今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米2月PPIも上振れ」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は朝方、時事通信社が来週の会合で「日銀がマイナス金利解除で調整に入った」と報道したことで、147円44銭まで売られたが、米2月のPPIの結果にドルが急騰。148円36銭まで買われた。
  • ユーロドルも朝方には1.0945まで買われたが、ドルが買われたことで、1.0881まで下落。
  • 株式市場はFRBによる利下げ開始が遅れるとの見方から3指数が揃って反落。
  • 債券は続落。米PPIが市場予想を上回っていたことで早期の利下げ観測が後退。長期金利は4.29%台へと急騰。
  • 金は反落し、原油は続伸。
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2月生産者物価指数 → 0.6%
新規失業保険申請件数 → 20.9万件
2月小売売上高 → 0.6%
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ドル/円 147.44 〜 148.36
ユーロ/ドル 1.0881 〜 1.0945
ユーロ/円 161.10 〜 161.71
NYダウ −137.66 → 38,905.66ドル
GOLD −13.30 → 2,167.50ドル
WTI +1.54 → 81.26ドル
米10年国債 +0.10 → 4.290%

本日の注目イベント

  • 米 3月NY連銀製造業景況指数
  • 米 2月輸入物価指数
  • 米 2月輸出物価指数
  • 米 2月鉱工業生産
  • 米 2月設備稼働率
  • 米 3月ミシガン大学消費者マインド(速報値)

本日のコメント

昨日の本欄で、FRBが今夏の利下げに踏み切ることはほぼ間違いないが、緩やかになる可能性があることに触れましたが、昨日発表された米2月の生産者物価指数(PPI)も、火曜日に発表された消費者物価指数(CPI)同様、市場予想を大きく上回り、米国のインフレは粘着性が強いことが改めて確認されました。PPIの上振れで、この日発表された2月の小売売上高が予想を下回る伸びも相殺され、完全に陰に隠れた格好でした。

2月のPPIは市場予想の「0.3%」(前月比)に対して、「0.6%」と、6カ月ぶりの大幅上昇でした。またコアPPIでも、前月比、前年同月比とも予想を上回っています。燃料や食品価格の上昇が指数を押し上げており、生産者レベルでの価格圧力の高まりは、インフレとの闘いでさらなる進展を目指すFRBにとって、道のりが平たんでないことを示し、これまで言われてきたように「ラスト・ワンマイル」という道のりの厳しさを突き付けられた格好です。これで来週のFOMCでの利下げ開始の可能性はほぼ消え、利下げ開始は秋以降になるとの見方さえ浮上しています。パウエル議長の議会証言で一気に利下げ観測が前倒しになり、今度はCPIとPPIの結果でその見方が大きく後退。「市場は常にオーバーシュートするものだ」ということは、投資家として肝に銘じておくべきです。

NYでのドル円は乱高下気味でした。NYの朝方には、時事通信社の「日銀は18、19日に開く金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除する方向で調整に入った」との報道を受けドル売りが活発となり、147円44銭近辺まで売られました。その直後に上記PPIが発表され、一気にドル買いが優勢となり148円36銭までドル高が進みました。日足チャートでは、先週末のドル売りで雲の上限に下落を止められましたが、ローソク足はその後見事に上昇する雲に沿って上昇しており、未だに雲入りには至っていません。今週には雲入りが完成すると予想していましたが、やや想定外の動きです。ただ、時事通信社の報道が正しいとすれば、ここからドルの上値は重く、150円台は近いようで遠い水準かと思います。「日銀の金融正常化への政策変更」は、すでに織り込まれているとは思いますが、来週その結果が示されれば再び下値トライもないとは言えません。

イスラエルがパレスチナ自治区ガザを攻撃して以来、バイデン大統領を初め米要人からは同攻撃に対する「寛容な発言」が続いていましたが、今回初めてネタニヤフ政権に対する厳しい言葉が発せられました。民主党のシューマー上院院内総務は14日に議会上院で行った演説で、「多くのイスラエル国民が自国政府のビジョンや方向性に対する信頼を失っている時に、同国の将来について健全かつオープンな意思決定プロセスを可能にするためには、新たな選挙が唯一の方法だと信じている」と述べ、「指導者を選ぶのはイスラエル国民だが、イスラエルは『のけ者』になったら生き残れない。ネタニヤフ政権は昨年10月7日以降のイスラエルのニーズに、もはや適合していない。世界はあれから激変し、イスラエル国民は過去にとらわれた統合ビジョンによって、今まさに抑圧されている」と語っています。シューマー氏はNY州選出の議員で、ユダヤ系としては最高位の米議員です。これに対して共和党のマコネル院内総務は同氏の発言を即座に非難し、「民主的に選ばれたイスラエルの指導者の退陣を求めるのは、自国の民主主義に対する外国の干渉に敏感に反応する米国人としてはグロテスクで偽善者だ」と述べています。(ブルームバーグ)もしかしたらこの議論も、大統領選での争点の一つになるかもしれないと考えています。

本日のドル円は147円30銭〜148円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
3/9 バイデン大統領 「保証はできないが、金利はもっと下がるのは間違いない」、「金利を決定する小さな組織が今後引き下げに動くと確信するからだ」 --------
3/7 パウエル・FRB議長(議会証言) 「インフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信が強まるのを待っている」、「その確信を得た時点で、今から遠くないその時点で、景気抑制の度合いを巻き戻し始めるのが適切になるだろう」 株と債券が買われ、ドル円は147円52銭まで下落。
3/7 中川・日銀審議委員 「2%の物価安定目標の実現に向けて、着実に歩みを進めている」 ドル円は148円台後半から148円台半ばまで売られる。プラス圏で推移していた日経平均株価も大きく下落。
3/6 パウエル・FRB議長(議会証言) 「インフレとの闘いで勝利したとの確信を得るまでは性急に利下げに動く考えはない」、「年内いずれかの時点で、利下げを開始するのが適切になる可能性が高い」、「当局としてはまだその用意はない」 株と債券が買われ、ドル円は149円10銭まで下落。
3/4 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「7−9月に1回利下げを始めるのが適切だ」、「利下げが連続したものになることは恐らくないだろう」、「不確実性を考えると、行動を起こした後に市場参加者や企業幹部、および家計がそえにどう反応するかを見ることがある程度望ましいのではないかと思う」 株と債券が売られドルが買われる。
2/29 デーリー・SF連銀総裁 「景気が腰折れする差し迫ったリスクはない。われわれが避けたいのは、インフレ率が2%になるまで待ち続け、非常に引き締められた金融政策を維持し、不必要な景気の低迷をもたらすことだ」 --------
2/29 ボスティック・アトランタ連総裁 「ここ数回発表されたインフレの数字は、この日公表されたものを含め、すぐに2%に到達するような進展ではなく、むしろいくらか起伏のある道のりになることを示している」 --------
2/28 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「持続的な2%インフレ目標に向けて、まだ長い道のりがある」 株価が下落し、ドル円は小幅に上昇。
2/28 コリンズ・ボストン連銀総裁 「年内に政策緩和を開始するのが適切になるだろう。そうなれば、徐々に金利を引き下げるという整然としたフォワードルッキングなアプローチが、物価の安定と最大限の雇用を促しながらも、リスク管理に必要な柔軟性を提供するはずだ」、「インフレ率は依然として高く、安定的な2%前後への道筋は険しいものになる公算が大きい」 株価が下落し、ドル円は小幅に上昇。
2/28 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「2%への迅速な道のりではないことを示唆する兆候がなお見られる」、「そこに向って進み、悪いことが起こっていない限り、忍耐強く臨むことに満足している」、(今夏の利下げを実施することが適切になるとの見方を改めて示しながらも)、「まだやるべきことが残っており、勝利宣言することに消極的なのはこのためだ。長い闘いに取り組んでいる」 株価が下落し、ドル円は小幅に上昇。
2/27 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が当局の2%目標に向って持続的に低下していることが今後のデータで引き続き示唆されれば、金融政策が過度に抑制的にならないよう政策金利を徐々に引き下げるのがいずれ適切になるだろう」、「私の見解では、まだその地点には達していない」 --------
2/26 シュミッド・カンザスシティ連銀総裁 「インフレ率が目標を上回り、労働市場が逼迫し、需要にかなりの勢いが見られる現状にあって、政策スタンスを先制的に調整する必要はないというのが、私の考えだ」、「忍耐強くこれまでの引き締め策に経済がどのように反応するのか引き続き見守り、インフレとの闘いで勝利を収めたと納得できる証拠を持つのが、最善の行動指針と確信している」 --------
2/21 ボウマン・FRB理事 (利下げついて質問を受け)、「それが今でないのは確実だ」 --------
2/21 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「財の価格は低下しているが、居住費とサービス価格がそれを相殺する以上の伸びを示した」、「現在は前年比のデータより、短期的なインフレの数値に注視している」 --------
2/21 FOMC議事録 「大部分の参加者は政策スタンスを時期尚早に緩和するリスクを指摘し、インフレ率が2%まで持続的に低下しているかを見極める上で、今後入手するデータを注意深く評価することの重要性を強調した」、「利下げを長く待ち過ぎることによる経済へのリスクを指摘した当局者は2名だけだった」とし、「参加者は景気抑制的な金融政策スタンスをどれくらいの期間維持する必要があるかに関連して不確実性を強調した」 株と債券が売られ、ややドルを押し上げる。
2/16 デーリー・総裁SF連銀総裁 「物価の安定は視野に入っている。ただ、まだやるべき仕事はある」、「供給力を上回る経済の勢いが継続しており、それが引き続きインフレ見通しにリスクになっている」 --------
2/14 バー・FRB副議長 「パウエル議長が直近の記者会見で示したように、FOMC参加者と私はインフレ率が2%に向う道筋にあると確信しているが、利下げプロセスを開始する前に、引き続き良好なデータを確認する必要がある。現在の状況を考慮し、政策正常化を検討する上で議長が述べた慎重なアプローチを完全に支持する」 --------
2/14 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「利下げはインフレが目標への軌道上を進んでいるとの確信と結びつけられるべきだ」、「多くの予想が示唆するように、インフレが数カ月にわたってやや高めに出たとしても、当局目標への道筋となお整合すると言えよう」 --------
2/12 ボウマン・FRB理事 「景気が現状で維持する限り、政策金利は適切な水準にあると考える。利下げの時期や幅について語るのは時期尚早だ。当面は利下げが適切だとはみていない」 --------
2/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ圧力が続くという現実的なリスクはあると思う。この段階で勝利を宣言するのはかなり大胆に思える」、「13日に発表される最新のインフレデータを検証するつもりだ」 --------
2/8 内田・日銀副総裁 「物価と賃金の好循環が見通せる確度が少しずつ高まっている」、(マイナス金利を解除しても)、「どんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していく」 円が売られ、ドル円は148円前後からNYでは149円台半ばまで上昇。日経平均株価は一時800円を超える上昇。
2/7 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「われわれはより良好なインフレデータを求めているわけではなく、2%の水準付近にあることを示す追加のインフレデータを求めているだけだ。さらに数カ月そうしたデータを目にできれば、強い確信を得ることができると私は考えている」 --------
2/7 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「到達するべきところに至るために辛抱強い姿勢でいることを強く支持する」、「勝利宣言は非常に心をひかれるが、私からその言葉を聞くことは決してないだろう」 --------
2/7 コリンズ・ボストン連銀総裁 「利下げに踏み切る前に、インフレ率が金融当局が目標とする2%に着実に近づきつつあることを示すさらなる証拠が必要だ」(同氏は今年のFOMCでの議決権は有していないが)、「年内に政策の引き締まりを緩和し始めるのが適切になる可能性が高い」 --------
2/7 クーグラー・FRB理事 「インフレと労働市場の継続的な鈍化により、ある時点でフェデラルファンド(FF)金利誘導目標レンジの引き下げが適切になる可能性がある。一方、ディスインフレの進展が失速した場合、FRBの2つの責務を確実に進めるために、誘導目標レンジをより長期にわたって現行水準に維持することが適切になるかもしれない」 --------
2/6 メスター・クリーブランド連銀総裁 「インフレが持続可能かつタイムリーな形で2%に戻る道筋を進んでいる十分な証拠がないまま、金利を余りに早期にあるいは、あまりに急速に引き下げるのは間違いとなろう。景気が想定通りに進展すれば、今年中にそうした確信が得られる。そして利下げを開始することが可能になる」 債券と株が買われ、ドル円は金利が低下したことで下落。
2/6 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「過去6−9カ月に驚くべきことが起こった。インフレ率が非常に急低下した。まだ最終地点には達していないが、インフレに関して大きな進展を遂げた」、「こうした状況が続くと想定するなら、インフレは当局の2%目標に下がる軌道上を進んでいる。3カ月および6カ月のインフレ指標は、基本的には2%だ」と指摘した上で、「ただ、責務が完了したとはまだ言いたくない」 債券と株が買われ、ドル円は金利が低下したことで下落。
2/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「過去7カ月にわたってかなり良好なインフレの統計が続いている。米金融当局の目標に近いか、それを下回るものすら見えた」、「これまで得られたようなデータの発表が続けば、正常化への道筋をはっきりと進むことになるはずだ」、(3月のFOMC会合まで何週間もあるので、具体的な決定にコミットしたくない、(いずれかの時点で0.5ポイントの大幅利下げを実施する可能性についても)、「臆測したくない」 --------
2/5 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「2017年に完全雇用は約4.5%の失業率と一致すると考えられていたが、それは終わった」、「米失業率の長期見通しは大きく低下した」 --------
2/5 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「少なくともパンデミック後の回復期に、中立に相当する政策スタンスの水準が上昇したということはあり得る。それによってFOMCとしてはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を引き下げ始める前に、今後発表される経済データを精査する時間ができた。引き締め過ぎの政策が景気回復を頓挫させるリスクは低下している」 --------
2/4 パウエル・FRB議長 「拙速に行動することの危険性は、仕事がまだ完了しておらず、過去半年間に得られた非常に良い数値がインフレの先行きを巡る本当の指針でないことが後から分かる場合だ」、「実際にそうなるとは考えていないが、多少時間をかけて、インフレ率が持続的な形で2%に向けて低下しているとデータで引き続き確認するのが賢明な方法だ」(3月19、20日の次回FOMCまでに)「そうしたレベルの確信に達する可能性は小さい」 --------
2/3 ボウマンFRB理事 「インフレ鈍化を示す最近の指標には、勇気づけられる」、(物価上昇率が持続的に目標とする2%に向かった場合)、「金融政策が過度に景気抑制的になるのを防ぐため、いずれ政策金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」、「経済はまだその状態には達しておらず、重要なインフレ上振れリスクが多く残っている」、「将来の政策スタンスの変更を検討するに当たっては、引き続き慎重な姿勢で臨むつもりだ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和