「ドル円は一進一退」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は147円台後半から反落。NYでは一時147円を割り込む場面もあった。FRB高官が利下げには前向きな発言を行うなど、方向感のない中でもドル売りが優勢に。
- ユーロドルは続伸し1.1668まで買われる。
- 株式市場では3指数が揃って上昇。米国内に巨額の投資を行うことを発表したアップルが株価をけん引し、ナスダックは252ポイント高。
- 債券は小幅に続落。長期金利は4.22%台に上昇。
- 金は4日ぶりに小反落。原油は5日続落。
ドル/円 | 146.99 〜 147.63 |
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ユーロ/ドル | 1.1601 〜 1.1668 |
ユーロ/円 | 171.18 〜 171.64 |
NYダウ | +81.38 → 44,193.12 |
GOLD | −1.31 → 3,433.40ドル |
WTI | −0.81 → 64.35 |
米10年国債 | +0.016 → 4.226% |
本日の注目イベント
- 豪 豪6月貿易収支
- 日 6月景気先行指数(CI)(速報値)
- 日 6月景気一致指数(CI)(速報値)
- 中 中国 7月貿易収支
- 中 中国 7月外貨準備高
- 独 独6月貿易収支
- 独 独6月鉱工業生産
- 英 BOE金融政策発表
- 英 BOE金融政策委員会(MPC)議事録
- 米 新規失業保険申請件数
- 米 6月消費者信用残高
- 米 7月NY連銀インフレ期待
- 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁、座談会に参加
- 米 決算発表 → イーライリリー
本日のコメント
今朝もトランプ関税を巡る話題に終始しそうです。
同盟国である日本を含むおよそ70カ国の国・地域に対して厳しい関税を課し、その上米国への巨額な投資を呼び込むことにも成功したトランプ大統領ですが、その発想の源泉は言うまでもなく「Make America Great Again」(MAGA)です。米国民に対しては「受けのいい大型減税」を実施し、その巨額な歳入減を埋め合わせるために、「伝家の宝刀である関税」の大幅引き上げと、国内の「製造業を立て直し」、景気拡大による所得税や法人税で歳入を増やすという政策です。しかし、果たしてその通りに事が運ぶのでしょうか?
関税の引き上げは国内企業にも波及し、インフレを加速させます。「自動車産業の聖地」デトロイトを抱えるミシガン州のウィットマー知事は5日、ホワイハウスでトランプ大統領と会見し、州内の自動車産業が関税措置で悪影響を受けていると伝えました。ウィットマー知事は2028年の大統領選への出馬が取りざたされている人物です。ブルームバーグは、「この面会が示しているのは、トランプ氏の関税政策がもたらす広範な影響だ。24年の大統領選で同氏が勝利した州や、同氏を支持した有権者にもその影響が及んでいる」と伝えています。
相互関税の新たな税率は米東部時間7日0時1分(日本時間午後1時1分)に発効します。共同通信は、ホワイトハウス関係者の話として、「日本には15%の追加関税を課すことになる。日本側が説明した合意内容とは異なる」と伝えています。訪米中の赤沢経済再生相はラトニック商務長官と90分にわたり会談し、合意内容についてあらためて確認した上で、直ちに履行するよう求めたようですが、どうやら両国の認識には溝があるようです。
トランプ大統領はインドからの輸入品に対して25%の追加関税を課す大統領令に署名しました。インドがロシア産エネルギーを購入していることが理由で、今回の関税は7日に発動する予定の国別の対インド25%に上乗せされることになります。これにより、対インド関税は2倍の50%になります。米国とインドは数か月に及ぶ交渉を続けてきましたが合意には至らず、その後トランプ大統領がインドへの態度を硬化させ、一方的に関税措置を発表しました。トランプ氏は、「戦争マシーンに燃料を供給している。インドがそうし続けるのなら、自分は不満だ」と述べていました。また、39%の高関税を賦課されることになったスイスは、大統領と副大統領が揃ってワシントン入りし関税率引き下げの交渉を行いましたが、合意が得られず帰国の途につく模様です。
先週末の雇用統計がネガティブ・サプライズであったことから、FRBによる利下げのタイミングや利下げ幅を巡る見方が錯綜しています。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は6日CNBCとのインタビューで、「景気は減速している。短期的にFF金利の調整を開始することが適切になる可能性がある」と語っています。さらに、「関税の影響が明確になるまで、どれくらい待てるのか、それが現在、私を悩ませている。最良の選択肢が、多少の調整を行い、その後に一時停止や方向転換を迫られる展開であっても、関税の影響が明確になるまで何もしないで待つより望ましい可能性がある」と、利下げを支持する発言をしています。また、FRBのクック理事もボストン連銀主催の討論会で、「7月の雇用統計は懸念すべき内容だった。こうしたデータの修正は転換点でよく見られる傾向だ」と話しています。前回のFOMC会合では2名の委員が利下げを主張し、反対票を投じましたが、最後は「据え置き」で決定されました。軟調な労働市場を示すデータを受け、次回9月のFOMCでは多くの委員が利下げを支持すると見られます。またその前に、ジャクソンホールで、パウエル議長の胸の内も確認できると思われます。
本日のドル円は146円20銭〜148円20銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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8/6 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「景気は減速している。短期的にFF金利の調整を開始することが適切になる可能性がある」、「関税の影響が明確になるまで、どれくらい待てるのか、それが現在、私を悩ませている。最良の選択肢が、多少の調整を行い、その後に一時停止や方向転換を迫られる展開であっても、関税の影響が明確になるまで何もしないで待つより望ましい可能性がある」 | -------- |
8/6 | クック・FRB理事 | 「7月の雇用統計は懸念すべき内容だった。こうしたデータの修正は転換点でよく見られる傾向だ」 | -------- |
8/4 | デーリー・SF連銀総裁 | (先週のFOMCの決定について)、「もう1会合見送る用意はあったが永遠に待つことはできない」、「インフレが加速・波及したり、雇用市場が持ち直したりすれば、2回未満の利下げでも十分かもしれないが、より可能性が高いのは、2回を超える利下げが必要になるかもしれないことだと考える。労働市場が弱い局面に入りつつある一方で、インフレへの波及が見られない場合、さらに措置を講じる準備も必要というのが私の見解だ」 | -------- |
7/30 | FOMC声明文 | 「経済活動の伸びは緩やかになった。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指し、2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」 | -------- |
7/30 | パウエル・FRB議長 | 「解決すべき不確実性は非常に多い。そのプロセスの終わりが間近に迫っているという感触はない」、(利下げ次期については)、「9月については何も決定していない」 | ドル円は買われ、149円54銭まで上昇。 |
7/24 | ラガルド・ECB総裁 | 「現在の状況は良好だ。今は金利を据え置き、リスクが今後数か月の間にどう展開いていくかを見守ることが適切な状況にある」 | -------- |
7/24 | ECB声明文 | 「これまでのところ経済は全体として底堅さを示している。しかし、通商摩擦をはじめとする要因により、依然として先行きは極めて不透明だ」 | -------- |
7/10 | デーリー・SF連銀総裁 | 「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」 | -------- |
7/10 | ペンス・元副大統領 | 「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」 | -------- |
7/2 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 | -------- |
7/1 | パウエル・FRB議長 | 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 | 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書