今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米長期金利上昇にドル円続伸」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 経済指標の発表を受けて長期金利が一段と上昇。ドル円は148円90銭まで続伸。
  • ユーロドルは続落。1.0723まで売られ、約2カ月ぶりの安値に沈む。
  • 株式市場は指標の上振れと当局者の発言もあり、3指数が揃って下落。ダウは274ドル下落。
  • 債券は続落し、長期金利は4.15%台に急騰。
  • 金は続落し、原油は反発。
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1月ISM非製造業景況指数 → 53.4
1月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 52.5
1月S&Pグローバル総合PMI(改定値) → 52.0
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ドル/円 148.40 〜 148.9
ユーロ/ドル 1.0723 〜 1.0751
ユーロ/円 159.11 〜 159.80
NYダウ −274.30 → 38,380.12ドル
GOLD −10.80 → 2,042.90ドル
WTI +0.50 → 72.78ドル
米10年国債 +0.138 → 4.158%

本日の注目イベント

  • 豪 RBA、キャッシュターゲット
  • 豪 RBA、金融政策会合議事要旨公表
  • 独 独12月製造業新規受注
  • 欧 ユーロ圏12月小売売上高
  • 米 メスター・クリーブランド連銀総裁講演
  • 米 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁講演
  • 米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、討論会に参加
  • 米 コリンズ・ボストン連銀総裁、冒頭挨拶
  • 米 大統領選の民主党ネバダ州予備選
  • 加 カナダ12月住宅建設許可件数

本日のコメント

米長期金利の上昇とFOMCメンバーのタカ派寄りの発言を受け、ドル円は続伸しましたが、さすがに上値警戒感もあり149円台には届いていません。1月のISM非製造業景況指数は前月比2.9ポイント上昇の「53.4」でした。4ヵ月ぶりの高水準で、上昇幅は1年ぶりの大きさでした。先週末の雇用統計に次いで、連日の強い経済指標発表で米債券が売り込まれています。先週1日には3.88%台まで低下していた同金利は4.15%まで急騰し、ドルを押し上げています。好調だった米株式市場でも、金利上昇を受け3指数が売られ、特にダウの下げがきつくなっています。

ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、「少なくともパンデミック後の回復期に、中立に相当する政策スタンスの水準が上昇したということはあり得る。それによってFOMCとしてはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を引き下げ始める前に、今後発表される経済データを精査する時間ができた。引き締め過ぎの政策が景気回復を頓挫させるリスクは低下している」と、ミネアポリス連銀のHPへの寄稿文で述べています。また、アトランタ連銀のボスティック総裁は、イベントの冒頭で、「2017年に完全雇用は約4.5%の失業率と一致すると考えられていたが、それは終わった」と述べ、米失業率の長期見通しは大きく低下したと説明しています。さらに、シカゴ連銀のグ−ルズビー総裁もブルームバーグ・テレビジョンとのインタビューで、「過去7カ月にわたってかなり良好なインフレの統計が続いている。米金融当局の目標に近いか、それを下回るものすら見えた」と述べ、「これまで得られたようなデータの発表が続けば、正常化への道筋をはっきりと進むことになるはずだ」と述べ、ややハト派寄りの発言でしたが、3月のFOMC会合まで何週間もあるので、具体的な決定にコミットしたくないとし、さらに、いずれかの時点で0.5ポイントの大幅利下げを実施する可能性についても、「臆測したくない」と語っています。(ブルームバーグ)

ドル円は、しばらく続いていた146円台ミドルから148円台ミドルのレンジを上抜けしてきたようですが、まだ完全に抜けたとは言い切れないと思います。依然として多くの市場関係者が今後の円高の可能性を説いている中、ここから上方の水準では輸出筋を中心にドル売注文が並ぶのは必至です。要は、それらをこなしてドルが上昇できる材料が出るのかどうかという点が重要になります。

今朝の『大機小機』は、その意味で示唆に富んでいました。曰く、「FRBに引き締め手綱を簡単に緩める気配はなく、緩和に転じてもそのテンポはゆっくりしたものにとどまる可能性がある。一方、日銀が春にマイナス金利を解除するであろうことは、すでに市場に織り込まれている。しかしその先に急ピッチな連続利上げがあるとみるのには無理がある。せいぜい1%成長の経済である。結局、日米金利差が大幅に縮まるシナリオは描きにくい『24年こそ円高』という予想がまた外れても不思議はない」・・・・・。2022年、23年も同様な読みの中、想定外にドル高が大きく進行したことを忘れてはならない、とのご託宣。「歴史は繰り返す」ということです。

本日のドル円は147円80銭〜149円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
2/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「過去7カ月にわたってかなり良好なインフレの統計が続いている。米金融当局の目標に近いか、それを下回るものすら見えた」、「これまで得られたようなデータの発表が続けば、正常化への道筋をはっきりと進むことになるはずだ」、(3月のFOMC会合まで何週間もあるので、具体的な決定にコミットしたくない、(いずれかの時点で0.5ポイントの大幅利下げを実施する可能性についても)、「臆測したくない」 --------
2/5 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「2017年に完全雇用は約4.5%の失業率と一致すると考えられていたが、それは終わった」、「米失業率の長期見通しは大きく低下した」 --------
2/5 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「少なくともパンデミック後の回復期に、中立に相当する政策スタンスの水準が上昇したということはあり得る。それによってFOMCとしてはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を引き下げ始める前に、今後発表される経済データを精査する時間ができた。引き締め過ぎの政策が景気回復を頓挫させるリスクは低下している」 --------
2/4 パウエル・FRB議長 「拙速に行動することの危険性は、仕事がまだ完了しておらず、過去半年間に得られた非常に良い数値がインフレの先行きを巡る本当の指針でないことが後から分かる場合だ」、「実際にそうなるとは考えていないが、多少時間をかけて、インフレ率が持続的な形で2%に向けて低下しているとデータで引き続き確認するのが賢明な方法だ」(3月19、20日の次回FOMCまでに)「そうしたレベルの確信に達する可能性は小さい」 --------
2/3 ボウマンFRB理事 「インフレ鈍化を示す最近の指標には、勇気づけられる」、(物価上昇率が持続的に目標とする2%に向かった場合)、「金融政策が過度に景気抑制的になるのを防ぐため、いずれ政策金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「経済はまだその状態には達しておらず、重要なインフレ上振れリスクが多く残っている」、「将来の政策スタンスの変更を検討するに当たっては、引き続き慎重な姿勢で臨むつもりだ」 --------
1/31 パウエル・FRB議長 「政策金利は今回の引き締めサイクルにおけるピークにある可能性が高く、経済が概ね予想通りに展開した場合は景気抑制的な政策を元に戻すことが適切になるとわれわれは考えている」、「適切だと判断すれば、われわれは現在のFF金利誘導目標レンジをより長期にわたって維持する用意がある」、「3月を利下げ開始時期と特定する確信のレベルに委員会が同月までに達しそうだとは、私は考えていないことを言っておきたいが、まだそれはわからない」、「3月利下げは、最も可能性の高いケース、ないし基本シナリオと呼ばれるものでは、恐らくないだろう」 株が大きく売られ、債券は急騰。金利が大きく低下したことでドル円は147円台半ばから146円前後まで下落。
1/31 FOMC声明文 「フェデラルファンド(FF)金利誘導目標レンジに対するいかなる調整も、委員会はそれを検討する上で、今後入手するデータや変化する見通し、リスクのバランスを慎重に見極める。委員会はインフレ率が持続的に2%に向っているとの確信を強めるまで、誘導目標レンジの引き下げが適切になるとみていない」 株が大きく売られ、債券は急騰。金利が大きく低下したことでドル円は147円台半ばから146円前後まで下落。
1/25 トルコ中銀声明文 「ディスインフレ基調を確立するのに必要な金融引き締めは達成された。月次インフレ率の基調的トレンドに大幅な低下が見られ、インフレ期待が中銀の予測レンジに収束するまで、必要な限り現在の金利水準を維持する」 ドルリラは変わらず。
1/25 ラガルド・ECB総裁 「利下げはまだ議論されていない」、「前に自分が言ったことに変わりはない」、(ドイツなどが利下げには慎重な姿勢を見せていることに関して)、「政策委員会では、利下げを議論するのは時期尚早だというのがコンセンサスだった」 ユーロドルは1.09台から1.0822まで売られる。
1/23 植田・日銀総裁 「物価目標実現の確度が少しずつ高まっている」 ドル円148円から147円台割れまで売られる。
1/18 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「インフレ率が金融当局の目標である2%に向かう軌道に乗っている証拠をより多く目にしたい」、「現在の私の見通しは、今年第3四半期(7−9月)のどこかで最初の利下げを行うというものだ。データがどのような進展をたどるかを見極める必要がある」 ドル円を押し上げる。
1/16 ウォラー・FRB理事 「持続的な形で個人消費支出(PCE)インフレ2%達成が射程距離内にあると確信を強めつつある。インフレが再燃せず、高水準にとどまらない限り、FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを年内に引き下げることが可能になると、私は考えている」、「金利の引き下げを開始するのに適切な時期が来れば、秩序だって慎重に引き下げることが可能であり、そうすべきだ」、「経済活動と労働市場は良好な状態で、インフレ率は漸進的に2%へと低下しつつあることから、以前ほど急いだり迅速に利下げをしたりする理由が見当たらない」 債券と株が売られ、金利上昇にドル円は146円台半ばから147円台前半まで上昇。
1/15 ナーゲル・ドイツ連銀総裁 「利下げについての協議は時期尚早だろう」 --------
1/15 ホルツマン・オーストリア中銀総裁 「イエメンの親イラン武装組織フーシ派による動きで、地政学的な脅威が高まったが、これで終わりではないだろう。より広範な動きにつながる可能性がある。2024年は利下げを全く想定すべきではないと」 --------
1/12 グールズビー総裁・シカゴ連銀総裁 「金融市場は今年の積極的な利下げ軌道を想定しているが、政策当局者らよりも先走っている可能性がある」、「市場は前後を誤っている」、「金利に関する判断を左右するのは実際のデータになる」、(昨年12月のFOMC会合で公表された最新の経済・金利予測で、2024年に3回の利下げが実施される可能性が高いことが示された点については)、「個々の予測であり、将来の政策に関するFOMC全体の見解として受け止めるべきではない」 --------
1/11 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「私が探しているのはインフレが当局の目標に回帰するという確信だ」(3月の利下げの見通しを聞かれ)、「FOMC会合前に、予断を与えたくない」 --------
1/11 メスター・クリーブランド連銀総裁 「3月利下げは時期として恐らく早過ぎる」 --------
1/11 ラガルド・ECB総裁 「利下げの時期についてはいえない。それを言えるのは、われわれがこの闘いに勝利した場合や、当局の予想通り2025年に2%に戻る場合、および今後数カ月のデータでそれが確信される場合だ」、「こうした確実性があれば、金利が下がり始めるだろうと確信している」 --------
1/10 シュナーベル・ECB理事 「利下げを協議するには時期尚早だ」、「2025年には目標の2%になる。地政学的な緊張がインフレの上振れリスクの一つだ」 ユーロドルは買われ、対円では昨年12月1日以来となる159円92銭まで上昇。
1/10 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「現在の金融政策の景気抑制的スタンスがバランス回復を継続させ、インフレ率を2%の長期目標に戻すというのが私の基本的な考え方だ」、「金融当局の目標を完全に達成するにはしばらくの間、景気抑制的なスタンスを維持する必要があるだろう。インフレ率が持続的に2%に向うと確信したときにのみ、抑制の程度を緩めることが適切となる」 ドル円の上昇を促す。
1/8 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が2%目標に向けて徐々に鈍化し続けるなら、金融政策が過度に景気抑制的になるのを防ぐため、政策金利引き下げのプロセスを開始するのが将来的には適切になるだろう」、「ただ、まだそうした地点にはない」と発言し、「政策スタンスの将来的変更を考慮するアプローチにおいて、私としては警戒的姿勢を保つ方針だ」 --------
1/8 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「われわれは現在、2%に向けた道を進んでいる。目標はその道を外さないことだ」、「勝利宣言には時期尚早だ」 --------
1/3 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米経済がソフトランディングを達成する可能性は高まっているように見えるが、確実とは言えない」、(大半の米金融当局者らが2024年の利下げを想定していることを認識しながらも)、「インフレ率の低下継続と広範な景気の動向という両方の問題に関する確信が金利変更のペースとタイミングを決める」 --------
1/3 FOMC議事要旨 政策金利は今回の引き締めサイクルにおけるピークが、それに近い可能性が高いとの認識を参加者は示した」、「当局者らは、インフレの持続的な鈍化が明確になるまで、当局は政策が景気抑制的なスタンスにとどまることが適切になるとの見解を再認識した」、「インフレの鈍化が持続に確認されるまで、景気抑制的なスタンス」、「参加者は総じて、経済見通しを巡っては不確実性が高いとの認識を示した」 債券が買われ株は売られる。ドル円は142円台から143円へ。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和