「米イランへの関与強めるか?」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は再び買われ145円台に乗せる。米国がイランへの軍事的関与を強めるとの観測がドルを押し上げ、145円38銭まで上昇。
- ユーロドルは続落。ドル高が進み、1.14台後半まで下落。
- 株式市場ではリスク回避の流れが強まり3指数は揃って反落。
- 債券は買われ、長期金利は4.38%台へと低下。
- 金は続落し、原油は大幅反発。
5月小売売上高 → −0.9%
5月輸入物価指数 → 0.0%
5月輸出物価指数 → −0.9%
5月鉱工業生産 → −0.2%
5月設備稼働率 → 77.4
6月NAHB住宅市場指数 → 32
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ドル/円 | 144.37 〜 145.38 |
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ユーロ/ドル | 1.1475 〜 1.1580 |
ユーロ/円 | 166.70 〜 167.59 |
NYダウ | −299.29 → 42,215.80 |
GOLD | −10.40 → 3,406.90ドル |
WTI | +3.07 → 74.84 |
米10年国債 | −0.057 → 4.389% |
本日の注目イベント
- 日 5月貿易統計
- 欧 ユーロ圏4月経常収支
- 欧 ユーロ圏5月消費者物価指数(改定値)
- 英 英5月消費者物価指数
- 米 5月住宅着工件数
- 米 5月建設許可件数
- 米 新規失業保険申請件数
- 米 FOMC政策金利発表
- 米 パウエル議長記者会見
本日のコメント
「メイフラワー号」と「かん臨丸」・・・・。
カナダのアルバータ州カナナスキスで開催された「G7首脳会議」に合わせて、石破首相とトランプ大統領の首脳会談が行われましたが、会談時間はわずか30分でした。会談ではっきりしたことは「関税協議を巡り今なお日米間で認識が一致していない」という事実でした。わずか30分の首脳会談では何も成果は得られませんでしたが、筆者は昨日のコメントで、「仮にG7閉幕後、両者がそのまま帰国の途につくようなら、協議の合意はかなり難しくなると思います。ここはG7後のチャンスに期待したいところです」と記述しました。G7終了後に改めて会談の時間を設け、日米のトップが話し合えば、ひょっとしたら進展も望めるのではないかと考えた次第です。ところが、昨日の朝方に早くも、ホワイトハウスのレビット報道官が「トランプ大統領は今夜ワシントンに戻り、多くの重要事案に対処する予定だ」と発表しました。「あわよくば、今回のG7サミットの機会を利用して合意に至れば・・・」といった日本側の淡い期待も潰えました。「トランプ関税」を巡る日米の考えには依然として溝があるということです。レビット報道官は、「トランプ大統領はG7で有意義な1日を過ごし、スターマー英首相とは重要な貿易合意に署名した」と発表していました。米国にとっての「本当の同盟国」は英国であって、日本との差は歴然として存在するのでしょう。特に、トランプ政権ではそのように感じます。まさに、15世紀初頭に初めて英国から米国に渡った「メイフラワー号」と、それから200年以上も経ってから米国に渡った「かん臨丸」との違いと言えるでしょう。
今朝の報道では、米国がイランに対して軍事的関与を強める可能性が浮上してきました。トランプ氏はワシントンで国家安全保障会議(NSC)を招集し、米国がイランに対して直接介入する準備を進めているといった見方です。トランプ氏はSNSに、「われわれは今、イラン上空の制空権を完全に掌握している。いわゆる『最高指導者』がどこに隠れているか、われわれは完全に把握している。狙いやすい標的だが、そこにいる限り安全だ。少なくとも今のところ排除(殺害)するつもりはない」と投稿し、その上で「われわれは忍耐の限界に近づいている。無条件降伏!」と記述しています。またロイター通信は、「米軍が戦闘機やその他の軍用機を追加で中東地域に配備している」と報じています。イランは核兵器の材料となる高濃縮ウランの貯蔵量を高めており、これがイスラエルの攻撃につながったようですが、米国にとっても放置できない事態のようです。イランが停戦にどこまで応じるのかが焦点になります。
リスク回避の流れが強まり、株が売られ債券が買われ、「有事のドル買い」も機能しているようで、ドル円は145円台に乗せています。この水準は何度も経験した水準で、現行のレンジ相場の「上限」にあたります。昨日この欄でも触れたように「三角保ち合い」(さんかくもちあい)を形成しつつあります。同時に、今朝の雲の上限(先行スパン2)は「145円55銭近辺」にあり、近づいています。
本日のドル円は144円30銭〜146円程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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6/11 | ベッセント・財務長官 | 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 | -------- |
6/6 | トランプ・米大統領 | 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 | -------- |
6/5 | ラガルド・ECB総裁 | 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 | ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。 |
6/3 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 | -------- |
5/22 | ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 | 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 | ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。 |
5/21 | 米財務省声明文 | 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) | ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇 |
5/20 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 | -------- |
5/20 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 | 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。 |
5/7 | パウエル・FRB議長 | 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 | ドル円は143円台から144円まで上昇。 |
5/7 | FOMC声明文 | 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書