「ドル円150円台半ばまで売られる」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は東京時間の152円台から下げが加速し、NYでは一時150円45銭と、およそ1カ月ぶりのドル安水準を記録。米金利が低下し、感謝祭前ということもあり、ドル売りが優勢に。
- ドル高修正の動きの中、ユーロドルは続伸したものの上値は重く、1.05台後半までの反発にとどまる。
- 株式市場では3指数が揃って反落。さすがのダウもこの日は138ドル下落し、上昇も一服。
- 債券は買われた。長期金利は4.26%台と、およそ1カ月ぶりの低水準に。
- 金は続伸。原油は3日続落。
新規失業保険申請件数 → 21.3万件
7−9月GDP(改定値) → 2.8%
10月耐久財受注 → 0.2%
10月個人所得 → 0.6%
10月個人支出 → 0.4%
10月PCEデフレータ(前月比) → 0.2%
10月PCEデフレータ(前年比) → 2.3%
10月PCEコアデフレータ(前月比) → 0.3%
10月PCEコアデフレータ(前年比) → 2.8%
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ドル/円 | 150.45 〜 151.80 |
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ユーロ/ドル | 1.0527 〜 1.0587 |
ユーロ/円 | 159.24 〜 160.06 |
NYダウ | −138.25 → 44,722.06 |
GOLD | +18.50 → 2,664.80ドル |
WTI | −0.05 → 68.72ドル |
米10年国債 | −0.047 → 4.260% |
本日の注目イベント
- 豪 豪7−9月期民間設備投資
- 独 独11月消費者物価指数(速報値)
- 欧 ユーロ圏11月消費者信頼感指数
- 欧 ユーロ圏11月景況感指数
- 米 NY休場(感謝祭)
- 加 カナダ7−9月期経常収支
本日のコメント
筆者は、11月25日(月)の「今週のレンジ予想」で下記のコメントを残しました。「テクニカルではドル高傾向に大きな崩れは見当たりませんが、日足の『MACD』では153円台までドル安が進んだことを受け、マックDとシグナルとの差である『ヒストグラム』がマイナス圏に入り、下方に拡大しているのがやや気になります。この指標はかなり早い段階で方向性を示すことが多いことから、一応注意が必要かもしれません。」
懸念していた動きが現実的になってきました。ドル円は目先の短期的レンジである153−156円の下限を割り込み、昨日のNYでは大台を変え、150円45銭近辺までドル安が進んでいます。米金利が上昇したり、株価がそれ以上に買われ、「トランプ・トレード」を囃し立てていました。リスクオンの高まりからドル円も堅調に推移していましたが、「トランプ・トレード」の動きに対しても、まだ実際の政策が始動していない段階での狂乱にも警告してきました。次期USTR(米通商代表部)の代表に、ジェイミーソン・グリア氏が指名されました。グリア氏は第一次トランプ政権時代、ライトハイザー代表の右腕的存在で対中関税導入に大きな役割を果たしてきた人物です。
トランプ次期大統領はすでに、中国製品に対して現行の関税に10%加えることを発表し、さらにカナダとメキシコに対しても25%の関税を課すことを発表しています。日本と欧州に対してはまだ沈黙を守っていますが、一律に10%の関税をかけてくる可能性があります。日本に対する関税引き上げの恐怖から、ドル円が大きく下げている面もあります。日本の株式市場への影響はさらに大きく、NYダウが連日最高値を更新する中でも軟調な動きでした。今日の東京株式市場が大きく下げると、リスクオフから円が買われ、再び150円台を試す展開も考えられます。トヨタ自動車など日本の自動車メーカーはメキシコで生産をし、それを米国に輸出しています。さらに円高に振れると、「為替」と「関税引き上げ」のダブルパンチに見舞われることになります。
「10月のPCE価格統計」では、おおむね市場予想と一致していました。PCEデフレータは総合で前年同月比「2.3%」、コアでは「2.8%」でした。特にコア指数は、3カ月間の年率でも「2.8%」と、インフレが根強く残っていること示唆しており、FRBメンバーが利下げには慎重な姿勢を見せていることと整合する結果になっています。今後トランプ次期政権がさらに関税引き上げを、残りの日欧や韓国にも広げるようだと、貿易面では米国の貿易赤字は改善するものの、価格面ではインフレの加速につながる可能性が高いとみられます。中国は現時点では動きは見せていませんが、報復措置を講じるようだと、「貿易戦争」も現実味を帯びてきそうです。
イスラエルがレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラとの停戦に合意しました。停戦は60日間の一時的なものですが、これが恒久停戦につながるかどうかはまだ不透明です。ヒズボラとの停戦を受け入れたことで、ネタニヤフ氏としては国際的な批判をかわす狙いがあったようですが、日経新聞は「2025年1月に迫ったトランプ次期政権まで時間を稼ぐ狙いがある」と分析しています。第一次政権でのトランプ氏はイスラエルに好意的な政策を推進しており、ネタニヤフ氏はトランプ氏を説得し、ハマスに対して戦略的に有利に持っていきたいとする思惑もあるようです。
本日はNYが「感謝祭」のため休場です。150円という大きな節目が重要になります。日足チャートでも一目均衡表の「基準線」を大きく下抜けして来ました。「雲の上限」は150円を割れたところにありますが、これも徐々に切り上がっていることから、仮に今の水準が続いたとしても1週間ほどで雲の中に入ることになります。まだドル高トレンドが転換したとは言えませんが、変化の兆しはあります。ここは、十分に注意しながら臨みたいところです。本日のドル円は150円50銭〜152円30銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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11/20 | クック・FRB理事 | (FRBが担う雇用とインフレの両責務について)、「リスクはおおむね均衡している。金利の方向性は下向きだが、引き下げの幅とタイミングは、これから出て来るデータと経済の見通し次第だ」 | -------- |
11/20 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「最終的な行先は不確かだが、ある程度の追加緩和は必要だと考える。現行の政策は依然として少なくとも幾らかは景気に抑制的だから」 | -------- |
11/20 | ボウマン・FRB理事 | 「政策金利の引き下げに関して、インフレ目標をなお達成できていない点を認識しつつ、労働市場の動向を注意深く見守りながら、最終地点までどの程度離れているのか正確に判断できるよう慎重に進めたい」、「2023年初頭以降、インフレ抑制でかなりの進展が見られたが、ここ数カ月は進展が停滞しているようだ。また、物価安定目標を達成する前の段階で、政策金利が中立水準に達する、あるいは中立水準を割り込むリスクを排除すべきではない」 | -------- |
11/18 | 植田・日銀総裁 | 「経済や物価の改善に併せて緩和度合いを少しずつ調整していくことが成長を支え、物価安定の目標を持続的・安定的に実現していくことに資する」、(そのタイミングについては)、「先行きの経済・物価・金融情勢次第」とし、「毎回の会合で利用可能なデータや情報などから、経済・物価の現状評価や見通しをアップデートしながら政策判断を行っていく」 | 利上げへの言及がなかったことでドル円は154円台半ばから154円台後半へと上昇。 |
11/14 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「米金融当局は大きな進展を遂げたが、まだ勝利宣言をすることは出来ない」 | -------- |
11/14 | クーグラー・FRB理事 | 「インフレの進展を停滞させる、あるいは再び加速させるリスクが生じれば、政策金利の引き下げを一時停止するのが適切となるだろう。しかし、労働市場が突然減速する場合、政策金利の漸進的な引き下げを継続することが適切だろう」 | -------- |
11/14 | パウエル・FRB議長 | 「最近の経済は目覚ましく良好に推移している。慎重なペースで政策金利を引き下げる余地が生じている」、「経済は、利下げを急ぐ必要性についていかなるシグナルも発していない。労働市場の状況は概ね均衡し、インフレ期待もかなり安定する中で、インフレ率は時に起伏のある道をたどりながらも、2%の目標に向かって引き続き低下していくと予想している。また、経済データが許せば、利下げをゆっくり進めるのが賢明だろう」 | ややタカ派的であったことからドル円は156円41銭まで上昇。 |
11/13 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「インフレは正しい方向に進んでいると考える。その点について自信を持っているが、もう少し様子を見る必要がある。何らかの決定を下す前に、さらに1カ月もしくは6週間のデータを分析しなくてはならない」 | -------- |
11/13 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「終着点に達するまでFOMCはさらに追加利下げを必要とする可能性が高いだろう。しかし、利下げの回数やペースを見極めるのは難しい」 | -------- |
11/13 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「インフレを目標に回帰させ、最大限の雇用を支える上で、金融政策は好位置にある。政策金利を時間とともに中立水準へ漸進的に調整することを通じて、これらの達成を図っている。インフレが2%に向って低下し続けることが前提だ」、「追加利下げを検討する際には、今後入手するデータを思慮深く、かつ辛抱強く検証することが可能だ」 | -------- |
11/12 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | (来月のFOMC会合での利下げ一時停止の可能性について尋ねられ)、「インフレ面で驚くようなことが起こらない限り、見通しが劇的に変わることはないだろう」、「それまでにインフレが予想外の上振れを見せれば、利下げを一時停止する可能性もある。一方で、12月までに労働市場が実際に過熱するとは考えにくく、それほど時間はない」 | -------- |
11/12 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「購買力は高いが価格に敏感な消費者に、より生産的で価値の高い労働力が重なり、経済を良好な方向に導いた。米金融当局は経済が今後どう展開しても適切に対応できる状態にある」、(今後の経済シナリオについては)「1つは、米選挙を巡る不透明感が消え、企業が投資・雇用を再開した場合、金融当局としてインフレの上振れリスクを警戒するシナリオ。2つ目は購買力低下による利幅縮小に対応して企業が人員を削減、その結果として雇用リスクが上昇するシナリオだ」 | -------- |
11/9 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「利下げ幅は、議会と新政権の目先の計画ではなく、生産性と経済成長にかかっている。成長が維持され、今後も構造的に生産性に高い経済成長が続くのであれば、恐らくそれほど大きな利下げには至らないだろう」と、「トランプ時期政権と新議会による政策はインフレを刺激し、最終的に利下げ幅の縮小につながるかどうかを判断するのは時期尚早」 | -------- |
11/7 | パウエル・FRB議長 | 「われわれは時間をかけてより中立的なスタンスへと移行しており、そうした中で今回の政策スタンスのさらなる調整は、経済と労働市場の強さを維持する一助となり、インフレ面でのさらなる進展を今後も可能にするだろう」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。 |
11/7 | FOMC声明文 | 「委員会は雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると考える。経済見通しは不確かで、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」、「今年に入って以降、労働市場の状況は概ね緩和してきた。失業率は上昇したが、依然として低い水準だ」、「委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことを強くコミットしている」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。 |
10/21 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | 「これまでのところ、われわれが利下げを続けないことを示唆する情報は見当たらない」、「インフレ率が既に2%に向かいつつある経済にとって、極めて引き締め的な金利となっており、労働市場のさらなる悪化を私は望まない」、「われわれは現在の経済情勢と変化しつつある状況に適合するよう、政策を調整し続けていく」 | -------- |
10/21 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「中立的な水準に到達する上で、私は今後数四半期にわたってより緩やかな利下げを予想している。ただし、それはデータ次第にある」、「より早いペースで動くためには、労働市場が急速に弱くなっているという確かな証拠が必要だ」 | 債券が売られ金利が上昇。ドル円は149円台後半から150円台後半に。 |
10/21 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「2大責務のインフレと労働市場に対するリスクのバランスを取る上で、それほど景気抑制的でない金融政策が寄与する。景気が現在の想定通りに進展すれば、政策金利をより正常または中立的水準に向けて徐々に引き下げる戦略は、リスクを管理し、目標を達成するのに役立つだろう。しかし、正常化への道筋がどのようなものになるのか、政策がどの程度のスピードで対応すべきか、そして金利がどこに落ち着くべきかについては、様々なショックが影響する可能性がある」 | 債券が売られ金利が上昇。ドル円は149円台後半から150円台後半に。 |
10/17 | ラガルド・ECB総裁 | 「成長のリスクは依然として下振れ方向に傾いているが、リセッションは想定していない。われわれは引き続きソフトランディングを見込んでいる」 | -------- |
10/17 | ECB声明文 | 「インフレについて入ってくる情報は、ディスインフレのプロセスが順調に進行していることを示している」、「政策委員会は物価安定の目的を達成するため必要な限り、政策金利を十分に景気抑制的な水準に維持する。景気抑制の適切な水準と期間を決定するため、引き続きデータ依存かつ会合ごとのアプローチを取る」 | -------- |
10/15 | デーリー・サンフランシス連銀総裁 | 「われわれは警戒姿勢を維持し、意図的に行動する必要がある。経済を継続的に分析し、二大責務の両方を均衡させなければならない」、「年内にあと1回か2回の追加利下げが行われる可能性が高い」 | -------- |
10/14 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「政策を中立の姿勢に向けシ慎重なペースで進めていくことは可能だ」、「最終的には、政策の方向性は経済とインフレ、労働市場に関する実際のデータによって決まるだろう」、「労働市場については、急速な軟化は差し迫っていないように見受けられ心強い。インフレに関しては、ピークから顕著に鈍化したが、依然として目標をやや上回っている」 | -------- |
10/14 | ウォラー・FRB理事 | 「データを総合的に判断したところ、利下げペースに対して9月会合で必要とされた以上の慎重さを持って進めていくべきだとみている」、「政策を中立の姿勢に向け慎重なペースで進めていくことは可能だ」 | -------- |
10/10 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「データによってそれが適切と示されるのであれば、金利据え置きでも全く抵抗はない」、「つまり、私が想定した通りのデータとなる場合、年内残り2回の会合のうち1回では据え置きにオープンであることをすでに示している。われわれは辛抱強く、もう少し長く事態の展開を見守る力があると考える。今日の統計には、その見解を裏付ける要素がある」 | 市場はドル買いで反応。 |
10/9 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「先月に0.5ポイントの利下げが行われた後で、二つの責務に対するリスクの間で最善のバランスを取るためには、正常な政策スタンスへの回帰はより緩やかな道筋が適切になるとみられる」 | -------- |
10/3 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレは低下しており、目標に近づいている。失業率は上昇したが、雇用市場は基本的には望ましい状態にある」と発言し、「金利は今後12カ月間に大幅に下がる必要がある」 | -------- |
10/2 | 石破首相 | 「個人的には現在追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない。これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待している」 | ドル円144円台半ばから146円台半ばまで上昇。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書