5月の雇用統計は予想を上回る結果でした。失業率は3.8%と、先月からさらに0.1ポイント下がり、実に18年1カ月ぶりの低水準でした。また非農業部門雇用者数は、事前予想の19万人から大きく上振れして22.3万人でした。ただ、引き続き賃金の伸びは低調で、ここを見るかぎりはインフレ懸念もそうは盛り上がらず、今月行われるFOMCでの利上げは確実と見ますが、残り利上げが2回と見ることにはつながらないと思われます。
今月のFOMCは来週の12−13日に開催され、ここで今年2回目の利上げはほぼ確実と見られます。ただ市場の一部が予想している「今年あと3回の利上げ」と考えるには、まだ早計と言えそうです。懸念材料の一つであった米朝首脳会談は、当初予定通り今月12日にシンガポールで行われることになりました。非核化を巡っては米朝に隔たりがあり、そう簡単には合意には達しないと見られ、共同声明文も発表されないと予想されていましたが、ここに来て非核化では米国側が譲歩するとの報道も出ています。その結果、北朝鮮問題は市場ではリスク要因から外され、トランプ大統領が言うように今後も継続的に米朝トップ会談の開催が決まるようだと、円売り材料になる可能性すら出てきました。
懸念材料は米中貿易問題と米国への自動車輸入に関する関税引き上げ問題です。いずれもトランプ政権の「保護主義」がさらに強まると、極めて大きな問題となり、日本にとってもその影響は放置できないものになります。先週カナダで行われた「G7」でも、貿易問題を巡って米国が他の6カ国から厳しい非難を浴びる結果となり、「G6プラス1」とまで言われ、G7内に亀裂が入ったと報道されています。仮にトランプ大統領がこれまで通り、「アメリカファースト」政策を突き進めていくようだと、米国にとっても、景気下押し要因にもなりかねません。このように考えると、今後のFOMCで残り3回の利上げ見込むには、不透明な部分が大きすぎると言えます。
ドル円は先週、南欧の政治的リスクを懸念してドルの下値を試しましたが、それでも108円は維持され、週明けの月曜日には109円台後半までドルが買い戻されて取引が始まっています。110円台を回復するのかどうかが今週の焦点の一つと見ていますが、来週からは重要イベントが多く、一方的な相場展開にはなりにくいと予想されます。今週はドルがしっかりした展開と予想し、先週抜けなかった108円を割り込むことはないと思いますが、まだ手探りな状況が続くと思われます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
