「トランプ政権、中国への関税引き上げを発動」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 12月の求人件数(JOLTS)が予想外に少なく、米金利が低下したことでドル円は下落。154円18銭まで売られ、154円〜155円台でのもみ合いが続く。
- ユーロドルは小幅に反発し、1.03台前半から後半で推移。
- 株式市場では3指数が上昇。ハイテク企業の好決算が市場のセンチメントを明るくし、ナスダック指数は262ポイント上昇。
- 債券は反発。長期金利は4.51%台に低下。
- 金は買われ、連日で最高値を更新。原油は反落。
12月雇用動態調査(JOLTS)求人件数 → 760万件
12月耐久財受注 → −2.2%
12月製造業受注 → −0.9%
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ドル/円 | 154.18 〜 155.37 |
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ユーロ/ドル | 1.0324 〜 1.0387 |
ユーロ/円 | 160.00 〜 160.70 |
NYダウ | +134.13 → 44,556.04 |
GOLD | +18.70 → 2,875.80ドル |
WTI | −0.46 → 72.70ドル |
米10年国債 | −0.044 → 4.511% |
本日の注目イベント
- 中 1月財新サービス業PMI
- 中 1月財新総合PMI
- 独 独1月サービス業PMI(改定値)
- 欧 ユーロ圏12月卸売物価指数
- 欧 ユーロ圏1月総合PMI(改定値)
- 欧 ユーロ圏1月サービス業PMI(改定値)
- 米 1月ADP雇用者数
- 米 12月貿易収支
- 米 1月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値)
- 米 1月S&Pグローバル総合PMI(改定値)
- 米 1月ISM非製造業景況指数
- 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁講演
- 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁、討論会に参加
- 米 ボウマン・FRB理事講演
- 米 ジェファーソン・FRB副議長講演
- 米 決算発表 → ウーバー、アフラック、クアルコム、マイクロストラテジー
本日のコメント
「トランプ関税」の第1弾を巡り、金融市場はその内容の温度差で、大きく揺れ動いています。関税率が思ったほど過激でなければ、株と債券が買われ、ドル円が売られる展開です。一方関税政策を強める姿勢を見せるとその逆の動きになるケースが見られます。加えて、株式市場では値動きが大きく、下落幅が拡大するとリスク回避の円買いが活発となり、ドル円は売られるため、この辺りのバランスが見極めにくい状況が続いています。ブルームバーグは、これらの一連の行動に対して「トランプ大統領が関税の適用を少なくとも現時点では先延ばしにしていることは、トランプ氏の貿易に対する苛烈な言動が『こけおどし』に過ぎないことの証明ではないかという疑念を強める」と論じていました。そのトランプ氏は中国に対して予定通り関税を発動しました。トランプ氏は、カナダとメキシコに対する関税の発動を土壇場で1カ月延期しましたが、中国に対しては強硬な姿勢を維持しています。これに対して中国は即座に報復措置を発表。2月10日から米国からの石炭とLNGに15%、石油と農業機器に10%の関税を課すことを発表しています。中国はこのほかにも、米グーグルに対する調査やタングステン関連材料で輸出規制を導入する措置なども打ち出しています。中国は世界のタングステン生産量の約80%を占めており、タングステンは高温に対する緩衝材として機能することから、防衛産業では徹甲弾に最も多く使用されているそうです。この報復措置は、「トランプ関税」に備えて周到に準備されていたものと思われ、「米中の新たな貿易戦争の幕が切って落とされた」(ブルームバーグ)と見る向きもあるようです。ただ、両首脳は電話会談の可能性も残しており、2月10日までに会談が実現するのかどうかが焦点になります。
サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は4日、カリフォルニア州で開催されたイベントでの討論会で、「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」と述べました。また、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」とし、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」との考えを示しました。トランプ政権の関税策が実行に移される中、FRBのメンバーも徐々にその影響に対して自身の考えを示し始めていますがおおむね、「不確実性がある。いましばらく状況を見極めたい」とする意見となっています。パウエル議長は2月11日(火)、米上院銀行委員会の公聴会で半期に一度の金融政策報告書について証言を行います。この際に、トランプ政権の政策による影響についても言及があるかもしれません。
ドル円は依然として日足チャートでの「雲」の中でもみ合っている状況です。ローソク足そのものは右肩下がりの形状を見せてはいますが、一方で日々の安値は切り上げています。足の動きは、ドル高トレンドは崩れてはいない状況ですが、ドルの下値をテストしており、153円76銭辺りにある「雲の下限」を下抜けするのかどうかが試されているといったところです。本日のドル円は153円30銭〜155円30銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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2/4 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 | -------- |
2/3 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 | -------- |
2/3 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 | -------- |
1/30 | ラガルド・ECB総裁 | 「向かっている方向は明らかで、今回の決定は全会一致だった。確固としたフォワードガイダンスを得たいと考えている向きには、そのようなものは非現実的だと言えよう。現時点では重大な不確実性があるからだ。不確実性は恐らく強まっている」 | -------- |
1/30 | ECB声明文 | 「ディスインフレプロセスは極めて順調に進行している。基調的なインフレに関するほとんどの指標は、インフレ率が持続的に目標付近で安定することを示唆している」と2%物価の目標達成に自信を示ししつつ、「現在の金融政策は『依然として景気抑制的』だ」 | -------- |
1/29 | パウエル・FRB議長 | 「金融政策スタンスが景気を抑制する度合いは、以前より大幅に弱まっており、経済は強さを維持していることから、政策スタンスの調整を急ぐ必要はない」、「労働市場が急速に減速したり、インフレが再燃し場合には政策金利を調整する用意がある」、(トランプ政権の政策の行方については)「分からない」 | ほとんど影響はなし。 |
1/29 | FOMC声明文 | 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率はここ数カ月、低水準で推移しており、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 | ほとんど影響はなし。 |
1/23 | トランプ大統領 | (ダボス会議でのオンライン参加で)「金利の即時引き下げを要求する」、(政策金利に関して、FRB議長の判断に疑問を呈した上で)「議長と適切な時期に話すつもりだ。彼らよりも私の方が金利に関してはるかに詳しく、その判断に当たる主な責任者よりも私の方が熟知しているのは確かだ。私が反対の意見であれば、それを伝える」、(金融当局が自分の主張に耳を傾けると考えるのかとの質問に)「イエス」 | ドル円がやや売られ、原油価格は下落。 |
1/16 | ウォラー・FRB理事 | 「昨日発表されたインフレデータは非常に良好な内容だった。こうした数字が続けば、今年前半に利下げが実施され得ると考えるのが妥当だろう」、「このディスインフレ傾向は続き、考えられているより少し早く2%に近づくと、私は楽観している」、「経済活動を促進も抑制もしない中立金利に関する当局者の予想中央値は、今後発表されるデータ次第で年内3−4回の利下げが可能なことを示唆している」、「データが良好でなければ2回に戻ることになる。インフレが根強く続けば1回となる可能性さえある」 | 債券が買われ金利が低下。ドル円は156円台前半から155円05銭まで下落。 |
1/15 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | NY連銀のウイリアムズ総裁は、「ディスインフレのプロセスは続いている。しかし、当局の2%目標にはまだ達していない。この目標を持続的な形で達成出来るまでにはさらに時間がかかる」 | -------- |
1/15 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「目標の2%に戻すための最終段階を成功裏に終えるためには、当局は景気抑制的であるべきだとなお考えている」 | -------- |
1/15 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレ面での改善傾向が続いている。2025年は成長を続けながらソフトランディングが達成できると、引き続き楽観している」 | -------- |
1/9 | ハーカー総裁・フィラデルフィア連銀総裁 | 「今は休止して、状況の推移を見守るのが適切」、「しばしの現状維持は可能だ。恐らく長期ではない。データがどうなるのか、見極める必要がある」 | -------- |
1/9 | ボウマンFRB理事 | 「インフレ率は2023年に大幅に鈍化したが、24年は進展が停滞したようだ。コアインフレ率は目標である2%の水準をなお不快なほど上回っている。政策については慎重かつ緩やかなアプローチが望ましい」 | -------- |
1/9 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「時間の経過に伴い、一段の緩和が適切となるだろう。その規模は9月に考えていたよりもいくらか小幅となる可能性がある。じっくりと辛抱強くデータを総合的に評価する。つまり、辛抱強く分析的に見ていくことが、今年の政策を考える上で適切な可能性が高いだろう」 | -------- |
1/5 | クーグラーFRB理事 | 「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」 | -------- |
1/5 | デーリー・SF連銀総裁 | 「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書