今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米金利低下でドル下落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 石破首相の退陣で東京時間には148円57銭前後まで買われたドル円はNYでは下落。FOMCでの利下げ観測が根強く、米金利が低下したことで147円35銭まで売られる。
  • ユーロドルは続伸したものの、フランスの政局不安が重荷となり、1.1765前後で頭打ち。
  • 利下げ観測を支えに、株式市場では3指数が揃って上昇。ナスダックは98ポイント買われ、最高値を更新。
  • 債券は続伸し、長期金利は4.04%台まで低下。
  • 金は続伸。原油も反発。
  • 7月消費者信用残高 → 16.01b
ドル/円 147.35 〜 147.87
ユーロ/ドル 1.1723 〜 1.1765
ユーロ/円 173.27 〜 173.66
NYダウ 98.31 → 45,514.95
GOLD +24.10 → 3,677.40ドル
WTI +0.39 → 62.26
米10年国債 −0.034 → 4.040%

本日の注目イベント

  • 豪 豪9月ウエストパック消費者信頼感指数
  • 豪 豪8月NAB企業景況感指数
  • 米 雇用統計の年次改定(推計値)
  • 米 第80回国連総会開幕

本日のコメント

石破首相が辞任を発表したことを受け、ドル円は大きく窓を開けて取引を開始し、昨日の東京時間朝方には148円台半ばまで買われましたが、その後は軟調な展開となり、NYでは147円35銭まで下落しました。来週のFOMC会合での利下げはほぼ100%との見方に加え、利下げ幅が25bpではなく、50bpの可能性もあるとの見方がより整合性を持つ展開となりドルを押し下げました。

ニューヨーク連銀が発表した米消費者の、8月の1年先インフレ期待は3.2%に上昇していました、トランプ政権が主要貿易相手国に強力な関税措置を発表した直後である5月以来の高水準です。一方、求職者を取り巻く見通しは急速に悪化しています。現在職を失った場合に3カ月以内に再就職できると回答した割合は、6ポイント近く低下し、2013年にこの設問が導入されて以来の最低水準でした。ブルームバーグは、「1カ月の低下幅としては、コロナ禍以降で最も大きい。今回の調査は、8月の雇用統計の弱い内容を裏付ける結果となった。非農業部門雇用者数(NFP)は前月比2万2000人増にとどまり、過去データの修正により、6月の雇用者数は2020年以来の減少となった」と説明しています。また、消費者の家計に対する見通しも悪化しており、この1年で家計が「悪化した」と答えた人の割合が増えたほか、今後さらに悪化すると見込む人の割合も上昇しています。将来の借り入れ環境についての期待も悪化し、今後3カ月以内に債務の最低支払いを滞らせる可能性があるとみる人の割合も上昇していました。労働市場の減速傾向を裏付けるデータであり、FRBによる利下げをより積極的に促す可能性もあります。今後しばらくは米金利が低下傾向にあることは明らかで、株式市場にとっては追い風になりますが、一方でそれが米景気そのものの失速と受け止められるリスクもあります。また、消費者が高いインフレ期待を維持していることは、トランプ関税に対する警戒感が引き続き強いことを表していると見ることができます。

石破首相の辞任表明を受けて昨日の東京株式市場は大いに盛り上がったようですが、海外ではそれほど大きなインパクトにはなっていないようです。それでも、次期首相に誰がなるのかは、日本の景気や金融にとっては大きな関心事です。自民党内では早くも茂木前幹事長が立候補の意向を表明し、総裁選出馬に必要な推薦人20人の確保にも自信を見せていました。他にも昨年の総裁選と同じく、高市、小泉、林、小林といった面々が意欲を見せているようです。市場には「高市氏待望論」のようなものがあり、昨日は活発な「高市トレード」が株価を押し上げました。利上げに反対することで日銀が動きにくくなる上、新たな財政出動も期待され、「初の女性総理誕生」がはやされています。一方で、円安の進行や財政規律のさらなる悪化が懸念されます。現時点では、同総裁選は10月4日に行われる可能性が高いと見られていますが、今回の総裁選では「自民党総裁=内閣総理大臣」ではないという点には注意が必要です。可能性は極めて低いと思われますが、野党が結束すれば、首班指名で自民党総裁が敗れる可能性もあります。そして、その先に見えて来るのは一段の政治的混迷です。

本日は「雇用統計の年次改定」が発表されます。これは、米労働統計局が、3月までの1年間について雇用者数の暫定的ベンチマーク改定を発表するものです。ブルームバーグは、「3月の雇用者数がさらに下方修正され、雇用の伸びが最近鈍化し始める以前から、労働市場が既に軟化していたことを示すと予想されている」と分析しています。

本日のドル円は146円50銭〜148円程度を予想します。

佐藤正和の書籍紹介

これだけ! FXチャート分析 三種の神器

これだけ! FXチャート分析 三種の神器
著者:佐藤正和
出版社:クロスメディア・パブリッシング

チャートがしっかり読めるようになるFX入門

チャートがしっかり読めるようになるFX入門
著者:佐藤正和
出版社:翔泳社

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
9/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「もっと情報を得たい。私はまだ決めていない。インフレの数値が穏やかであれば、それだけ労働市場に集中しやすくなる」、「しかし最新のインフレ統計ではサービス部門でインフレ上振れが見られた。従ってそれが一時的なものであり、もっと深刻な兆候ではないことを確認したい」 --------
9/3 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「完全雇用の労働市場とコアインフレがFRBの目指す2%を1ポイント近く上回っている環境と、やや引き締め的な現行の政策金利は整合する」、「現時点では政策においてバランスの取れたアプローチを取ることが重要であり、労働市場の支援やインフレ抑制のいずれかに偏り過ぎるべきではない。先行きを見通すと、労働市場は徐々に冷え込みながらも完全雇用に近い状態を維持するだろうが、リスクは下方向に傾いている」 --------
9/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「物価安定が依然として最大の関心事項ではあるものの、労働市場は十分減速しており、年内残りの期間において恐らく25ベーシスポイントの政策緩和が妥当になると考えられる」、「今後数カ月のインフレ動向や雇用市場の展開によっては、この認識は変わり得る」 --------
9/3 ウォラー・FRB理事 「次回会合で利下げを始める必要がある。その後は決まった道筋を踏まなくてもいい。人々は関税によるインフレをまだ懸念しており、状況を見極めながら進めることができる」、「米国の政策金利は現在、景気を刺激も抑制もしない中立金利を上回っており、金融政策が経済を抑制している」、「中立に近づきたいことは認識している。どれくらい利下げすべきかもおおよそ分かっていて、例えば100から150ベーシスポイントだ。ただ、その水準にどれだけの速さで到達するかは、入ってくるデータ次第になるだろう」 --------
8/27 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「私の見解では、全ての会合が間違いなくライブだ」、(最大雇用と物価安定というFRBの2大責務に言及し)、「リスクは一段と均衡してきている」、(金利水準は)「やや景気抑制的だ」、「利下げを実施しても、依然としていくぶんか景気抑制的な状態を維持できるだろう。ただし、経済で実際に何が起きているのかを見極める必要がある」 --------
8/26 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「経済が緩やかな動きとなれば、金利調整は小幅にとどまるだろう。実際に経済が緩やかな動きになるかは分からない。それはその時に確認しなければならない。従ってこれは私の予測だが、予測は変わり得る」 --------
8/21 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「労働市場の動向は気掛かりな要因となり得る」、「現時点でも基本的には同じ考えだ」、「ただ、足元の環境においては、あらゆる見通しや予測に幅広い不確実性が伴う」、「特定の見通しに固執しているわけではない」 ドルが買われ、債券と株は下落。
8/21 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「米国のインフレは高過ぎる上、過去1年を通じて上昇基調にある」、「もし政策会合が明日開催されるとして、現時点の情報に基づけば、利下げの論拠は見当たらない」 ドルが買われ、債券と株は下落。
8/21 ブラード氏・前セントルイス連銀総裁 「金利は現時点でやや高過ぎる。2026年に向けて100bp程度の引き下げが可能だと考える。それは9月の会合での利下げから始まり、恐らく年内に追加利下げがあるだろう」 --------
8/14 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「現時点での戦略的アプローチは『動いて、待つ』というものになるだろう」、「われわれの行動後、経済がどう動くか分かるまでに時間がかかるかもしれない。その間に、次にどのような行動を取るべきか鮮明になるだろう」、「労働市場が堅調を維持すれば、年内は1度の利下げが適切になるという見方はなお変わらない」、「いつ行動を起こすかについては予断を持っていない。特定の時期に固執していない」 --------
8/14 ムサレム・セントルイス連銀総裁 (9月の会合で)「私自身としてどういった政策を支持できるかを正確に述べるのは時期尚早だ」、(9月会合で0.5ポイントの利下げが正当化され得るかとの質問に)、「経済の現状や見通しを踏まえれば支持されない」、「データは、より持続的なインフレの可能性があるかどうかを示し始めている。労働市場には下振れリスクがある」、「私は両方の要素を意識している」、「われわれの2つの責務の間に緊張が見られる場合は、バランスの取れたアプローチで臨む必要がある」 --------
8/14 デーリー・SF連銀総裁 「0.5ポイントというのは、われわれが緊急性を認識しているように聞こえる。労働市場について私が感じているものとは違う緊急シグナルを発することになると懸念する」、「そうは見ていないし、遅れを取り戻す必要も感じない」 --------
8/13 ベッセント・財務長官 「9月の0.5ポイント利上げを皮切りに、そこから一連の利下げを実施できるだろうと考えている。どのモデルを見ても、金利は恐らく150、175ベーシスポイント低い水準にあるできだろう」、「トランプ大統領も望んでいる」、「日本はインフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」、(日銀の植田総裁と話したこと明らかにしたうえで)、「これは総裁の見解ではなく、私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」 株と債券が買われ、金利が低下したことでドル円は147円08銭まで下落。
8/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米経済の先行きに対する不透明感は薄れつつあるものの、FRBがインフレ抑制と雇用の下支えのどちらに重点を置くべきかは、依然として明確ではない」 --------
8/12 シュミッド・カンザスシティ連銀総裁 「経済が勢いをなお維持し、企業の楽観的な見方が強まり、インフレが当局の目標を上回る水準にとどまる中では、緩やかな引き締め状態にある金融政策スタンスを当面維持するのが適切だ」 --------
8/7 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「年内に1回の利下げが実施される可能性が高いとの見通しは変わらない」、「関税の影響が一時的なものなのか、あるいはもっと持続的なものなのかという点が、現時点では恐らく最も重要な問題だ」、「この日発動された関税の影響が、一時的な物価上昇にとどまるという教科書的な関税の例に当てはまるには、いくらか会懐疑的な理由がある」、「これは一度きりで、ある朝目が覚めたら全ての関税が明らかになっているという話ではない。むしろ、関税が頻繁に変化することで、消費者の意識の中に関税や物価上昇見通しが浮かぶ期間が長くなり、インフレ期待が高まるリスクがある」 --------
8/6 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「景気は減速している。短期的にFF金利の調整を開始することが適切になる可能性がある」、「関税の影響が明確になるまで、どれくらい待てるのか、それが現在、私を悩ませている。最良の選択肢が、多少の調整を行い、その後に一時停止や方向転換を迫られる展開であっても、関税の影響が明確になるまで何もしないで待つより望ましい可能性がある」 --------
8/6 クック・FRB理事 「7月の雇用統計は懸念すべき内容だった。こうしたデータの修正は転換点でよく見られる傾向だ」 --------
8/4 デーリー・SF連銀総裁 (先週のFOMCの決定について)、「もう1会合見送る用意はあったが永遠に待つことはできない」、「インフレが加速・波及したり、雇用市場が持ち直したりすれば、2回未満の利下げでも十分かもしれないが、より可能性が高いのは、2回を超える利下げが必要になるかもしれないことだと考える。労働市場が弱い局面に入りつつある一方で、インフレへの波及が見られない場合、さらに措置を講じる準備も必要というのが私の見解だ」 --------
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和