「NY株式市場堅調に推移」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は東京時間に145円75銭近辺まで下げたがその後反発。NYでは146円78銭まで上昇。失業保険申請件数が予想を下回っていたことで、労働市場の底堅さが確認された。
- ユーロドルはやや上値を切り下げる展開。1.1714まで買われたが、上値は限定された。
- 株式市場ではトランプ関税の影響が残る中、3指数が続伸。ナスダックとS&P500は連日の最高値更新。
- 債券は小幅に反落。長期金利は4.35%台に上昇。
- 金は小幅に続伸し、原油は反落。
新規失業保険申請件 → 22.7万件
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ドル/円 | 146.19 〜 146.78 |
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ユーロ/ドル | 1.1663 〜 1.1714 |
ユーロ/円 | 170.93 〜 171.51 |
NYダウ | +192.34 → 44,650.64 |
GOLD | +4.70 → 3,325.70ドル |
WTI | −1.81 → 66.57 |
米10年国債 | +0.018 → 4.350% |
本日の注目イベント
- 独 独6月消費者物価指数(改定値)
- 英 英5月鉱工業生産
- 英 英5月貿易収支
- 米 6月財政収支
- 加 カナダ6月新規雇用者数
- 加 カナダ6月失業率
本日のコメント
147円台まで買われた後、昨日は145円75銭前後まで売られたドル円は再び上昇し、NYでは146円78銭まで反発しました。FRBのウォラー理事が今月の会合での利下げに前向きな発言をしたものの、労働市場の堅調さを示唆する指標に相殺された格好です。トランプ関税に伴うリスクが依然として懸念される中、NY株式市場ではナスダックとS&P500が最高値を更新するなど、楽観ムードが優勢な状況ですが、まだ安心はできません。トランプ大統領が前日、ブラジルに対して50%の関税をかけるとしたことに対し、同国政府は「主権国家への干渉だ」と反発し、声明で、報復措置を取ることを示唆していました。トランプ氏のブラジルへの関税率の決定は、ブラジルの「反米姿勢」に対するもので、米国にとってブラジルは「貿易黒字国」であり、50%の関税率は本来の趣旨から大きく逸脱しているとの批判があります。
第一次トランプ政権で、副大統領を務めたマイク・ペンス氏がブルームバーグ・テレビジョンの番組で、トランプ氏の関税政策に批判的な意見を述べていました。ペンス氏は、「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」と発言。その上で、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」とし、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」と強調していました。副大統領時代、トランプ氏とはそれなりに上手くやってきたペンス氏が、トランプ氏の関税政策に批判的であったことにやや意外感があります。同じく、第一次トランプ政権で大統領補佐官を務めたジョン・ボルトン氏は自身の著書で、「彼は政治的信条がなく、物事を損得で考える。金銭的、政治的な意味で全てが個人的な『取引』なのだ。合衆国憲法を尊重する気など微塵もない」と、厳しく批判していました。
ドル円は先週までの動きから一段水準を切り上げ、今週はおおむね145円台から上の水準で推移しています。このまま145円台を維持できれば、145−150円の新しいレンジを形成することができる可能性がありますが、トランプ関税のゴールはまだ見えていません。足元のインフレ率という点では、利下げ環境は整っていますが、労働市場の状況は利下げが必要な状況ではありません。サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は10日のイベントで、米経済は良好な状態にあると指摘した上で、「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」と話していました。25%の関税率を突き付けられた日本では、31日の日銀決定会合での追加利上げはほぼないと予想していますが、その前の日のFOMC会合での追加利下げの可能性は五分五分のようです。ただ筆者は、それでも今回は見送りで、トランプ関税の影響がデータとして確認できる夏以降に利下げがあると予想しています。
本日のドル円は145円20銭〜147円程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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7/10 | デーリー・SF連銀総裁 | 「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」 | -------- |
7/10 | ペンス・元副大統領 | 「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」 | -------- |
7/2 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 | -------- |
7/1 | パウエル・FRB議長 | 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 | 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。 |
6/26 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 7月会合までに得られるデータは、あと1ヵ月分に過ぎない。それ以上のデータを確認したいと考えるだろう」 | -------- |
6/26 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレが当局の目指す2%へと明らかに減速し、経済見通しを巡る不確実性が後退すれば利下げ再開もあり得る。良好なデータが得られており、関税の影響も限定的にとどまるかもしれないと楽観しているが、確証を待ちたい」 | -------- |
6/26 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「どの方向にせよ、性急に進むことには得るものがほとんどない。現在の経済の強さを踏まえれば、われわれには情勢の展開を辛抱強く見守り、見通しが明確になるまで待つ時間がある」 | -------- |
6/26 | デーリー・SF連銀総裁 | 「私の中心的な見方としては、秋ごろから金利の調整が開始できるというものであり、その考えは特に変わっていない」、「労働市場には減速の兆しはあるものの、悪化を示す警告サインは見られない」 | -------- |
6/25 | パウエル・FRB議長 | 「関税が消費者物価に及ぼす影響を金融当局としてまだ見極めきれていない。関税のうちのどの程度がインフレとして表面化するのか、前もって予測するのは非常に困難だ」 | -------- |
6/24 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「現行の金利はわずかに景気抑制的な水準だが、当局の目標達成までにはまだ一定の距離がある」、「政策金利はFOMCがごく緩やかな利下げで中立的な水準に戻す前に、かなりの期間据え置かれる可能性が高い」 | -------- |
6/24 | バー・FRB理事 | 「経済は現在、堅調な足どりを見せている。失業率は低水準で、インフレはFRBの目標の2%に向けて低下してきている」、「ただ今後を見据えると、関税の影響でインフレは加速すると予想する。短期のインフレ期待の高まり、サプライチェーンの調整、そして二次的影響により、インフレはやや長引く可能性がある」 | -------- |
6/24 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「関税やその他の政策論争がどのように進展するか見守るための、余裕と時間はある」 | -------- |
6/24 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「政策変更が労働市場とインフレに及ぼす影響を当局者が分析する間、金利を据え置くことは完全に適切だ」 | -------- |
6/24 | パウエル・FRB議長 | 「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の進路についてより多くの情報が得られるのを待つ体制が整っている」、(7月の利下げの可能性について問われ)、「インフレ圧力が本当に抑制されたままだということになれば、早めに利下げに踏み切ることになるだろう」、「特定の会合を指すことは避けたい。経済は依然として強く、急ぐ必要はないと考えている」 | -------- |
6/23 | ボウマン・FRB理事 | 「インフレ圧力が抑制されたままであれば、政策金利を中立水準に近づけ、健全な労働市場を維持するために、次回の会合で利下げを支持する」、(「トランプ関税」について)、「関税などの政策によって重大な影響が出ているという明確な兆候はデータには表れていない。多くの企業が事前に積み増していたため、関税によるインフレへの影響は当初の予想より表れるまでに時間がかかり、影響の度合いも当初予想より小さくなる可能性が高いと考えられる」 | 中東情勢の好転もあり、ドル円は148円前後から146円台前半まで下げる。 |
6/18 | パウエル・FRB議長 | 「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を持てる状況にある」、(経済の不確実性が高いことを踏まえ)、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない。景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」 | ドル円は144円台半ばから145円台に。 |
6/18 | FOMCの議事録 | 「最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 | -------- |
6/11 | ベッセント・財務長官 | 「誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、発動時期をさらに延長する可能性が極めて高い、そうでない国に対しては延期をしない」・・議会証言で。 | -------- |
6/6 | トランプ・米大統領 | 「FRBの『手遅れ』は最悪だ」(『Too late 』at the Fed is a disaster )とSNSに投稿。「欧州は利下げを10回実施したが、われわれは一度も行っていない。彼にもかかわらず、我が国は好調だ。1ポイント利下げを実施せよ、ロケット燃料になる」 | -------- |
6/5 | ラガルド・ECB総裁 | 「私たちは、新型コロナウイルス、ウクライナでの不当な戦争、エネルギー危機など、複合的なショックに対応してきた金融政策サイクルの終盤に差し掛かっていると考える」、「現在、異なるプレイヤー、異なるパートナー、異なる政策を有する異なる時代に入っている。私たちは分析、評価、測定を継続し、2%の中銀目標を達成するため努力する」、(自身の任期満了前の辞任については)、「自らの使命を果たすこと、そして任期を全うすることを完全に決意している。私がECBを去る日はまだ来ない」 | ユーロドルは1.13台後半から1.1495まで買われる。 |
6/3 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | (このところ良好な物価データを目にしているものの)、「目にすべき進展という意味において、道のりはまだ長い。インフレに対する勝利宣言はまだしない」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書