今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ユーロ円172円前後まで続伸」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は続伸し一時は146円97銭までドルが買われる。トランプ大統領が銅に関税50%を課すと発言するなど、米国のインフレ懸念からドルが上昇。円はほぼ全面安の展開。
  • ユーロドルは1.17台を中心にもみ合う。ユーロ円はさらに買われ172円前後まで続伸。
  • 株式市場では3指数がまちまちの動き。ナスダックとS&P500は小幅に続伸したが、ダウは165ドル安。トランプ政権の関税の不透明感が重荷に。
  • 債券は小幅安。長期金利は4.4%前後に上昇。
  • 金は続落し、原油は続伸。
*******************
5月消費者信用残高 → 5102b
6月NY連銀インフ期待 → 3.02%
*******************
ドル/円 146.46 〜 146.97
ユーロ/ドル 1.1683 〜 1.1729
ユーロ/円 171.64 〜 172.01
NYダウ −165.60 → 44,240.76
GOLD −25.90 → 3,316.90ドル
WTI +0.40 → 68.33
米10年国債 +0.020 → 4.399%

本日の注目イベント

  • 中 中国6月消費者物価指数
  • 中 中国6月生産者物価指数
  • 米 FOMC議事録(6月17−18日分)

本日のコメント

トランプ大統領が日本に対する関税25%を通告してきたことに関して、政府は昨日の朝方に米関税措置に関する総合対策本部を開催し協議しました。冒頭、石破首相は「大変遺憾だ」と述べ、「日本政府として安易な妥協を避け、求めるべきものは求め、守るべきものは守るべく厳しい協議を続けてきた」と説明。交渉を担当する赤沢経済再生相ら関係閣僚に交渉の継続のほか、日本への影響を分析した上で、国内産業や雇用への対応に万全を期すよう指示しました。そして昨日は、新たに銅に対して50%の関税、医薬品にも200%の関税を課すことに言及。8月1日まで猶予した上乗せ関税の発動については、「関税は8月1日から開始される。この日付に変更はなく、今後も変更されることはない。言い換えれば、全ての関税支払いは8月1日から発生し、延長は一切認められない」とコメントしました。

4月2日の「解放の日」(Liberation Day)から始まった「トランプ関税劇場」は最終章を迎えているようですが、トランプ氏の大統領任期は現行法の下でも、まだ残り3年半もありこの先何が起こるか分からないという不確実性は払拭できません。今朝のブルームバーグ・ニュースで、トランプ氏のこれまでの行動を冷静に分析しているコラムを見つけました。コラムは、「4月2日、トランプ大統領は、長年にわたり米国の労働者や企業を『搾取』してきた貿易が、ようやく米国に有利なものに変わると熱弁を振るった。トランプ氏にとって、自由裁量で行える関税政策は、米国を『まったく別の国』に生まれ変わらせる手段となるはずだった。トランプ氏は『相互主義』とする自身の通商方針について、『彼らがわれわれにするなら、われわれも同じことをする。とてもシンプルで、これ以上ないほど明快だ』と述べた。8月1日の期限が各国にとって高関税を回避する最後の機会かと問われたトランプ氏は、『確固たるものだが、100%ではない』と回答。トランプ氏はこれまでもメキシコやカナダ、中国、EUなどに対して、自信満々に関税の賦課を表明しながら、その後に一時停止や引き下げに転じている。ウォール街では『TACO(Trump Always Chickens Out トランプはいつも尻込みをする)』と揶揄されており、トランプ氏はこうした見方に対して苛立ちを隠せないでいる」と結んでいました。

「そこまでやるか、ネタニヤフ・・・・」そんな声が聞こえてきそうです。7日にホワイトハウスを訪れ、トランプ大統領と会談したイスラエルのネタニヤフ首相は米政権との夕食会の冒頭、「大統領、これが、私がノーベル賞委員会に送った書簡です。あなたを平和賞に推薦しました」と、トランプ氏に伝えました。昨年11月の米大統領選の最中にも、「トランプ氏の究極の目的はノーベル平和賞を取ることだ」と言われていましたが、現実味を帯びてきました。持ち上げられたトランプ氏も、「特にあなたからそう言われることに、非常に意味がある」と答えていました。会談ではイスラエルにガザ地区との停戦を受け入れるよう求めていました。

日足チャートで「雲を上抜け」したドル円はNYではさらに買われ、147円に迫る水準までドル高が進みました。ただ、まだこのままドルが買われるのかは不明です。次のターゲットは6月23日に記録した148円03銭があるからです。MACDでも、両線は「ゼロの軸」を中心にもみ合っており、ドルの上昇を明確に示唆する状況でもありません。予定通り8月1日から25%の関税が課された場合、米国のインフレ率にも大きな影響を与え、日本では自動車産業を中心に景気への影響も懸念されることから、日銀による追加利上げのタイミングも後ずれしそうなことが、ドルを押し上げていると考えています。

本日は、先月17−18日に開催されたFOMC議事録が公開されます。早期の利下げを予想するメンバーが増えていた背景などが判明するかもしれません。トランプ氏は相変わらずパウエル議長を批判しながら「すぐに辞任すべきだ」と、繰り返しています。一方で、メンバーの中にもボウマン副議長など、今月の会合での利下げを主張する「ハト派」もいます。

本日のドル円は145円80銭〜147円80銭程度を予想します。

佐藤正和の書籍紹介

これだけ! FXチャート分析 三種の神器

これだけ! FXチャート分析 三種の神器
著者:佐藤正和
出版社:クロスメディア・パブリッシング

チャートがしっかり読めるようになるFX入門

チャートがしっかり読めるようになるFX入門
著者:佐藤正和
出版社:翔泳社

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
7/2 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 --------
7/1 パウエル・FRB議長 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。
6/26 コリンズ・ボストン連銀総裁 7月会合までに得られるデータは、あと1ヵ月分に過ぎない。それ以上のデータを確認したいと考えるだろう」 --------
6/26 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレが当局の目指す2%へと明らかに減速し、経済見通しを巡る不確実性が後退すれば利下げ再開もあり得る。良好なデータが得られており、関税の影響も限定的にとどまるかもしれないと楽観しているが、確証を待ちたい」 --------
6/26 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「どの方向にせよ、性急に進むことには得るものがほとんどない。現在の経済の強さを踏まえれば、われわれには情勢の展開を辛抱強く見守り、見通しが明確になるまで待つ時間がある」 --------
6/26 デーリー・SF連銀総裁 「私の中心的な見方としては、秋ごろから金利の調整が開始できるというものであり、その考えは特に変わっていない」、「労働市場には減速の兆しはあるものの、悪化を示す警告サインは見られない」 --------
6/25 パウエル・FRB議長 「関税が消費者物価に及ぼす影響を金融当局としてまだ見極めきれていない。関税のうちのどの程度がインフレとして表面化するのか、前もって予測するのは非常に困難だ」 --------
6/24 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「現行の金利はわずかに景気抑制的な水準だが、当局の目標達成までにはまだ一定の距離がある」、「政策金利はFOMCがごく緩やかな利下げで中立的な水準に戻す前に、かなりの期間据え置かれる可能性が高い」 --------
6/24 バー・FRB理事 「経済は現在、堅調な足どりを見せている。失業率は低水準で、インフレはFRBの目標の2%に向けて低下してきている」、「ただ今後を見据えると、関税の影響でインフレは加速すると予想する。短期のインフレ期待の高まり、サプライチェーンの調整、そして二次的影響により、インフレはやや長引く可能性がある」 --------
6/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「関税やその他の政策論争がどのように進展するか見守るための、余裕と時間はある」 --------
6/24 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「政策変更が労働市場とインフレに及ぼす影響を当局者が分析する間、金利を据え置くことは完全に適切だ」 --------
6/24 パウエル・FRB議長 「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の進路についてより多くの情報が得られるのを待つ体制が整っている」、(7月の利下げの可能性について問われ)、「インフレ圧力が本当に抑制されたままだということになれば、早めに利下げに踏み切ることになるだろう」、「特定の会合を指すことは避けたい。経済は依然として強く、急ぐ必要はないと考えている」 --------
6/23 ボウマン・FRB理事 「インフレ圧力が抑制されたままであれば、政策金利を中立水準に近づけ、健全な労働市場を維持するために、次回の会合で利下げを支持する」、(「トランプ関税」について)、「関税などの政策によって重大な影響が出ているという明確な兆候はデータには表れていない。多くの企業が事前に積み増していたため、関税によるインフレへの影響は当初の予想より表れるまでに時間がかかり、影響の度合いも当初予想より小さくなる可能性が高いと考えられる」 中東情勢の好転もあり、ドル円は148円前後から146円台前半まで下げる。
6/18 パウエル・FRB議長 「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」、(経済の不確実性が高いことを踏まえ)、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」 ドル円は144円台半ばから145円台に。
6/18 FOMCの議事録 「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 --------
6/11 ベッセント・財務長官 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 --------
6/6 トランプ・米大統領 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。
6/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 --------
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和