「ドル円、およそ3週間ぶりに151円台に」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 前日発表された自動車への関税の影響から株と債券が売られ、金利上昇に呼応するかのようにドル円は上昇。NYでは一時151円16銭まで買われ、3月3日以来のドル高に。
- ユーロドルは小幅に反発。ユーロ円も再び163円台に。
- 株式市場は3指数が続落。GMなど自動車株の下げがきつく、相場の下げをけん引。
- 債券は小幅ながら続落。長期金利は4.36%台に。
- 金は反発し、一時は3100ドル台を付ける。原油も続伸。
新規失業保険申請件数 → 22.4万件
2月中古住宅販売成約件数 → 2.0%
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ドル/円 | 150.58 〜 151.16 |
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ユーロ/ドル | 1.0776 〜 1.0820 |
ユーロ/円 | 162.37 〜 163.36 |
NYダウ | −155.09 → 42,299.70 |
GOLD | +38.60 → 3,090.90ドル |
WTI | +0.27 → 69.92ドル |
米10年国債 | +0.008 → 4.360% |
本日の注目イベント
- 日 3月東京都区部消費者物価指数
- 独 独3月雇用統計
- 欧 ユーロ圏3月消費者信頼感(確定値)
- 欧 ユーロ圏3月景況感指数
- 英 英10−12月期GDP
- 米 2月個人所得
- 米 2月個人支出
- 米 2月PCEデフレータ(前月比)
- 米 2月PCEデフレータ(前年比)
- 米 2月PCEコアデフレータ(前月比)
- 米 2月PCEコアデフレータ(前年比)
- 米 3月ミシガン大学消費者マインド(確定値)
- 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁、パネル討論会で司会
本日のコメント
トランプ大統領が自動車への関税を4月2日に発動すると発表したことで、「貿易戦争」が現実味をおび、世界の金融市場が混乱しています。とりわけ株式市場での自動車株の下げがきつく、昨日の東京株式市場でもトヨタなどの自動車株は軒並み大きく売られました。NY株式市場でもGMやフォードなどが大きく下げています。イタリアの高級車フェラーリは今回の関税引き上げに対応するため、一部のモデルの価格を最大10%引き上げることを発表しています。米国で非常に人気の高い日本の自動車メーカーは今のところ事態を見守っているところですが、日本車の優位性を武器に値上げを行う可能性もあります。こうなると結局、「トランプ関税」の影響は米国民自身も受けることになります。
ボストン連銀のコリンズ総裁はボストンで講演を行い、「関税が短期的にインフレ率を押し上げるのは『不可避』と見受けられる」と、これまでのFOMCメンバーの発言よりも、より関税とインフレとの関係に踏み込んだ発言を行いました。その上でコリンズ氏は「金利据え置きの長期化が適切になる公算が大きい」と話しています。また、「一段と広範にわたる関税賦課やそれに対する報復措置が講じられる状況では特に、インフレ期待が重要になる」と続けていました。これまで多くのメンバーが「不確実性」という言葉を使い、その影響について言及してきましたが、今回コリンズ総裁は「インフレは不可避」といった表現をしています。ドル円がおよそ3週間ぶりに151円台に乗せたことと無関係ではありません。
IMFは27日、トランプ大統領が強硬な関税政策を推し進める中、今年は米経済成長ペースが減速すると予想していることを発表しました。IMFの報道官は、「大規模な政策転換が発表されており、最新のデータでは経済活動が2024年の非常に強いペースから減速していることが示唆されている。ただし、リセッションはわれわれの基本シナリオには含まれていない」と述べています。この日発表された米国の昨年10−12月期(第4四半期)GDP確定値は、改定値から上方修正され「2.4%」でしたが、今年については多くのエコノミストが景気の減速を予想しています。今後は4月2日に発表される「相互関税」の内容が注目されますが、それを受けて各国がどのような「報復措置」に出るのかにも注目が集まります。
ドル円は151円台に乗せたことで、この欄でも何度か触れている1月10日に付けた158円88銭近辺から描ける「レジスタンス・ライン」を明確に上抜けしました。一目均衡表の雲の下限(先行スパン1)は今朝の時点で152円35銭に位置していますから、先ずはこの近辺では上昇が抑えられそうです。もっとも、その前に直近の高値が151円30−40銭辺りにあることから、目先はそのレベルが重要になります。投機筋の「ショート・スクウィーズ」が大量に出れば、上記「雲の下限」辺りまでは続伸するかもしれません。
本日のドル円は149円80銭〜151円80銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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3/27 | IMF | 「大規模な政策転換が発表されており、最新のデータでは経済活動が2024年の非常に強いペースから減速していることが示唆されている。ただし、リセッションはわれわれの基本シナリオには含まれていない」 | -------- |
3/27 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「関税が短期的にインフレ率を押し上げるのは『不可避』と見受けられる」、「金利据え置きの長期化が適切になる公算が大きい」、「一段と広範にわたる関税賦課やそれに対する報復措置が講じられる状況では特に、インフレ期待が重要になる」 | -------- |
3/26 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「向こう1,2年でインフレが低下して労働市場が引き続き堅調なら、金利をさらに引き下げることができるはずだ。住宅ローン金利に一定の効果があるだろう」、「このところの信頼感低下は関税を巡る不確実性を反映している面が大きい」 | -------- |
3/26 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「関税による影響が一時的なものにとどまるかどうかは不透明だ。その二次的影響によって金融当局が金利をより長期にわたって据え置く可能性がある」 | -------- |
3/25 | クーグラー・FRB理事 | 「ここ数カ月に財のインフレが加速傾向にあるほか、」ミシガン大学の調査データで短期・長期両方のインフレ期待が高まっている。トランプ大統領は貿易相手国に対して新たな関税を導入しているほか、さらなる関税を示唆しており、経済を巡る不確実性は強まっている」、「政策金利をしばらくの間、据え置くことを支持する」 | -------- |
3/24 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「1回にした理由は主に、インフレが非常に不安定になり、2%目標に向かって劇的かつ明確に動くことはないだろうと考えているからだ。その目標達成が遅れているため、政策を中立水準に戻す適切な道筋も遅れざるを得ないと考えている」 | -------- |
3/19 | パウエル・FRB議長 | (関税性政策によるインフレについて)、「米金融当局が何もせず急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」、「一時的なものになるかどうか、当局として実際のところ分からない」 | -------- |
3/19 | トランプ大統領 | 「米国の関税が経済に移行(緩和!)し始めたら、FRBは金利を引き下げた方がずっといい」 | ドル円150円台前半から149円割れまで下落。 |
3/7 | パウエル・FRB議長 | 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 | 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。 |
3/3 | トランプ大統領 | 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 | ドル円は149円台半ばから下落。 |
2/25 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「インフレ率が当局目標の2%に戻りつつあるとの自信を深めるまで、やや景気抑制的な姿勢を維持することが理にかなっている。いんふれとの闘いは長期化していると認識しているが、われわれが断固たる姿勢を維持することが極めて重要だ」 | -------- |
2/20 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「インフレ率が2%超にとどまる、ないし上昇するリスクが上方向に傾いているようだ。インフレが停滞するリスクは、労働市場が顕著に軟化するリスクよりも大きい」とし、その上で、「インフレ率が当局目標の2%へと順調に低下してきたことが明確になるまで、やや景気抑制的な金融政策を維持すべきだ」 | -------- |
2/18 | ウォラー・FRB理事 | 「昨年の場合と同様に、冬季の進展休止が一時的なものならば、一段の緩和策が適切になるだろう。しかし、その時期が明確になるまでは金利据え置きは望ましい」 | ドル円は151円台から152円台に乗せる。 |
2/18 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | インフレ抑制の進展について落胆する理由はないと私は考えている。単に望まれているより長い時間がかかるだけだ」、(トランプ政権の政策の影響について)「時間をかけて判断すべきだ」 | -------- |
2/17 | ハーカー・フィラデルフィア連総裁 | 「具体的な時間的見通しは約束しないが、インフレは引き続き鈍化傾向にあり、金利は長期的に引き下げられると楽観している | -------- |
2/17 | ボーマン・FRB理事 | 「フェデラルファンド(FF)金利をより中立的な政策スタンスに近づけるプロセスは、新たな段階に入った。慎重で段階的なアプローチが好ましいと私が考えるのは、いくつか理由がある。現行政策のスタンスを考慮すると。1年前からの株高による金融環境の緩みが、ディスインフレの進行を遅らせたかもしれないと考えている」 | -------- |
2/12 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 | -------- |
2/12 | パウエル・FRB議長 | 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 | -------- |
2/11 | サマーズ・元財務長官 | 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 | -------- |
2/11 | パウエル・FRB議長 | 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) | -------- |
2/7 | クーグラー・FRB理事 | 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 | -------- |
2/5 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 | -------- |
2/5 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 | -------- |
2/4 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 | -------- |
2/3 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 | -------- |
2/3 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書