ドル円は新たな円高材料が出わけでもないのに、先週末のNY市場ではついに105円台前半までドルが売られ、2016年11月以来の水準を記録しています。黒田総裁が国会で「2019年ごろに出口戦略政策を検討・議論していくことは間違いない」と発言したことを捉え、ドルが売られ、105円台前半を試すきっかになりました。
この発言は、これまでのことを述べたまでに過ぎませんでしたが、メディアのヘッドラインに反応してドル売り円高が進んだものでした。黒田総裁は財務省時代には財務官を経験し、為替介入の指揮を執ったこともあり、市場がどのような反応をするのかについては熟知しているはずですが、やや言葉の順番を誤ったとの印象は拭えません。これまでなら、「出口を議論するのは時期尚早」といった言い回しをしていたのが、当たり前のことを述べただけではあったものの、市場の反応を考慮してなかったと言えるでしょう。さらに円高が進むようだと、輸入物価を押し下げ、目標である2%の物価上昇にも逆風が強まることにもなりかねません。
心配なのはトランプ大統領の保護貿易の強化です。大統領は鉄鋼とアルミの輸入制限を発表し、さらに内容を強化する可能性もあります。中国を意図したものとは思われますが、ロス商務長官は「全ての国が対象になる」と述べるなど、もし実行されたら日本も例外にはなり得ません。EUは直ちに反対を表明し、ユンケル欧州委員長は対抗措置を発表しています。久し振りに聞く「貿易戦争」という言葉ですが、このままエスカレートしていけば、世界貿易の縮小につながり、世界景気そのものを押し下げることにもなります。米国が保護貿易に走り、中国がそれを批判するというこれまでの「主従転倒」に、何が正しいのかさえ分からなくなって来ました。
ドル円は105円24銭まで売られ、105円割れは回避できてはいるものの、現時点でも105円台半ばで推移しており、105円割れは「時間の問題」といった雰囲気です。今週末には2月の雇用統計も発表されます。失業率など、引き続き改善される見込みで、米労働市場の改善→利上げ回数の上振れ→米債券安→長期金利上昇→株価下落→円が買われるといサイクルに入ることも予想されます。もっとも、金利高に反応してドルが買われることも考えられますが、現時点ではその価可能性は低いと考えられます。
引き続きドルの上値は重いと思われます。ドイツやイタリアの政治的リスクが後退したユーロドルが反転に向かうと、再びドル安が加速する可能性もあることから、ユーロドルの動きにも注意が必要です。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
