今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米12月のPPI予想に反して下落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 米12月のPPIが予想に反して前月比で下落していたことで、ドル円は145円35銭近辺から売られる。1円程下落したが、その後やや値を戻して引ける。
  • ユーロドルは小幅に水準を切り下げ1.0937まで売られる。
  • 株式市場ではダウが売られたものの、他の2指数は小幅に上昇するなど、まちまちの展開。
  • 債券はPPIの下落を受け上昇。長期金利は3.93%台に低下。
  • 金は6日ぶりに大幅反発。原油も続伸。
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12月生産者物価指数 → −0.1%(前月比)、1.0%(前年同月比)
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ドル/円 144.35 〜 145.56
ユーロ/ドル 1.0937 〜 1.0987
ユーロ/円 158.54 〜 159.29
NYダウ −118.04 → 37,592.98ドル
GOLD +32.40 → 2,051.60ドル
WTI +0.66 → 72.68ドル
米10年国債 −0.027 → 3.939%

本日の注目イベント

  • 欧 ユーロ圏11月鉱工業生産
  • 欧 ユーロ圏11月貿易収支
  • 欧 世界経済フォーラム(WEF)年次総会(スイス・ダボス、19日まで)
  • 米 NY休場(キング牧師生誕記念日)
  • 米 アイオワ州で共和党の党員集会、大統領選挙の予備選・党員集会スタート

本日のコメント

前日146円台半ばまで上昇したドル円は反落。米12月の生産者物価指数(PPI)が前月比で「−0.1%」低下したことを受け、米長期金利が低下しドル円は144円35銭まで売られています。前日発表された消費者物価指数(CPI)は、総合指数が3カ月ぶりの伸びを示し、当局のインフレ目標である2%までの「ラストワンマイル」は容易ではないといった見方が出た状況とは異なる結果でした。PPIの予想以上の低下は、直ぐに3月の利下げを後押しするものではないものの、それでも今年の早い時期に利下げを意図していると見られる米金融当局にとって心強い材料となり、安心感を与える結果になります。現時点では3月のFOMC会合での利下げ観測は、昨年12月のFOMC直後から徐々に後退してはいるものの、依然としてくすぶっている状況です。シカゴ連銀のグールズビー総裁は、「金融市場は今年の積極的な利下げ軌道を想定しているが、政策当局者らよりも先走っている可能性がある」と述べ、「市場は前後を誤っている」と指摘しています。「金利に関する判断を左右するのは実際のデータになる」と述べ、昨年12月のFOMC会合で公表された最新の経済・金利予測で、2024年に3回の利下げが実施される可能性が高いことが示された点については、「個々の予測であり、将来の政策に関するFOMC全体の見解として受け止めるべきではない」と、FOXニュースとのインタビューでけん制しています。(ブルームバーグ)

今年は世界的に選挙の多い、「選挙イヤー」ですが、先陣を切って台湾では総統選が行われ、対中強硬派で民進党候補の頼清徳氏が勝利し、民進党が3期連続で政権を担うことになりました。頼氏は昨夜行った勝利演説で、「われわれは国際社会に対して、民主主義と権威主義の間で民主主義の側に立っていくと宣言する」と述べ、集まった観衆からは大きな拍手が送られました。また頼氏は台湾海峡の平和を維持することも表明していますが、バイデン大統領はこの日、短いコメントを発表し、「米国は台湾の独立を支持しない」と語っていました。対中強硬派の頼氏が勝利したことで、これまで以上に中国からの圧力が増すことも予想されます。米中央軍はフーシ派が26日に紅海南部で船舶への攻撃を行ったことに対して、駆逐艦や戦闘機、陸上攻撃用巡航ミサイルなどで攻撃を行ったことを明らかにしましたが、翌日の12日にも米軍はフーシ派のレーダー施設を攻撃したと発表しています。イスラエルとパレスチナ自治区ハマスの局地的紛争が、イランやイエメンなどを含め、中東全域に拡大する恐れもあります。さらに上記台湾海峡や、朝鮮半島でのリスクなど、現在行われている2つの戦争に加え、これまでにない程世界的な戦争拡大のリスクが高まっているように思われます。

ドル円は短期的には上昇傾向を維持していると見ていますが、日足では「一目均衡表の雲」は縮小傾向で、その上限は146円81銭まで低下してきています。147円台に入るようだと雲抜けを完成させ、一段と上昇する可能性もないとは言えない状況です。日銀の金融緩和政策の修正は動かないものと見ていますが、それでも元日に起きた能登半島地震での大規模な被害で、修正時期が先送りされるといった観測も支持されつつあります。先入観を持たずにチャートの示すサインをしっかりと見極める必要があります。

本日のドル円は144円30銭〜145円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
1/12 グールズビー総裁・シカゴ連銀総裁 「金融市場は今年の積極的な利下げ軌道を想定しているが、政策当局者らよりも先走っている可能性がある」、「市場は前後を誤っている」、「金利に関する判断を左右するのは実際のデータになる」、(昨年12月のFOMC会合で公表された最新の経済・金利予測で、2024年に3回の利下げが実施される可能性が高いことが示された点については)、「個々の予測であり、将来の政策に関するFOMC全体の見解として受け止めるべきではない」 --------
1/11 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「私が探しているのはインフレが当局の目標に回帰するという確信だ」(3月の利下げの見通しを聞かれ)、「FOMC会合前に、予断を与えたくない」 --------
1/11 メスター・クリーブランド連銀総裁 「3月利下げは時期として恐らく早過ぎる」 --------
1/11 ラガルド・ECB総裁 「利下げの時期についてはいえない。それを言えるのは、われわれがこの闘いに勝利した場合や、当局の予想通り2025年に2%に戻る場合、および今後数カ月のデータでそれが確信される場合だ」、「こうした確実性があれば、金利が下がり始めるだろうと確信している」 --------
1/10 シュナーベル・ECB理事 「利下げを協議するには時期尚早だ」、「2025年には目標の2%になる。地政学的な緊張がインフレの上振れリスクの一つだ」 ユーロドルは買われ、対円では昨年12月1日以来となる159円92銭まで上昇。
1/10 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「現在の金融政策の景気抑制的スタンスがバランス回復を継続させ、インフレ率を2%の長期目標に戻すというのが私の基本的な考え方だ」、「金融当局の目標を完全に達成するにはしばらくの間、景気抑制的なスタンスを維持する必要があるだろう。インフレ率が持続的に2%に向うと確信したときにのみ、抑制の程度を緩めることが適切となる」 ドル円の上昇を促す。
1/8 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が2%目標に向けて徐々に鈍化し続けるなら、金融政策が過度に景気抑制的になるのを防ぐため、政策金利引き下げのプロセスを開始するのが将来的には適切になるだろう」、「ただ、まだそうした地点にはない」と発言し、「政策スタンスの将来的変更を考慮するアプローチにおいて、私としては警戒的姿勢を保つ方針だ」 --------
1/8 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「われわれは現在、2%に向けた道を進んでいる。目標はその道を外さないことだ」、「勝利宣言には時期尚早だ」 --------
1/3 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米経済がソフトランディングを達成する可能性は高まっているように見えるが、確実とは言えない」、(大半の米金融当局者らが2024年の利下げを想定していることを認識しながらも)、「インフレ率の低下継続と広範な景気の動向という両方の問題に関する確信が金利変更のペースとタイミングを決める」 --------
1/3 FOMC議事要旨 政策金利は今回の引き締めサイクルにおけるピークが、それに近い可能性が高いとの認識を参加者は示した」、「当局者らは、インフレの持続的な鈍化が明確になるまで、当局は政策が景気抑制的なスタンスにとどまることが適切になるとの見解を再認識した」、「インフレの鈍化が持続に確認されるまで、景気抑制的なスタンス」、「参加者は総じて、経済見通しを巡っては不確実性が高いとの認識を示した」 債券が買われ株は売られる。ドル円は142円台から143円へ。
12/24 石破・元自民党幹事長 「『イシバノミクス』と偉そうなことを言うつもりはないが、本来の資本主義に戻す」、「金利のある世界が必要不可欠」、「異次元の金融緩和を実施し、壮大な実験ではあったが、それが所期の結果をおさめたかは検証が必要だ。需給ギャップが本当になくなったのか、そうではないと思っている」、「岸田首相は聞く力も大事だが、自民党が窮地にあり、発言力を発揮しなければいけない」 債券が買われ株は売られる。ドル円は142円台から143円へ。
12/20 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「金利を下げ始めることが重要だ。しかし、あまり急ぐ必要はないし、今すぐやるつもりもない」 --------
12/19 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「インフレ率は向こう6カ月は比較的緩やかに低下していくと考えている。これは景気抑制的なスタンスを撤回する緊急性がないことを意味する」、(FOMCは来年の後半に2回の利下げを実施するだろうと、自身は予想するが)「それに関して活発に議論しているというわけではない --------
12/19 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレがうまく鈍化すると見なすなら、われわれは当然、適正に対応するだろう」、「向こう数カ月間にインフレに関するデータの一貫性と広がりを見たい」 --------
12/18 デーリー・SF連銀総裁 「今年のインフレ鈍化の程度を踏まえ、当局者が24年に利下げの検討を開始するのは適切だとしつつも、それがいつになりそうか臆測するのは時期尚早だ」 債券が売られ、ドルは上昇。
12/18 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「米金融当局は市場がどう反応するかを考えて行動すべきではない」、「先週のFOMC後に公開した四半期の経済・金利予測に対し、市場が示した反応に困惑している」、「インフレについては、著しい改善が見られるものの、目標には依然戻っていない」 債券が売られ、ドルは上昇。
12/18 メスター・クリーブランド連銀総裁 (来年の早期利下げを織り込んでいる金融市場について)、「政策の正常化について、少し先走っている」、「利下げに関する議論が活発化すれば、1年先のインフレ期待と、それが2%の目標に向かってどの程度のペースで下がっていくかを注視する」 債券が売られ、ドルは上昇。
12/15 ブレイナード・NEC委員長 「サプライチェーンの圧力緩和や堅調な雇用市場、力強い生産性、データにおけるさまざまな遅行効果を総合すると、インフレとの闘いが終わりに近づきつつあることが示唆される」、「想定し得る限りにおいて、経済は実に良好なバランスが取れた状態になりつつある。ディスインフレのプロセスがかなり安定した形で進んでいるようだ。従って、進展の継続を期待する十分な根拠はある」 --------
12/15 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「インフレ率が予想通り低下すれば、2024年第3四半期に利下げが始まる」との見方を示し、「インフレ率は2024年末時点で2.4%前後になり、目標の2%からさほど離れていない見通しだ」 --------
12/15 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2023年に多くの進展を遂げてきたが、な注意しておこう。まだ終わっていない。従って、データが今後の金利動向を左右することになる」 --------
12/15 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「利下げについて協議しているというほどでもない」、(来年3月の利下げについて考えるのは)「時期尚早だ」、「パウエル議長が言ったように、問題はインフレ率が2%に下がるのを確実にするため、金融政策は十分景気抑制的なスタンスになったかどうかだ、それが目前にある問題だ」 ドル円は141円台後半から142円台半ばまで買われる。
12/14 ラガルド・ECB総裁 「決して警戒を緩めてはならない。利下げについては全く議論しなかった」(消費者物価の上振れリスクは続いていると警告し)、「現在あるデータを見ると、圧力は弱まっていない」 市場の利下げ観測を一蹴したことで、ユーロドルは1.09台から1.10台に上昇。
12/13 パウエル・FRB議長 「予測はあらかじめ決められた計画ではない。物価上昇圧力が再び台頭しないようにするため、追加利上げの選択肢を外す用意はない」、「利下げは視野に入り始めており、実社会で話題になっているのは明白だ。今回のFOMC会合でも議論した」 株と債券が急騰。金利が大幅に低下したことでドル円は145円前後から142円台半ばまで下落。
12/13 FOMC声明文 「最近の複数の指標は、経済活動の伸びが第3四半期の力強いペースから鈍化してきたことを示唆する。雇用の伸びは今年の早い時期より緩やかになってきているが、強さを維持しており、失業率は低いままだ。インフレはこの1年で緩和したが、依然として高い水準にある」 --------
12/6 シュナーベル・ECB理事 「直近のインフレ率を見ると、追加利上げの可能性はかなり低い」、「11月のインフレ速報値は非常に嬉しいサプライズだった。最も重要なのは、より頑固だった基調的インフレ率が、予想以上に急激に低下していたことだ。これは驚くべきことだ。全体として、インフレの進展は心強い」 ユーロ安が進み、ユーロドルは1.0760まで売られる。
12/5 ブロック・RBA総裁 「インフレ率を合理的な時間枠で当局目標に確実に回帰させるため、金融政策のさらなる引き締めが必要かどうかはデータやリスクの評価に左右される」、「インフレ率を目標に回帰させる確固たる決意に変わりはなく、それを達成するために必要なことを行うつもりだ」 --------
12/1 パウエル・FRB議長 「かなり急ピッチでここまで来たあと、FOMCは慎重に前進している。引き締め不足と引き締め過ぎのリスクは一段とバランスが取れてきている」、「政策は今、かなり景気抑制的な領域に入っている」、「十分景気抑制的なスタンスを達成したと確信を持って結論付ける、あるいは金融緩和の時期について臆測するのは時期尚早だ。追加の金融引き締めが適切になる場合、そうする用意がある」 株式と債券が買われ、ドル円は148円台から146円台半ばまで下落。金価格も過去最高値を記録。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和