今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米12月のPPI予想を下回る」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は12月のPPI発表直後に売られ157円台半ばを付けたがその後反発し、総じて158円台で推移。
  • ユーロドルは反発し、1.0308まで買われる。
  • インフレ懸念も一服したが、株式市場ではナスダックが下落。ダウは続伸し221ドル高。
  • 債券は小幅に続落。長期金利は4.79%台に上昇。
  • 金は反発し、原油は反落。
******************
12月生産者物価指数 → 0.2%
******************
ドル/円 157.42 〜 158.19
ユーロ/ドル 1.0242 〜 1.0308
ユーロ/円 161.46 〜 162.85
NYダウ +221.16 → 42,518.28
GOLD +3.70 → 2,682.30ドル
WTI −1.32 → 77.50ドル
米10年国債 +0.015 → 4.792%

本日の注目イベント

  • 欧 ユーロ圏11月鉱工業生産
  • 英 英12月消費者物価指数
  • 米 12月消費者物価指数
  • 米 1月NY連銀製造業景況指数
  • 米 ベージュブック(地区連銀経済報告)
  • 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁講演
  • 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
  • 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁講演
  • 米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、座談会に参加
  • 米 決算発表 → ブラックロック、ウェルズファーゴ、JPモルガン、シティグループ、ゴールドマン

本日のコメント

昨日午前中、日銀の永見野副総裁が横浜市で講演を行いました。副総裁は、「政策運営にあたってはタイミングの判断が難しく、重要だ」と述べ、「23、24日の会合では、経済・物価の見通しを基に、利上げを行うかどうかを議論し、判断したい」と話すにとどまりました。利上げのタイミングについての言及がなかったことで、157円台半ばで推移していたドル円は一時158円台に乗せる場面もありましたが、直ぐに157円台半ばまで押し戻されていました。

NYではトランプ次期政権が、段階的な関税引き上げを検討しているとの報道が伝わり、さらに12月の生産者物価指数(PPI)が市場予想を下回り、インフレ懸念がやや後退したことで157円42銭前後まで売られました。ただ、こちらも徐々にドルが買い戻され158円台前半まで上昇するなど、神経質な動きを見せながらもレンジ内で推移しています。来週にはトランプ氏の大統領就任式があり、さらに日銀決定会合も控えています。また、ほぼ政策変更はなく「無風」と見られてはいますが、FOMC会合も28−29日にあります。この辺りのイベントリスクと不透明さがドル円の方向性をあいまいにしています。米長期金利は昨日も小幅ですが、上昇しました。金利水準からすればもう少しドルが買われてもおかしくはない印象ですが、上記背景に加え、介入警戒感もあるようです。

今朝の経済紙では、山崎元財務官とのインタビュー記事が掲載されており、山崎氏は「日米が協調する姿勢を示せば、実際に介入に踏み切らなくとも円安は和らぐ」と述べています。ただ、現在の財務長官であるイエレン氏は何度も「介入は希であるべきだ」との考えを示しており、果たして米財務省から日本単独の介入に対する「合意」が得られるのか、不明です。また同紙は、介入のタイミングについても独自の分析を行った記事を掲載しています。それによると、これまでの介入は、投機筋の円売りポジションが大きく積み上がった時に実施されており、投機筋の円売りコストなども分析し、介入の際には、一気に損が出る水準まで円買いを進める方針のようだと伝えています。もっとも、うがった見方をすれば両記事とも、「書かされた」可能性もないとは言えません。金融当局は、これまでもマスコミをうまく利用しており、当局寄りの記事は、見方を変えれば「介入」の一種とも言えます。

トランプ次期大統領は14日、外国からの輸入品に課す関税を徴収する「外国歳入庁」の創設を表明しました。「外国歳入庁」については、昨年の大統領選の際にも述べていましたが、改めて実行に移すようです。トランプ氏は、「2025年1月20日が外国歳入庁の創設日だ」と投稿しており、大統領就任式の当日に発足させる考えのようです。これまでも「『関税』は最も美しい言葉だ」と述べており、トランプ氏にとって関税の引き上げは最優先課題であり、最も関心のある案件のようです。また、イスラエルとハマスとの戦争についても言及しており、「われわれは合意に極めて近づいている。すでに握手も交わされ、合意をまとめているところだと理解している。おそらく今週末までに」と述べています。前日、サリバン大統領補佐官がブルームバーグとのインタビューで述べていたことと整合します。本日は米大手銀行の決算発表が集中しています。バンク・オブ・アメリカなどが好決算を発表するなどと予想されていますが、これに株式市場が反応すれば、「リスクオン」の流れが強まり、円が売られる場面もあるかもしれません。

本日のドル円は157円30円〜158円80銭程度を予想します。

佐藤正和の書籍紹介

これだけ! FXチャート分析 三種の神器

これだけ! FXチャート分析 三種の神器
著者:佐藤正和
出版社:クロスメディア・パブリッシング

チャートがしっかり読めるようになるFX入門

チャートがしっかり読めるようになるFX入門
著者:佐藤正和
出版社:翔泳社

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
1/9 ハーカー総裁・フィラデルフィア連銀総裁 「今は休止して、状況の推移を見守るのが適切」、「しばしの現状維持は可能だ。恐らく長期ではない。データがどうなるのか、見極める必要がある」 --------
1/9 ボウマンFRB理事 「インフレ率は2023年に大幅に鈍化したが、24年は進展が停滞したようだ。コアインフレ率は目標である2%の水準をなお不快なほど上回っている。政策については慎重かつ緩やかなアプローチが望ましい」 --------
1/9 コリンズ・ボストン連銀総裁 「時間の経過に伴い、一段の緩和が適切となるだろう。その規模は9月に考えていたよりもいくらか小幅となる可能性がある。じっくりと辛抱強くデータを総合的に評価する。つまり、辛抱強く分析的に見ていくことが、今年の政策を考える上で適切な可能性が高いだろう」 --------
1/5 クーグラーFRB理事 「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」 --------
1/5 デーリー・SF連銀総裁 「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」 --------
12/20 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「インフレ抑制がさらに進展するまで金利を据え置くべきだと考えた」、「経済活動を緩やかに抑制する程度の高い水準で金利を『当面は』維持すべきだと考えた」 --------
12/20 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「私個人の予測としては、財政や移民といった政策に関する考えをいくらか織り込んだ。これらの要素は経済の先行きを考える上で重要だからだ」「不確実性が著しいことを、ただ強調しておきたい」 --------
12/20 三村:財務省財務官 「投機的な動きも含め、為替の動きを憂慮している。行き過ぎた動きには適切な対応を取りたいと思っている」 ドル円はやや円高方向に振れる。
12/18 FOMC声明文 「最近複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。今年の早い時期以降、労働市場の状況はおおむね緩和してきた。失業率は上昇したが低いままだ。インフレは委員会が目指す2%の目標に向けて進展を示したが、依然として幾分高い水準にある。金融政策の適切なスタンスを見極める上で、委員会は今後の情報が経済見通しに与える意義を引き続き監視する。委員会の目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、委員会は必要に応じて金融政策のスタンスを調整する用意がある」 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。
12/18 パウエル・FRB議長 「今回の行動により、われわれは政策金利をピーク時から1ポイント引き下げたことになり、現在の政策スタンスは顕著に景気抑制度合いが弱まった。」、「よって政策金利のさらなる調整を検討する上で、われわれはより慎重になることが可能だ」(ただ)、「政策は依然として有意に景気抑制的であり、委員会は利下げを継続する方向にある」 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。
12/6 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「米国の雇用情勢に関する一連のデータが不安定だったにもかかわらず、労働市場はおおむね安定しているようだ」、「私には持続可能な完全雇用のように感じられる」 --------
12/6 デーリー・SF連銀総裁 「労働市場は引き続き良い位置にある。雇用が拡大する中、失業者一人につき約1人分の空ポジションがある。つまり、バランスの取れた労働市場と言える」 --------
12/6 ボウマン・FRB理事 「失業率は上昇したものの、歴史的に見れば低い水準だ」、「現時点において労働市場よりもインフレの方がより大きな懸念だと引き続き見ている」、「インフレは高止まりしており、利下げは慎重かつ漸進的に進めたい」 --------
12/4 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「政策の選択性を維持することが重要だと思われ、現在の経済環境や新たに入手できる情報、見通しの変化を慎重に見極めるためには、利下げペースの減速や一時停止を検討する時期が近づいているのかもしれない」 --------
12/4 パウエル・FRB議長 (米経済の現状について)、「著しく良好だ」、(金融政策について)、「景気を刺激も抑制もしない中立水準に向けて金利を引き下げる上で、当局は慎重になれる余裕がある」、(次期財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏については)、「承認されれば、他の財務長官と同じような関係を築けると確信している」、「例えば、経済諮問委員会(CEA)とも、最も重要な財務省とも、同じような全般的な関係、かつ組織的な関係を築くことを十分に期待している」 株と債券が買われ、NYダウは初の4万5千ドル台に乗せる。
12/4 デーリー・SF連銀総裁 「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない。12月になるか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を引き下げ続けなくてはならないことだ」 --------
12/4 クーグラー・FRB理事 「経済は最大限の雇用確保と物価安定という2大目標に向けて近年大きく前進し、現在は良好な状態にあると私は見ている。労働市場は堅調を維持し、インフレ率は、途中多少の起伏はあったものの、目標の2%に向けた持続可能な道筋をたどっているように見受けられる」、「FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない。インフレ鈍化の面で達成した前進を、台無しにしかねないリスクや負の供給ショックが到来しないか、私は注意深く監視していく。仕事はまだ終わっていない。 --------
12/2 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」 --------
12/2 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」 --------
12/2 ウォラー・FRB理事 「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」 --------
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和