今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「11月JOLTS、6カ月ぶりの高水準」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 東京市場で158円41銭前後まで買われたドル円はその後押し戻されたものの、NYでは朝方再び同水準をテスト。堅調な経済指標で米金利が上昇し、ドルをサポート。
  • ユーロドルは反落。1.0340まで売られ、元の鞘に戻る。
  • 株式市場では3指数が揃って反落。堅調な経済指標が続き米金利が上昇した。ナスダックは下げ幅を縮めたものの、375ポイント安の大幅下落。
  • 債券は続落。長期金利は上昇し4.7%に接近する場面も。
  • 金と原油は反発。
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11月貿易収支 → −78.2b
11月雇用動態調査(JOLTS)求人件数 → 8098千件
12月ISM非製造業景況指数 → 54.1
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ドル/円 157.55 〜 158.42
ユーロ/ドル 1.0340 〜 1.0404
ユーロ/円 163.22 〜 164.23
NYダウ −178.22 → 42,528.36
GOLD +18.00 → 2,665.40ドル
WTI +0.69 → 74.25ドル
米10年国債 +0.055 → 4.685%

本日の注目イベント

  • 豪 豪11月消費者物価指数
  • 独 独11月製造業新規受注
  • 独 独11月小売売上高
  • 欧 ユーロ圏12月消費者信頼感(確定値)
  • 欧 ユーロ圏12月景況感指数
  • 欧 ユーロ圏11月卸売物価指数
  • 米 12月ADP雇用者数
  • 米 FOMC議事録(12月17−18日分)
  • 米 11月消費者信用残高

本日のコメント

ドル円はおよそ半年ぶりに158円台半ばまで上昇しました。昨日の東京市場朝方にはドル買いが加速。日経平均株価が大幅高に推移したこともあり、一時は158円41銭前後までドル高が進みました。ただその後は利益確定の売りと、加藤財務相、赤沢経済再生担当相が円安をけん制する発言を行ったこともあり、夕方には157円台前半までドル売りが進みました。それでもその後のNYでは堅調な経済指標の発表を受け、「米景気は堅調で、金利は抑制的ではないという市場の見方を補強する」(ブルームバーグ)といった声もあり、米金利が上昇。ドル円も再び158円42銭近辺をテストしましたが、その水準は抜け切れていません。米債券市場では、7月より前のFRBによる利下げをもはや完全に折り込んではいない動きになっています。

11月の求人件数(JOLTS)は809万8000件と、市場予想を30万件以上も上回り、6カ月ぶりの高水準でした。また、12月のISM非製造業景況指数も「54.1」と、市場予想の「53.5」を上回っており、特にサービス業は活動の拡大ペースを加速させています。これらの指標を受け、債券が売られ金利は上昇。金利高から株式市場では売りが優勢となり、ドル円は朝方再び158円台半ばまで買われています。

今朝もトランプ氏に関わるニュースで満載です。

先にデンマークの自治領グリーンランドを購入したいと述べて、同国政府からは一蹴されたトランプ氏でしたが、冗談ではなく本気のようです。トランプ氏はフロリダ州の私邸マールアラーゴで開いた会見で、「デンマークが領有権を放棄するよう、同国に高い関税を課す可能性がある」と発言。さらにパナマ運河の支配権も得たいと述べ、「この2つについては、経済安全保障の観点からそれらが必要だ。自由な世界のためだ。自由な世界を守るためのものだ」と説明しています。またさらに発言はエスカレートし、カナダを米国の「51番目の州」にするよう「経済力」を行使すると話し、「われわれは基本的にはカナダを守っている。カナダの面倒を見るために、年間数千億ドルを費やしている。貿易赤字で損をしている」と述べています。さすがにここまで来ると、もはや常軌を逸した発言と言えます。またトランプ氏はNATOの防衛費についても言及しています。トランプ氏は「NATO加盟国の防衛費はGDPの5%にすべきだ」と主張し、「私が2%相当を負担させた」と、第一次政権で自身が圧力をかけたことにも触れています。「米国を含め、現時点でGDPの5%を防衛費に充てている加盟国はない」(ブルームバーグ)中での発言です。為替に関する発言はまだありませんが、これらの発言から分かるように、ここからの4年間、最大のリスクはトランプ氏自身ということになります。

アトランタ連銀のボスティック総裁が昨年12月に録音した内容が、同連銀から公開され、総裁は、インフレ抑制の進展に波があることや、物価安定目標を達成するために金利を高水準に維持し過ぎて失敗する可能性に言及していました。

米長期金利は昨年10月19日に「4.991%」と、「5%」に迫る水準まで上昇しましたが、昨日は「4.7%」に接近しています。「FRBの利下げがあっても今年は2回では」、といった見方も増えつつあるのが背景です。トランプ政権の政策が実施されれば、インフレがさらに加速し、FRBが政策金利を「引き上げ」に転じるのではないかとの観測も少数ですがあります。そうなると、常識的に考えればドル高はさらに進むと予想されますが、上述のように今後何があるのか分からない「不確実性」が大きく存在します。今月20日は大統領就任式です。間もなく、金融市場にとって「試練の4年間」が始まります。いや、すでに始まっているのかもしれません。

本日のドル円は157円30銭〜159円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
1/5 クーグラーFRB理事 「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」 --------
1/5 デーリー・SF連銀総裁 「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」 --------
12/20 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「インフレ抑制がさらに進展するまで金利を据え置くべきだと考えた」、「経済活動を緩やかに抑制する程度の高い水準で金利を『当面は』維持すべきだと考えた」 --------
12/20 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「私個人の予測としては、財政や移民といった政策に関する考えをいくらか織り込んだ。これらの要素は経済の先行きを考える上で重要だからだ」「不確実性が著しいことを、ただ強調しておきたい」 --------
12/20 三村:財務省財務官 「投機的な動きも含め、為替の動きを憂慮している。行き過ぎた動きには適切な対応を取りたいと思っている」 ドル円はやや円高方向に振れる。
12/18 FOMC声明文 「最近複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。今年の早い時期以降、労働市場の状況はおおむね緩和してきた。失業率は上昇したが低いままだ。インフレは委員会が目指す2%の目標に向けて進展を示したが、依然として幾分高い水準にある。金融政策の適切なスタンスを見極める上で、委員会は今後の情報が経済見通しに与える意義を引き続き監視する。委員会の目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、委員会は必要に応じて金融政策のスタンスを調整する用意がある」 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。
12/18 パウエル・FRB議長 「今回の行動により、われわれは政策金利をピーク時から1ポイント引き下げたことになり、現在の政策スタンスは顕著に景気抑制度合いが弱まった。」、「よって政策金利のさらなる調整を検討する上で、われわれはより慎重になることが可能だ」(ただ)、「政策は依然として有意に景気抑制的であり、委員会は利下げを継続する方向にある」 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。
12/6 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「米国の雇用情勢に関する一連のデータが不安定だったにもかかわらず、労働市場はおおむね安定しているようだ」、「私には持続可能な完全雇用のように感じられる」 --------
12/6 デーリー・SF連銀総裁 「労働市場は引き続き良い位置にある。雇用が拡大する中、失業者一人につき約1人分の空ポジションがある。つまり、バランスの取れた労働市場と言える」 --------
12/6 ボウマン・FRB理事 「失業率は上昇したものの、歴史的に見れば低い水準だ」、「現時点において労働市場よりもインフレの方がより大きな懸念だと引き続き見ている」、「インフレは高止まりしており、利下げは慎重かつ漸進的に進めたい」 --------
12/4 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「政策の選択性を維持することが重要だと思われ、現在の経済環境や新たに入手できる情報、見通しの変化を慎重に見極めるためには、利下げペースの減速や一時停止を検討する時期が近づいているのかもしれない」 --------
12/4 パウエル・FRB議長 (米経済の現状について)、「著しく良好だ」、(金融政策について)、「景気を刺激も抑制もしない中立水準に向けて金利を引き下げる上で、当局は慎重になれる余裕がある」、(次期財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏については)、「承認されれば、他の財務長官と同じような関係を築けると確信している」、「例えば、経済諮問委員会(CEA)とも、最も重要な財務省とも、同じような全般的な関係、かつ組織的な関係を築くことを十分に期待している」 株と債券が買われ、NYダウは初の4万5千ドル台に乗せる。
12/4 デーリー・SF連銀総裁 「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない。12月になるか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を引き下げ続けなくてはならないことだ」 --------
12/4 クーグラー・FRB理事 「経済は最大限の雇用確保と物価安定という2大目標に向けて近年大きく前進し、現在は良好な状態にあると私は見ている。労働市場は堅調を維持し、インフレ率は、途中多少の起伏はあったものの、目標の2%に向けた持続可能な道筋をたどっているように見受けられる」、「FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない。インフレ鈍化の面で達成した前進を、台無しにしかねないリスクや負の供給ショックが到来しないか、私は注意深く監視していく。仕事はまだ終わっていない。 --------
12/2 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」 --------
12/2 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」 --------
12/2 ウォラー・FRB理事 「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和