今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円下値を切り下げ148円台に」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 連日同じような展開が続くドル円はこの日もNYで急落。韓国の尹大統領が「非常戒厳」を宣言したことで円が買われ一時は148円65銭まで売られたが、その後は反発。
  • ユーロドルは1.05近辺から半ばで推移。
  • 株式市場ではダウが続落したものの、ナスダックとS&P500は小幅に買われ、最高値を更新。
  • 債券は続落。長期金利は4.22%台に上昇。
  • 金と原油は買われる。
*****************************
10月雇用動態調査(JOLTS)求人件数 → 774.4万件
11月自動車販売台数 → 1650万台
*****************************
ドル/円 148.65 〜 149.69
ユーロ/ドル 1.0493 〜 1.0535
ユーロ/円 156.15 〜 157.35
NYダウ −76.47 → 44,705.53
GOLD +9.40 → 2,667.90ドル
WTI +1.84 → 69.94ドル
米10年国債 +0.035 → 4.225%

本日の注目イベント

  • 豪 豪7−9月期GDP
  • 中 11月財新サービス業PMI
  • 中 11月財新総合PMI
  • 独 独11月サービス業PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏10月卸売物価指数
  • 欧 ユーロ圏11月総合PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏11月サービス業PMI(改定値)
  • 米 11月ADP雇用者数
  • 米 11月ISM非製造業景況指数
  • 米 11月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値)
  • 米 11月S&Pグローバル総合PMI(改定値)
  • 米 10月耐久財受注
  • 米 10月製造業受注
  • 米 ベージュブック(地区連銀経済報告)
  • 米 パウエル・FRB議長、NYタイムズ主催の討論会で発言
  • 米 ムサレム・セントルイス連銀総裁講演

本日のコメント

東京市場でのドル買い意欲が強いのか、あるいはNY市場でのドル売りがしつこいのか、正直判断の出来ない展開が続いています。昨日も東京時間ではドルがジリ高の展開を辿り、150円24銭辺りまでドルが買われましたが、その後の欧州市場では149円台に押し戻され、NYでは韓国からのサプライズがあり、148円65銭までドルが売られました。10月11日以来となるドル安水準です。結局、先週からはドルの下値がジリジリと切り下がっていることになります。日銀の利上げ観測とFRBの利下げ観測があるとは言え、双方ともまだ政策金利は維持される可能性が残っており、そのリスクを考えると、このまま流れに沿ってドル売りで攻めていいのか不透明です。筆者の懇意にしている業界の記者から今朝は、日銀幹部が「利上げは急いでいない」との情報もオフィシャルではないものの入手しています。

韓国の尹大統領は3日、緊急の国民向けテレビ演説を行い「非常戒厳」を宣布しました。大統領の説明では、野党が弾劾の動きで政権を麻痺させようとしていると非難しつつ、「この決定は自由と憲法秩序を守るために下された」としています。また、大統領は「自由民主主義の基盤となるべき国会が自由民主主義体制を崩壊させる怪物になった」と指摘し、「韓国はすぐに崩壊してもおかしくないほどの風前の灯の運命に陥っている」と述べていました。ただ尹氏は4日未明には「非常戒厳」を解除すると発表しています。4日未明に韓国国会に出席した190人の国会議員全員が戒厳令の解除に賛成標を投じたことで、一応事態は落ち着いているようです。突然の戒厳令で驚きましたが、韓国での戒厳令といえば、1970年代の朴政権時代に岩波書店の月刊誌「世界」に掲載された「韓国からの通信」を思い起こしました。戒厳令下の緊迫した韓国社会の状況が伝えられ、隣の国の実情だけに、食い入るように読んだものです。

サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は3日FOXテレビとのインタビューで、「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない。12月になるか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を引き下げ続けなくてはならないことだ」と述べ、これまで発言のあったFOMCメンバーとおおむね一致している内容でした。また、FRBのクーグラー理事もデトロイトのイベントで講演を行い、「経済は最大限の雇用確保と物価安定という2大目標に向けて近年大きく前進し、現在は良好な状態にあると私は見ている。労働市場は堅調を維持し、インフレ率は、途中多少の起伏はあったものの、目標の2%に向けた持続可能な道筋をたどっているように見受けられる」と述べています。同時に、「FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない。インフレ鈍化の面で達成した前進を、台無しにしかねないリスクや負の供給ショックが到来しないか、私は注意深く監視していく。仕事はまだ終わっていない」と語っています。(ブルームバーグ)

本日はパウエル議長がNYタイムズ主催の討論会で発言することになっていますが、比較的好調な結果が発表されている指標が相い続ぎ、どのような認識を示すのか注目です。昨日発表された「10月の求人件数」でも、件数は市場予想よりも増加しており、一方でレイオフ件数は減少していました。

今朝もすでにNYの底値からは1円程ドルが反発しています。「買い疲れ」が出るのか、あるいは「売り疲れ」が先なのか、判断の難しい展開が続いています。

本日のドル円は148円50銭〜150円程度を予想します。

佐藤正和の書籍紹介

これだけ! FXチャート分析 三種の神器

これだけ! FXチャート分析 三種の神器
著者:佐藤正和
出版社:クロスメディア・パブリッシング

チャートがしっかり読めるようになるFX入門

チャートがしっかり読めるようになるFX入門
著者:佐藤正和
出版社:翔泳社

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
12/4 デーリー・SF連銀総裁 「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない。12月になるか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を引き下げ続けなくてはならないことだ」 --------
12/4 クーグラー・FRB理事 「経済は最大限の雇用確保と物価安定という2大目標に向けて近年大きく前進し、現在は良好な状態にあると私は見ている。労働市場は堅調を維持し、インフレ率は、途中多少の起伏はあったものの、目標の2%に向けた持続可能な道筋をたどっているように見受けられる」、「FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない。インフレ鈍化の面で達成した前進を、台無しにしかねないリスクや負の供給ショックが到来しないか、私は注意深く監視していく。仕事はまだ終わっていない。 --------
12/2 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」 --------
12/2 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」 --------
12/2 ウォラー・FRB理事 「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」 --------
11/29 植田・日銀総裁 「中央銀行の立場からは、物価・経済見通しに為替レートがどういう影響を与えるのかという点で考えるし、そこをポイントに政策運営をする」、「インフレ率が2%を超えはじめている時に一段の円安になれば、リスクが大きい。場合によっては対応しないといけなくなる」 ドル円は150円台前半から149円台半ばまで下落。
11/20 クック・FRB理事 (FRBが担う雇用とインフレの両責務について)、「リスクはおおむね均衡している。金利の方向性は下向きだが、引き下げの幅とタイミングは、これから出て来るデータと経済の見通し次第だ」 --------
11/20 コリンズ・ボストン連銀総裁 「最終的な行先は不確かだが、ある程度の追加緩和は必要だと考える。現行の政策は依然として少なくとも幾らかは景気に抑制的だから」 --------
11/20 ボウマン・FRB理事 「政策金利の引き下げに関して、インフレ目標をなお達成できていない点を認識しつつ、労働市場の動向を注意深く見守りながら、最終地点までどの程度離れているのか正確に判断できるよう慎重に進めたい」、「2023年初頭以降、インフレ抑制でかなりの進展が見られたが、ここ数カ月は進展が停滞しているようだ。また、物価安定目標を達成する前の段階で、政策金利が中立水準に達する、あるいは中立水準を割り込むリスクを排除すべきではない」 --------
11/18 植田・日銀総裁 「経済や物価の改善に併せて緩和度合いを少しずつ調整していくことが成長を支え、物価安定の目標を持続的・安定的に実現していくことに資する」、(そのタイミングについては)、「先行きの経済・物価・金融情勢次第」とし、「毎回の会合で利用可能なデータや情報などから、経済・物価の現状評価や見通しをアップデートしながら政策判断を行っていく」 利上げへの言及がなかったことでドル円は154円台半ばから154円台後半へと上昇。
11/14 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米金融当局は大きな進展を遂げたが、まだ勝利宣言をすることは出来ない」 --------
11/14 クーグラー・FRB理事 「インフレの進展を停滞させる、あるいは再び加速させるリスクが生じれば、政策金利の引き下げを一時停止するのが適切となるだろう。しかし、労働市場が突然減速する場合、政策金利の漸進的な引き下げを継続することが適切だろう」 --------
11/14 パウエル・FRB議長 「最近の経済は目覚ましく良好に推移している。慎重なペースで政策金利を引き下げる余地が生じている」、「経済は、利下げを急ぐ必要性についていかなるシグナルも発していない。労働市場の状況は概ね均衡し、インフレ期待もかなり安定する中で、インフレ率は時に起伏のある道をたどりながらも、2%の目標に向かって引き続き低下していくと予想している。また、経済データが許せば、利下げをゆっくり進めるのが賢明だろう」 ややタカ派的であったことからドル円は156円41銭まで上昇。
11/13 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレは正しい方向に進んでいると考える。その点について自信を持っているが、もう少し様子を見る必要がある。何らかの決定を下す前に、さらに1カ月もしくは6週間のデータを分析しなくてはならない」 --------
11/13 ローガン・ダラス連銀総裁 「終着点に達するまでFOMCはさらに追加利下げを必要とする可能性が高いだろう。しかし、利下げの回数やペースを見極めるのは難しい」 --------
11/13 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレを目標に回帰させ、最大限の雇用を支える上で、金融政策は好位置にある。政策金利を時間とともに中立水準へ漸進的に調整することを通じて、これらの達成を図っている。インフレが2%に向って低下し続けることが前提だ」、「追加利下げを検討する際には、今後入手するデータを思慮深く、かつ辛抱強く検証することが可能だ」 --------
11/12 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 (来月のFOMC会合での利下げ一時停止の可能性について尋ねられ)、「インフレ面で驚くようなことが起こらない限り、見通しが劇的に変わることはないだろう」、「それまでにインフレが予想外の上振れを見せれば、利下げを一時停止する可能性もある。一方で、12月までに労働市場が実際に過熱するとは考えにくく、それほど時間はない」 --------
11/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「購買力は高いが価格に敏感な消費者に、より生産的で価値の高い労働力が重なり、経済を良好な方向に導いた。米金融当局は経済が今後どう展開しても適切に対応できる状態にある」、(今後の経済シナリオについては)「1つは、米選挙を巡る不透明感が消え、企業が投資・雇用を再開した場合、金融当局としてインフレの上振れリスクを警戒するシナリオ。2つ目は購買力低下による利幅縮小に対応して企業が人員を削減、その結果として雇用リスクが上昇するシナリオだ」 --------
11/9 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「利下げ幅は、議会と新政権の目先の計画ではなく、生産性と経済成長にかかっている。成長が維持され、今後も構造的に生産性に高い経済成長が続くのであれば、恐らくそれほど大きな利下げには至らないだろう」と、「トランプ時期政権と新議会による政策はインフレを刺激し、最終的に利下げ幅の縮小につながるかどうかを判断するのは時期尚早」 --------
11/7 パウエル・FRB議長 「われわれは時間をかけてより中立的なスタンスへと移行しており、そうした中で今回の政策スタンスのさらなる調整は、経済と労働市場の強さを維持する一助となり、インフレ面でのさらなる進展を今後も可能にするだろう」 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。
11/7 FOMC声明文 「委員会は雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると考える。経済見通しは不確かで、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」、「今年に入って以降、労働市場の状況は概ね緩和してきた。失業率は上昇したが、依然として低い水準だ」、「委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことを強くコミットしている」 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和