先週のドル円は狭いレンジ内で推移し、112円台に乗せる場面はあったものの、米中貿易問題がさらに悪化する可能性が強まったことを背景に、ドルの上値を追う動きは限定的でした。週末に発表された7月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が予想を下回ったものの、直近2カ月分が上方修正されたことで、こちらは相殺。しかしISM非製造業景況指数が今年最も低い水準だったことで、ドル円はやや売られ、111円20−30銭で越週しました。
それにしても日米の金融政策決定会合と米雇用統計という、「重量級」のイベントの割には、ドル円は動きません。この間の値幅は1円にも届いていません。市場参加者が「動かない」と割り切って、早めの決済をしていることもあろうかと思いますが、もしかしたら「嵐の前の静けさ」かもしれません。
その際、きっかけになる可能性があるのが、やはり米中貿易問題の深刻化です。米国と中国は報復が報復を呼ぶ、泥沼化して来ました。両国とも現時点では一歩も引く構えを見せず、米国が検討中の2000億ドル(約22兆円)に対して、今度は中国が報復関税として5207品目に最大25%の関税をかけ、約600億ドル(約6兆7000億円)の関税を発表しました。中国商務省は「米側が企業や消費者の利益を省みず事態をエスカレートさせており、中国は必要な反撃措置を取らざるを得ない」との談話を発表しています。
中国の米国からの年間輸入総額は1300億ドルのため、仮にさらにエスカレートし、トランプ大統領が既に示唆しているように、5000億ドルにまで制裁を高めた場合、中国は関税では報復に出ることは不可能ということになります。その際に、中国がどのような措置を講じるのか?一部には保有している「米国債の売却をちらつかせる」といった見方もありますが、これは実際問題簡単ではありません。保有額が膨大なため、自分で自分の首を絞めることになるからです。その他、どのような方法があるのかわかりませんが、そこで初めて「譲歩」ということになるのでしょうか。トランプ大統領の側近も「大統領の意志を甘く見ないほうがいい」と、警告をしています。個人的には「大規模な貿易戦争にはならない」と予想していましたが、どうやら、その予想ははずれ、行くところまで行くような雰囲気になっています。
今週のドル円は重要な材料がない上、日本側が夏休みモードに入ることもあり、値動きは少ないと予想されますが、上でも述べた通り、「嵐の前の静けさ」かもしれないため、用心にこしたことはありません。なにしろトランプ大統領が一言ツイートすれば、相場は大きく動く可能性があるわけで、それがいつになるのか予想不可能だからです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
