ドル円はついに底堅かった105円台を割り込み、先週末には104円66銭前後までドル安が進みました。トランプ大統領が中国製品に対する関税引き上げに関する大統領令に署名したことで、その対抗措置を検討している中国との間で、貿易戦争がエスカレ−トするといった観測から、リクオフの円買いが一段と進んだ格好になってきました。
GDPで世界1位と2位の国で保護貿易主義が高まれば、2国間だけではなく、日本を含めた多くの先進国にも大きな影響を及ぼすのは必至です。今のところ中国側の対抗措置はジーンズや、バーボンなどの輸入関税引き上げに留まり、米国の最大で600億ドルという規模に比べると小粒に留まっています。しかし中国の駐米大使は「ありとあらゆる選択肢を考えている」と述べており、このまま終わりそうにはありません。懸念されるのはその選択肢の中に、米国債の買い控えや売却が入っていることです。
中国は今年1月末時点で米国債を1兆1700億ドル(約120兆円)保有しているそうです。この債券を売れば、価格が下がり、長期金利は急騰することになります。
売却しないまでも、購入を控えるというメッセージだけで、米国債が売られることになり、金利上昇につながります。米金利の上昇が、2月の初旬に米国株の急落を招いたことでも分かるように、今後金利上昇が見込まれれば、株価の下落に伴って、好調な米景気そのものにもブレーキをかける可能性があります。もっとも、仮にそうなれば現時点で「今年は3回」と見込まれている利上げ観測も後退し、こちらもドル売り要因になろうかと思います。
為替市場はこれまでになく、政治的要因に翻弄されています。トランプ大統領の強硬な保護主義政策の行き過ぎや、閣僚人事の相次ぐ解任など、政権そのものがリスクになりつつあります。今後は対日貿易赤字解消のための施策も発表してくる可能性もあります。
ドル円はじりじりと上値を切り下げ、104円台半ばまでドル安が進んできました。今週はインフレ指標など、比較的重要な経済指標が発表されますが、上記政治的リスクの前に存在感も薄れ気味です。まだしばらくドルの上値が重い展開が続くと見られ、戻りを売る展開が続きそうです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
