではないだろうか」 --------
3/25 パウエル・FRB議長 「われわれの目標に向かってさらに大きく前進すれば、徐々に米国債や住宅ローン担保証券の購入を縮小していくだろう。その後さらに長期的には、利上げを可能にするためのテストを設定している」、「つまり、経済がほぼ完全に回復した時、時間をかけて非常に漸進的かつ透明性をもって、緊急時に導入した緩和策を引き上げていくことになる」 --------
3/23 ブレイナード・FRB理事 「見通しは大幅に改善しているが、雇用はコロナ禍前を1000万人近く下回っており、インフレ率は2%を下回る水準にとどまっていることから、経済はわれわれの目標からなお程遠い」 --------
3/23 イエレン財務長官 「経済対策の成立で、国民は生活基盤が損なわれることなくコロナ禍を乗り越えると私は確認している」、イエレン氏は「景気回復の兆候は見られるものの、われわれがどうゆう苦境から抜け出そうとしているのかを直視すべきだ。米国の雇用はなおコロナ前のピークを1000万人近く下回っている」 --------
3/23 パウエル・FRB議長 「今年は年を通じてインフレ率が上昇すると予想しているが、インフレへの影響は特段に大きくはなく、持続的でもないだろうというのが、最もあり得る展開だとみている」、「この四半世紀、経済には強いディスインフレ圧力が世界的に見受けられる」 --------
3/17 パウエル・FRB議長 「金融環境を巡るさまざまな指標を見れば、金融情勢が全般に極めて緩和的である様子を示していることが分かるだろう。そして、それは適切なことだ」、「予測を基に予防的に行動することはしない」、「われわれの目標達成を脅かすような、市場の無秩序な状況や金融環境の持続的なタイト化が見られれば懸念するだろう」 ドル円は109円台から下落。株価は上昇し、長期金利も1.64%台まで上昇。
3/17 FOMC声明文 「経済活動と雇用情勢が示す指標はここ最近は上向いたが、パンデミックによる悪影響が最も深刻だったセクターはなお脆弱だ」、「インフレ率は引き続き2%を下回っている」 --------
3/14 イエレン・財務長官 「インフレのリスクはあるだろうか。小さなリスクはあるが、制御可能だと私は考えている」(一部の物価は上昇するだろうが)、「それは一時的な動きだ」 --------
3/11 ラガルド・ECB総裁 「新型コロナウイルス流行に関する何らかの悪い展開がない限り、現在進行中のワクチン接種と段階的な制限緩和が、2021年中に経済活動がしっかりと回復するとの予想を支えるだろう」 --------
3/4 クノット・オランダ中銀総裁 (ワクチン接種により)「活動制限が解除されるであろう下期については楽観的になる理由があり、市場はそうした楽観を織り込みつつあるということだ」 --------
3/4 パウエル・FRB議長 われわれは広範囲にわたる金融環境を注視している。目標からまだ遠いところにいると考えている」、「われわれも目標達成を脅かすような、市場の無秩序な状況や金融環境の持続的なタイト化が見られれば懸念するだろう」、2%を大きく超えるインフレ期待を生むほどの水準にとどまることは確実にない」 株と債券は大きく売られ、長期金利は1.56%台に急騰。ドル円は107円台前半から107円98銭までドル高に。
3/3 ベージュブック 「新型コロナウイルス感染症ワクチンが一段と普及する中、大半の企業は向こう6−12カ月について楽観的な見方を維持している」、「大半の地区は、今回の調査機関中に雇用水準がゆっくりとではあるが上昇した」 --------
3/2 ブレイナード・FRB理事 「ワクチン接種の増加に加え、実行済みおよび予想される財政投入、緩和的な金融政策は2021年見通しが力強いことを示している」、「いかなる予想も依然かなりの不確実性が伴う」 --------
3/1 バーキン・リッチモンド連銀総裁 (債券利回りの上昇について)「景気見通しが強まっていることを考えれば、驚きはない」、「景気には地平線上の夜明けが見える」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和