先週6日の金曜日、日本時間午後1時1分にトランプ政権は、340億ドル(約3兆4000億円)相当の中国製品に対する関税引き上げを発動しました。これを受け中国政府も直ちに同規模の報復関税を発動しています。またトランプ大統領は、別の160億ドル相当の中国製品への追加関税を2週間以内に発動する可能性も示唆しています。
世界的な貿易戦争の幕が切って落とされたとの見方がありますが、不思議なことにその後のドル円は小幅ながら上昇し、日経平均株価は200円を超える値上がりで週末の取引を終えています。340億ドルに関する関税引き上げはマーケットに織り込み済みということのようですが、この影響は数ヵ月後に出てくると思われます。実際、5月の米貿易収支は前月よりも6%以上も赤字額が減少し、米国から中国への大豆の輸出が2倍に急増していました。関税引き上げが予想されていたため、米国からの駆け込み輸出が急増したと見られます。
既にEU、カナダ、そして中国が米国製品への関税引き上げを実施し、「米国包囲網」が徐々にできつつありますが、問題はこれでトランプ大統領が強硬姿勢を改める可能性が低いことです。むしろ、関税引き上げで目に見えて貿易収支の改善が実感できれば、さらに過激な政策を検討してくることも予想されます。先週大統領自ら示唆したように、さらに160億ドル(約1兆6000億円)の製品に対する追加関税を2週間以内に発動したり、これも当初、嚇かしのように述べていた2000億ドルという大規模な追加関税が実際に発動されない限り、市場は冷静な対応を見せると思われますが、それらが実現する可能性が高まるようだ、その時は市場も冷静ではいられないはずです。
歴史的な米朝首脳会談が行われてから、まもなく1カ月が経過します。この間、北朝鮮の非核化問題はほとんど進んでいません。先週末、この問題を話し合う目的でポンペオ国務長官が再び平壌を訪問しました。北朝鮮側の高官と会談し、トランプ大統領から金委員長への親書を渡したと報道されていますが、具体的な成果は出ていません。ブルームバーグによると、ポンペオ長官が北朝鮮を出発するとすぐに、北朝鮮外務省の報道官は朝鮮中央通信を通じて声明を発表し、「米国の一方的で強盗のような非核化の要求は、米朝首脳会談から1カ月足らずで両国のつながりを一変させる恐れがある」と警告したと伝えています。会談実現当初は「大成功だった」とされたトランプ外交も、今のところその後の成果はなく、一部には「北朝鮮のほうが上手だった」といった評価の声も出ています。この会談で、北朝鮮リスクは一気に低下し、為替市場では「過去の出来事で、既に材料にはなり得ない」と見られていましたが、まだまだ事は簡単ではないようです。
今週は、特段重要なイベントや材料はなく、動きにくい展開です。そうでなくとも、値幅が出ない相場展開が続いていますが、110円割れがあるかどうかが一つの注目ポイントです。また、上値は5月21日に記録した、111円40銭近辺が抜け切れるかどうかが注目されます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
