今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「WTI原油価格4日続落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は反発。米金利が上昇し、FRBによる利下げも、市場が期待するほど大幅ではないとの見方が台頭。ドル円は147円83銭まで買われた。
  • ユーロドルは1.15台でもみ合い。
  • 株式市場では3指数が揃って反落。大幅利下げ期待が後退したことでダウは61ドル安。
  • 債券は反落。長期金利は4.21%台に上昇。
  • 金は3日続伸。一方原油は4日続落。
******************************
7月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 55.7
7月S&Pグローバル総合PMI(改定値) → 55.1
6月貿易収支 → −60.2b
7月ISM非製造業景況指数 → 50.1
******************************
ドル/円 147.31 〜 147.83
ユーロ/ドル 1.1531 〜 1.1586
ユーロ/円 170.23 〜 170.94
NYダウ −61.90 → 44,111.74
GOLD +8.30 → 3,434.70ドル
WTI −1.13 → 65.16
米10年国債 +0.018 → 4.210%

本日の注目イベント

  • 独 独6月製造業新規受注
  • 欧 ユーロ圏6月小売売上高
  • 米 クック・FRB理事とコリンズ・ボストン連銀総裁がパネルディスカッションに参加
  • 米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁講演
  • 米 決算発表→ マクドナルド、ウ−バー、エアビーアンドビー

本日のコメント

146円台半ばまで売られたドル円はNYでは147円83銭まで反発し、上値が重くなったとはいえ、145−150円のレンジを下抜けするのも簡単ではないようです。FRBのクーグラー理事が辞任することに伴い、トランプ大統領が自身の考えに近い人物を任命しても、大幅利下げにはまだ距離があるとの見方が広がり、米長期金利が上昇しドルが買われました。今後、米金融政策当局者による想定外の辞任がない限り、現在の構成メンバーから見て、2026年にトランプ氏が求めるような大幅な利下げが実現する可能性は低いといった見方のようです。先週末の「雇用統計ショック」で、労働市場の鈍化が一気にクローズアップされたことで、発表される経済指標にはこれまで以上に神経質になると同時に、金融政策の決定と当局者の構成にも注目が集まっているようです。

トランプ大統領は、次期FRB議長候補には4名いると述べていますが、そのうちの一人であるベッセント財務長官がトランプ氏に、議長候補への指名を望まない考えであることを伝えたとされています。FRB議長と財務長官のどちらが地位が上で重要なポストであるかは判然としませんが、ベッセント氏はトランプ関税が実施される中では、最も中心的な役割を担っており、現在のその役割に専念したいようです。他の候補者にはウォラーFRB理事、ウォーシュ元理事、それにハセット国家経済会議(NEC)委員長らの名前が上がっています。

赤沢経済再生相が昨日の5日から9日までの日程で訪米しました。7日に発動される一律関税について認識のすり合わせを行い、自動車関税引き下げの米大統領令発出も促す模様です。米国は、日本からの輸入品に対する一律関税を15%とすることで合意していますが、日本側は、既存の関税率が15%以上の品目に対しては関税率が上乗せされず、15%未満の品目に対しては15%の関税率が課されるという認識です。一方で、現地時間7月31日に発出された大統領令にはそうした記述がないことから、認識の確認という意味合いの訪米のようです。日本は15%の関税に加え、米国への5500億ドル(約81兆円)の投資を約束しました。これについてトランプ氏は、「日本から5500億ドルの契約金を得た。これはわれわれの資金であり、好きなように投資できる資金だ」とNBCとのインタビューで述べています。また、「日本は完全に市場を開いた。米国産のコメも受け入れる。かつて誰もが不可能だと考えていたことだ。一段と重要なのは、とても美しいフォードの『F−150』といった米国車を日本が受け入れることだ」と話しています。

関税に関してはこの他にも、トランプ氏は半導体と医薬品に対する関税について、「医薬品関税は250%にする。半導体も近く発表する。医薬品を自国で製造するようにしたいからだ」と発言しています。また、39%という高関税率賦課を決められたスイスでは、5日にケラーズッター大統領とパルムラン副大統領がワシントンを訪れ、39%の税率の引き下げを求める協議を行うようです。ただ、トランプ氏からロシア産の原油を購入していると厳しく批判されたインドについては、米国からの警告にもかかわらずモディ首相の側近らが、近日中にロシアを訪問する予定だとブルームバーグが報じています。米国はインドからの輸入品に対して25%の関税を賦課していますが、トランプ氏はインドがロシア産原油の購入をやめなければ、「関税を大幅に引き上げる」と警告していました。

余談になりますが、トランプ氏はJPモルガンとバンク・オブ・アメリカ(BOA)から取引を拒否されたとして、「両行からひどい差別を受けた」と話しています。ブルームバーグによれば、JPモルガンからは長年保有していた口座を20日以内に閉じるよう求められ、BOAからは10億ドル(約1470億円)超を預け入れようとしたところ断られたそうです。いずれもトランプ氏が特定口座の違法性に関する大統領令を起草中だということに関連していると見られています。それにしても、預け入れようとした金額の大きさには驚きました。

ドル円は145−150円のレンジの中で「一進一退」の展開です。米国が今後利下げに踏み切ることは間違いないところですが、FRBが大幅利下げに踏み切るのか、また年内2回以上の利下げが行われるのかが今後のカギになります。

本日のドル円は146円〜148円程度を予想します。

佐藤正和の書籍紹介

これだけ! FXチャート分析 三種の神器

これだけ! FXチャート分析 三種の神器
著者:佐藤正和
出版社:クロスメディア・パブリッシング

チャートがしっかり読めるようになるFX入門

チャートがしっかり読めるようになるFX入門
著者:佐藤正和
出版社:翔泳社

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
8/4 デーリー・SF連銀総裁 (先週のFOMCの決定について)、「もう1会合見送る用意はあったが永遠に待つことはできない」、「インフレが加速・波及したり、雇用市場が持ち直したりすれば、2回未満の利下げでも十分かもしれないが、より可能性が高いのは、2回を超える利下げが必要になるかもしれないことだと考える。労働市場が弱い局面に入りつつある一方で、インフレへの波及が見られない場合、さらに措置を講じる準備も必要というのが私の見解だ」 --------
7/30 FOMC声明文 「経済活動の伸びは緩やかになった。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指し、2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」 --------
7/30 パウエル・FRB議長 「解決すべき不確実性は非常に多い。そのプロセスの終わりが間近に迫っているという感触はない」、(利下げ次期については)、「9月については何も決定していない」 ドル円は買われ、149円54銭まで上昇。
7/24 ラガルド・ECB総裁 「現在の状況は良好だ。今は金利を据え置き、リスクが今後数か月の間にどう展開いていくかを見守ることが適切な状況にある」 --------
7/24 ECB声明文 「これまでのところ経済は全体として底堅さを示している。しかし、通商摩擦をはじめとする要因により、依然として先行きは極めて不透明だ」 --------
7/10 デーリー・SF連銀総裁 「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」 --------
7/10 ペンス・元副大統領 「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」 --------
7/2 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 --------
7/1 パウエル・FRB議長 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和