ドル円は引き続き110円を挟んだもみ合いが続いていますが、先週は後半にややドル高が進み、111円に迫る水準までドルが買われましたが、勢いはなく111円台乗せには至っていません。しかし、週明けの本日(2日)には、東京時間に111円台に乗せ、一時111円06銭までドル高が進む場面もありました。5月22日以来、約1カ月ぶりのドル高水準です。
先週末のPCEデフレータでは5月のそれが、市場予想を上回る「2.3%」だったことで、今年残り2回の利上げが正当化された結果となり、FRBは今後も緩やかな利上げを継続していくとの見方がドルを買い上げたものと見られます。先週末には、ホワイトハウスで、トランプ大統領の側近でもある、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長が、FRBに対して利上げを急がないよう、暗に圧力をかける発言を行いましたが、FRBはそういった圧力には屈しないとの見方が優勢です。
米中貿易問題の先行きが不透明なことがドルの上値を抑えていると思われ、上述したように、冷静に動きを見る限り、ドルは上に行きたがっているように思えます。問題は貿易戦争の行方です。ブルームバーグニュースでも「Trade War 」(貿易戦争)という言葉を使い始めたように、昨日1日からは、中国、EUに続いて、同盟国であるカナダも米国製品に対して166億カナダドル(約1兆4000億円)相当の関税引き上げを発動しています。全ては米国が自国の利益を守るために導入した保護貿易に対する報復の意味合いを持っています。今回のカナダの措置は、これまで米国に対して発動された関税額では最大級のものになります。
今後さらにこの動きが各国に広がるようだと、「貿易戦争」が拡大し、世界の成長率を下げることになる危険があります。その最大の焦点は今月6日に発動が予定されている、中国に対して2000億ドル(約22兆円)という大規模な報復関税引き上げが予定されている、米国の政策の行方でしょう。現時点ではその成り行きが全く予想できず、どこかで妥協点を探るとは思っていますが、中国側が態度を硬化させていることもあり、予断は許しません。
金価格は約は半年ぶりの安値を記録し、ここからはリスク回避の動きが高まっていることは伺えません。またドル円も111円台まで円が売られ、ここでも同様にリスク回避は進んでいません。結局市場参加者は今回の「貿易戦争」が、これ以上拡大するとは予想していないことになります。個人的にはやや楽観すぎるのではないかと思っています。今週末は恒例の雇用統計があります。これ自体、もう為替の変動材料にはなりにくいのではないかと思いますが、同時に26日が米国の中国に対する制裁発動の期限です。今週は、その制裁の内容次第ではどちらにも大きく動くと考えておくべきでしょう。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
