「NY連銀総裁9月の利下げを示唆」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は欧州市場からNYの朝方にかけて買われ、148円台に乗せたがその後反落。米金利が低下したことで147円30銭まで売られる。
- ユーロドルは小幅に下落し、1.1582まで下げる。
- 株式市場ではエヌビディアの決算発表を控える中、3指数が揃って小幅に上昇。S&P500は15ポイント買われ、最高値を更新。
- 債券は続伸し、長期金利は4.23%台に低下。
- 金は続伸し、原油は反発。
ドル/円 | 147.30 〜 148.14 |
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ユーロ/ドル | 1.1582 〜 1.1642 |
ユーロ/円 | 171.35 〜 171.78 |
NYダウ | +147.16 → 45,565.23 |
GOLD | +15.46 → 3,448.60ドル |
WTI | +0.90 → 64.15 |
米10年国債 | −0.027 → 4.234% |
本日の注目イベント
- 豪 豪4−6月期民間設備投資
- 日 中川日銀審議委員、山口県金融経済懇談会で講演
- 欧 ユーロ圏8月消費者信頼感(確定値)
- 欧 ユーロ圏8月景況感指数
- 欧 ECB議事要旨(7月開催分)
- 米 4−6月GDP(改定値)
- 米 新規失業保険申請件数
- 米 7月中古住宅販売成約件数
- 米 ウォラー・FRB理事講演
本日のコメント
トランプ大統領が即時解任の意向を示したクックFRB理事について、次期FRB議長候補の一人であるハセット国家経済会議(NEC)委員長は、「地位を巡る訴訟が行われる間は休職すべきだ」との考えを示しました。また、ベッセント財務長官も「同理事の住宅ローンを巡る疑惑をFRBが内部調査すべきだ」と述べ、トランプ氏がクック氏解任に動いたのは、FRB理事会での多数派確保が狙いではないかとの質問に対し、ベッセント氏は「全てのFRB理事は独立している」と答えていました。不正の内容は徐々に明らかになり、住宅ローンの申請でクック氏がセカンドハウスを主たる居住地と偽って申請したことが問題視されているようです。判断が司法に移れば、今後は双方が主張を記した書面を裁判所に提出しますが、「カギとなるのは、解任によって自身とFRBが『回復不能な損害』を被ると、クック氏が裁判官を説得できるかどうかだ」と、ブルームバーグは報じています。
トランプ政権は27日、インドからの一部輸入品に対してアジアで最も高い50%の関税を発動しました。ロシア産原油購入への制裁措置で、7日に発効していた25%の税率から倍に引き上げられます。米国とインドは経済および安全保障の両面で長年連携を深めてきましたが、トランプ大統領が仕掛ける貿易戦争を巡り対立が表面化。今回発動された高関税は両国関係にとって新たな打撃となっています。一方、明日29日にはインドのモディ首相が来日する予定ですが、日本政府はインドに対する米国の強硬な制裁措置にもかかわらず、半導体を核に経済安全保障分野の協力を強める考えです。日本が強みを持つ装置や素材の関連企業がインドに進出し、供給網づくりを後押しする計画だと今朝の日経新聞が報じています。インドとしても、対米関係のさらなる悪化が懸念される中、日本との関係を強化したい考えのようです。トランプ関税を巡っては、日本は最終的に15%で決着しましたが、赤沢経済再生担当相は28日から30日の日程で米国を訪問すると発表しました。関税交渉に関する訪米はこれで10回目となりますが、相互関税を巡る大統領令の修正と自動車関税引き下げの発令を米側に促すことが目的のようです。赤沢氏は今回の訪問で、「米側に対し、可及的速やかに相互関税に関する大統領令を修正する措置をとる」とともに、「自動車と自動車部品の関税引き下げの大統領令の発令を強く申し入れたい」と、昨日の会見で述べていました。
リッチモンド連銀のバーキン総裁は、年内の経済活動に大きな変動はなく、金利の調整は小幅になるとの見通しを示しました。同総裁は26日、バージニア州ブラックスバーグでのイベント後にインタビューに応じ、「経済が緩やかな動きとなれば、金利調整は小幅にとどまるだろう。実際に経済が緩やかな動きになるかは分からない。それはその時に確認しなければならない。従ってこれは私の予測だが、予測は変わり得る」と語っていました。また、NY連銀のウィリアムズ総裁は27日の経済専門局CNBCとのインタビューで、「私の見解では、全ての会合が間違いなくライブだ」と発言。最大雇用と物価安定というFRBの2大責務に言及し、「リスクは一段と均衡してきている」と述べています。さらに総裁は現行の金利水準について「やや景気抑制的」だと指摘。従って、FRBは「利下げを実施しても、依然としていくぶんか景気抑制的な状態を維持できるだろう。ただし、経済で実際に何が起きているのかを見極める必要がある」と話しています。先週のジャクソンホールでパウエル議長がややハト派寄りの発言を行って以来、FOMCメンバーの発言にも利下げへのバイアスがかかってきた印象もあります。ウィリアムズ氏はクックFRB理事の件に関してはコメントを控え、クック氏について「FRBの使命に対して常に誠実さとコミットメントを示してきた」と述べるにとどめていました。
本日は、ウォラーFRB理事の講演があります。利下げには極めて積極的な姿勢を見せてきた同理事だけに、これまで以上に利下げを支持し、年内複数回の利下げにも言及してくるかもしれません。
本日のドル円は146円〜148円程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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8/27 | ウィリアムズ・NY連銀総裁 | 「私の見解では、全ての会合が間違いなくライブだ」、(最大雇用と物価安定というFRBの2大責務に言及し)、「リスクは一段と均衡してきている」、(金利水準は)「やや景気抑制的だ」、「利下げを実施しても、依然としていくぶんか景気抑制的な状態を維持できるだろう。ただし、経済で実際に何が起きているのかを見極める必要がある」 | -------- |
8/26 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「経済が緩やかな動きとなれば、金利調整は小幅にとどまるだろう。実際に経済が緩やかな動きになるかは分からない。それはその時に確認しなければならない。従ってこれは私の予測だが、予測は変わり得る」 | -------- |
8/21 | ポスティック・アトランタ連銀総裁 | 「労働市場の動向は気掛かりな要因となり得る」、「現時点でも基本的には同じ考えだ」、「ただ、足元の環境においては、あらゆる見通しや予測に幅広い不確実性が伴う」、「特定の見通しに固執しているわけではない」 | ドルが買われ、債券と株は下落。 |
8/21 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「米国のインフレは高過ぎる上、過去1年を通じて上昇基調にある」、「もし政策会合が明日開催されるとして、現時点の情報に基づけば、利下げの論拠は見当たらない」 | ドルが買われ、債券と株は下落。 |
8/21 | ブラード氏・前セントルイス連銀総裁 | 「金利は現時点でやや高過ぎる。2026年に向けて100bp程度の引き下げが可能だと考える。それは9月の会合での利下げから始まり、恐らく年内に追加利下げがあるだろう」 | -------- |
8/14 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「現時点での戦略的アプローチは『動いて、待つ』というものになるだろう」、「われわれの行動後、経済がどう動くか分かるまでに時間がかかるかもしれない。その間に、次にどのような行動を取るべきか鮮明になるだろう」、「労働市場が堅調を維持すれば、年内は1度の利下げが適切になるという見方はなお変わらない」、「いつ行動を起こすかについては予断を持っていない。特定の時期に固執していない」 | -------- |
8/14 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | (9月の会合で)「私自身としてどういった政策を支持できるかを正確に述べるのは時期尚早だ」、(9月会合で0.5ポイントの利下げが正当化され得るかとの質問に)、「経済の現状や見通しを踏まえれば支持されない」、「データは、より持続的なインフレの可能性があるかどうかを示し始めている。労働市場には下振れリスクがある」、「私は両方の要素を意識している」、「われわれの2つの責務の間に緊張が見られる場合は、バランスの取れたアプローチで臨む必要がある」 | -------- |
8/14 | デーリー・SF連銀総裁 | 「0.5ポイントというのは、われわれが緊急性を認識しているように聞こえる。労働市場について私が感じているものとは違う緊急シグナルを発することになると懸念する」、「そうは見ていないし、遅れを取り戻す必要も感じない」 | -------- |
8/13 | ベッセント・財務長官 | 「9月の0.5ポイント利上げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている。どのモデルを見ても、金利は恐らく150、175ベーシス・ポイント低い水準にあるできだろう」、「トランプ大統領も望んでいる」、「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」、(日銀の植田総裁と話したこと明らかにしたうえで)、「これは総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は147円08銭まで下落。 |
8/12 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「米経済の先行きに対する不透明感は薄れつつあるものの、FRBがインフレ抑制と雇用の下支えのどちらに重点を置くべきかは、依然として明確ではない」 | -------- |
8/12 | シュミッド・カンザスシティ連銀総裁 | 「経済が勢いをなお維持し、企業の楽観的な見方が強まり、インフレが当局の目標を上回る水準にとどまる中では、緩やかな引き締め状態にある金融政策スタンスを当面維持するのが適切だ」 | -------- |
8/7 | ポスティック・アトランタ連銀総裁 | 「年内に1回の利下げが実施される可能性が高いとの見通しは変わらない」、「関税の影響が一時的なものなのか、あるいはもっと持続的なものなのかという点が、現時点では恐らく最も重要な問題だ」、「この日発動された関税の影響が、一時的な物価上昇にとどまるという教科書的な関税の例に当てはまるには、いくらか会懐疑的な理由がある」、「これは一度きりで、ある朝目が覚めたら全ての関税が明らかになっているという話ではない。むしろ、関税が頻繁に変化することで、消費者の意識の中に関税や物価上昇見通しが浮かぶ期間が長くなり、インフレ期待が高まるリスクがある」 | -------- |
8/6 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「景気は減速している。短期的にFF金利の調整を開始することが適切になる可能性がある」、「関税の影響が明確になるまで、どれくらい待てるのか、それが現在、私を悩ませている。最良の選択肢が、多少の調整を行い、その後に一時停止や方向転換を迫られる展開であっても、関税の影響が明確になるまで何もしないで待つより望ましい可能性がある」 | -------- |
8/6 | クック・FRB理事 | 「7月の雇用統計は懸念すべき内容だった。こうしたデータの修正は転換点でよく見られる傾向だ」 | -------- |
8/4 | デーリー・SF連銀総裁 | (先週のFOMCの決定について)、「もう1会合見送る用意はあったが永遠に待つことはできない」、「インフレが加速・波及したり、雇用市場が持ち直したりすれば、2回未満の利下げでも十分かもしれないが、より可能性が高いのは、2回を超える利下げが必要になるかもしれないことだと考える。労働市場が弱い局面に入りつつある一方で、インフレへの波及が見られない場合、さらに措置を講じる準備も必要というのが私の見解だ」 | -------- |
7/30 | FOMC声明文 | 「経済活動の伸びは緩やかになった。景気見通しに関する不確実性は依然として高い。委員会は長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指し、2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」 | -------- |
7/30 | パウエル・FRB議長 | 「解決すべき不確実性は非常に多い。そのプロセスの終わりが間近に迫っているという感触はない」、(利下げ次期については)、「9月については何も決定していない」 | ドル円は買われ、149円54銭まで上昇。 |
7/24 | ラガルド・ECB総裁 | 「現在の状況は良好だ。今は金利を据え置き、リスクが今後数か月の間にどう展開いていくかを見守ることが適切な状況にある」 | -------- |
7/24 | ECB声明文 | 「これまでのところ経済は全体として底堅さを示している。しかし、通商摩擦をはじめとする要因により、依然として先行きは極めて不透明だ」 | -------- |
7/10 | デーリー・SF連銀総裁 | 「2回の利下げというのが可能性の高いシナリオだと私はみているが、あらゆる当局の予測には不確実性が伴う」 | -------- |
7/10 | ペンス・元副大統領 | 「われわれは主に中国を対象に、相手の行動の変化を促すべく関税やその脅威を交渉手段として用いた。目的は本質的に貿易障壁を下げ、貿易を拡大することだった」、「トランプ氏は米産業政策の長期的な転換を進めており、恒久的かつ一方的な貿易関税が米国にとって長期的に有益だと見なしているとは、私は考えていない」、「自由市場を信奉する保守派として、私はそれには賛同できない」 | -------- |
7/2 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「経済指標は非常に堅調だ。経済が悪い方向に進んでいるという切迫感はない。また、経済環境全体に切迫感がない限り、霧の中を運転するように、ゆっくり進むのが妥当だ」、「現時点で政策金利を引き下げる緊急性はない」 | -------- |
7/1 | パウエル・FRB議長 | 「(関税の行方に)われわれは注視している。夏にかけていくらかの数値が上がると予想している」と話し、その上で「ただし影響が想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのかは、今後明らかになる可能性があるとして、それを確認する用意がある」、(月利下げについては)「検討は会合ごとに行われる。どの会合も選択肢から排除しないし、直接的に議題に上げることもしない。データがどう展開するかにかかっている」 | 利下げの可能性を排除しなかったことで、ドル円はやや売られる。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書