今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「トランプ関税、スマホなどは適用除外?」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は欧州市場の朝方142円05銭近辺まで売られる。NYでも142円台を示現したが、株価と米金利の上昇で144円20銭まで反発。
  • ユーロドルは続伸し、1.1411まで上昇したが、その後反落。
  • 株式市場では乱高下の中、3指数は上昇して引ける。ダウは619ドル買われ、4万ドルを回復。
  • 債券は続落し、長期金利は4.49%台に上昇。
  • 金は大幅に3日続伸し、初の3200ドル台に。原油も反発。
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3月生産者物価指数 → −0.4
4月ミシガン大学消費者マインド(速報値) → 50.8
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ドル/円 142.23 〜 144.20
ユーロ/ドル 1.1277 〜 1.1411
ユーロ/円 161.50 〜 163.03
NYダウ +619.05 → 40,212.71
GOLD +67.10 → 3,244.60ドル
WTI +1.43 → 61.50ドル
米10年国債 +0.065 → 4.490%

本日の注目イベント

  • 日 2月鉱工業生産(確定値)
  • 中 中国 3月貿易収支
  • 米 NY連銀、3月消費者インフレ期待
  • 米 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁講演
  • 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会に参加
  • 米 ウォラー・FRB理事講演
  • 米 決算発表 → ゴールドマン

本日のコメント

引き続き「トランプ関税」の動向をにらみながら、為替も株も債券も大きく上下する展開が続いています。特に、米中貿易関税ではお互いに一歩も譲らず、もはや「チキンレース」というよりも「消耗戦」の様相になってきました。中国は、米国が中国製品に対して関税を「145%」に引き上げたことに対抗し、米国からの輸入品に「125%」の関税をかけると発表しました。習近平主席は、トランプ政権が関税を引き上げたことについて、「いかなる不当な抑圧も恐れない」と述べ、この日会談したスペインのサンチェ首相に「一方的ないじめ行為には共に抵抗すべきだ」と話していました。

トランプ政権は、「相互関税」の対象からスマートフォンなどを除外すると発表し、再び「朝令暮改」の動きを見せています。アップルのiPhoneなどの大幅な値上がりが、米消費者にとって大きな負担になることを回避する措置であると見られますが、ラトニック商務長官はABCの番組で、「スマホやコンピューター、その他電子機器などの製品は全て半導体として分類され、生産を確実に米国へと戻させるために特別な関税をかけることになる。半導体関税は、恐らく1、2カ月後に発動されるだろう」と、スマートフォンなどの「相互関税」からの除外は一時的なものだとの見方を示しています。中国はスマートフォンなどが除外されることについて「米国が『報復関税』という一方的な誤った行為を正すための小さな一歩だ」と歓迎していましたが、情報はやや錯綜しているかもしれません。ただ、トランプ氏は免税措置については、「14日にその答えを教えよう。14日にかなり詳しく説明する。われわれは一国家として多くの資金を取り込む」と発言しています。今夜のその内容が気になるところです。

今週訪米し、17日にベッセント財務長官と日本に対する関税措置について協議する予定の赤沢経済財政・再生担当大臣は先週末、ベッセント財務長官が非関税障壁として掲げている為替に関して交渉するかを問われ、「相手方が持ち出すことについて、最初から頭ごなしにシャットアウトすることは出来ない」と答え、その上で、「そういう話題が米国側から出れば、もちろんそれについて議論に応じることになる」と話していました。先週金曜日には、この発言がドル売りを誘いドル円が142円台まで急落するきっかけになりました。ドル円はその流れから、欧州市場の朝方には142円割れを試すような動きを見せ、約半年ぶりの円高水準を付けています。厳しい交渉が予想されますが、日本としても交渉に際して「てぶら」という訳には行かず、何らかの提案を示すことで25%の関税回避をはかる可能性もあります。その「土産」に為替問題が入るかもしれません。前財務長官のイエレン氏は「為替は市場が決めるもの」というスタンスを堅持していましたが、ベッセント財務長官のスタンスはいまいち読み切れません。いずにしても、今週が「ヤマ場」になりそうな気配です。

4月の第1週まではリスク回避の流れから、株価が大きく売られ安全資産の債券が大きく買われました。債券が買われると金利が低下することで、「安全通貨の円」という側面だけではなく、日米金利差縮小という観点からも円が買われました。トランプ関税の発動を受けた反応としては、整合的な動きだったと言えます。ただ、先週の動きはやや異なりました。株は売られ、円が買われ円高に振れましたが、安全資産の債券も大きく売られ、長期金利が一時4.5%台まで上昇する場面がありました。株と、債券と、ドルが売られ「トリプル安」の様相を見せましたが、言い換えれば「米国売り」ということになります。その資金が「金」に流れ込んだという見方もあり、その後ろには中国が居るのでは、といった説もあります。米中貿易戦争への道に進んでいることを考えれば、その可能性も否定できません。一方、世界最大の米国債保有国である日本は、昨日のNHK「日曜討論」に出演した小野寺政調会長は「同盟国なので、米国債を意図的にどうするかということは政府として考えることはない」と、きっぱり否定していました。非常に危険な言い方になり、敢えて批判を恐れずに言えば、その保有している米国債を盾に米国に25%の関税撤廃を迫ったらどうなるのでしょうか?

本日のドル円は142円〜144円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
4/4 クルーズ・米上院議員 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 --------
4/4 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 --------
4/4 ベッセント・米財務長官 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 --------
4/3 ジェファーソン・FRB副議長 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 --------
4/3 クック・FRB理事 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 --------
4/2 トランプ・米大統領 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 --------
4/1 フォンデアライエン・欧州委員長 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 --------
3/31 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレは落ち着いた水準へと実際に鈍化していることから、そうした確信は得られる可能性が高い」、(トランプ氏の関税政策について)、「政策判断への影響は、当局者らの見通しがより明確になるには時間がかかる」 --------
3/31 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「FOMC参加者の間では、インフレ見通しに上振れリスクがあるとの極めて幅広い見方が示された。それは私の個人的見解とも完全に一致している」、「今後実施される関税などの政策に大きく左右され得る上振れリスクがあることは確かだ。関税が経済に与える影響はまだ明らかではない。最新のデータを注視していく」 --------
3/27 IMF 「大規模な政策転換が発表されており、最新のデータでは経済活動が2024年の非常に強いペースから減速していることが示唆されている。ただし、リセッションはわれわれの基本シナリオには含まれていない」 --------
3/27 コリンズ・ボストン連銀総裁 「関税が短期的にインフレ率を押し上げるのは『不可避』と見受けられる」、「金利据え置きの長期化が適切になる公算が大きい」、「一段と広範にわたる関税賦課やそれに対する報復措置が講じられる状況では特に、インフレ期待が重要になる」 --------
3/26 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「向こう1,2年でインフレが低下して労働市場が引き続き堅調なら、金利をさらに引き下げることができるはずだ。住宅ローン金利に一定の効果があるだろう」、「このところの信頼感低下は関税を巡る不確実性を反映している面が大きい」 --------
3/26 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「関税による影響が一時的なものにとどまるかどうかは不透明だ。その二次的影響によって金融当局が金利をより長期にわたって据え置く可能性がある」 --------
3/25 クーグラー・FRB理事 「ここ数カ月に財のインフレが加速傾向にあるほか、」ミシガン大学の調査データで短期・長期両方のインフレ期待が高まっている。トランプ大統領は貿易相手国に対して新たな関税を導入しているほか、さらなる関税を示唆しており、経済を巡る不確実性は強まっている」、「政策金利をしばらくの間、据え置くことを支持する」 --------
3/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「1回にした理由は主に、インフレが非常に不安定になり、2%目標に向かって劇的かつ明確に動くことはないだろうと考えているからだ。その目標達成が遅れているため、政策を中立水準に戻す適切な道筋も遅れざるを得ないと考えている」 --------
3/19 パウエル・FRB議長 (関税性政策によるインフレについて)、「米金融当局が何もせず急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」、「一時的なものになるかどうか、当局として実際のところ分からない」 --------
3/19 トランプ大統領 「米国の関税が経済に移行(緩和!)し始めたら、FRBは金利を引き下げた方がずっといい」 ドル円150円台前半から149円割れまで下落。
3/7 パウエル・FRB議長 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。
3/3 トランプ大統領 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 ドル円は149円台半ばから下落。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和