米国と中国の貿易問題の成り行きに一喜一憂し、神経質な展開が続いているマーケットですが、先週は、それでもこのまま貿易戦争には突入しないとの見方が強まり、ドル円は大きく反発しました。3月下旬に104円66銭前後まで下落したドル円は、先週後半には107円49銭まで戻す場面がありました。まだトレンドが変わったとは言い切れない中、徐々にドルの底値が切り上がっており、日足チャートでは雲の下限まで到達しており、「ドル安局面の終わりの始まり」なのか、「依然としてモメンタムは下向きで、単なる戻しにすぎない」のか、重要な局面に差し掛かっていると言えます。
全てはトランプ政権の「貿易赤字解消のための政策次第」といっても過言ではない今の状況ですが、最終的な対中国に対する制裁関税案は5月中旬になる見込みで、中国側もそれまでは動けない状況かと思われます。同時に水面下では米中貿易戦争を避けるべく交渉も行われているようで、5月中旬に米国側から最終案が公表される間にも何らかの歩み寄りがあるかもしれません。一方で先週末、ムニューシン米財務長官が述べたように「貿易戦争のリスクはある」のも事実で、投資家にとっては引き続き動きにくい日々が続きそうです。
そんな中、先週末には3月の雇用統計が発表されました。予想外だったのは非農業部門雇用者数の大幅な減少でした。予想の18万人に対して10.3万人と大きく減少していましたが、ただ好調だった2月分がさらに上方修正されたため直近3カ月平均で見れば、FRBが景気拡大の目安としている20万人を超えています。従って現時点では、これ事体がFRBの利上げに影響を与えることはなさそうです。また注目されている賃金の上昇率は前月よりも上昇しており、引き続き緩やかな上昇が見込まれることから当初想定されたように、今後も年内に数回の利上げは見込めそうです。次期NY連銀総裁に就任することが決まっている、サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁は先週6日の講演で改めて、年3−4回の利上げを支持することを表明しています。またパウエルFRB議長も同じようなスタンスで、「現時点で利上げを中止しなければならないような事象は見当たらない」という認識を示しています。
雇用統計も終わり、今週は米中貿易問題に関する報道以外には為替を動かす材料は少ないと思われます。ただ、来週には日米首脳会談や朝鮮半島での南北首脳会談、さらにはメルケル独首相も米国を訪問し、トランプ大統領と貿易問題について話し合うと見られています。日独共に対米国では、大幅な輸出超になっています。ここで貿易不均衡問題が話し合われることにもなろうかと思います。こと貿易問題については、中間選挙を意識してのパフォーマンスとの批判もありますが、強気の態度で出てくることも予想されます。テクニカル的にはやや上昇機運が高まったとはいえ、当面ドルの上値が重い展開は変わらないと思います。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
