111円台でもみ合っていたドル円はやや下値を切り下げ、先週後半からは110円台が定着しそうな動きに変わってきました。米中貿易問題の行方が余りにも不透明なことに加え、トルコ発の新興国不安が勃発し、ユーロ円などクロス円が大きく売られたことで、ドル円も水準を下方に下げて来ました。
今週は重要な経済指標の発表はありませんが、重要なイベントが控えています。先ずは米中貿易問題の行方を左右する「米中次官級貿易協議」が22日からワシントンで行われます。協議は、王受文商務次官率いる中国代表が、マルパス米財務次官ら、米当局者と会談する予定です。今回の通商協議再開は、中国側から申し出たもので、その意味では中国政府も、「このままでは行くところまで行く」との危機感を持っていることが垣間見れます。そうなると会談で、中国側が何らかの妥協案を提示してくる可能性もあり、トランプ政権側からの妥協の可能性はほとんどないと考えられ、今後さらなる貿易摩擦を回避するには、中国側がどのような対応を見せるのかによります。
先週末の報道では、11月の多国間会議の席で、米中首脳会談実現の可能性を、米中両国が探っているとの報道がありました。実現すれば、これ以上の米中関係の悪化を回避する絶好のチャンスになり得るとは思いますが、現在米国が検討中の2000億ドル(約21兆1000億円)の追加関税が9月初旬にも発動されると思われ、米中首脳会談が実現したとしても、日程的に間に合いません。この追加関税が発動されると、米中貿易問題は新たなステージに入ったと考えられ、為替の水準にも大きな影響を与えることになると予想されます。
次に重要なのはやはり米国のトルコに対する追加制裁です。トランプ大統領は、トルコに拘束されている米牧師の即時釈放を求めており、釈放されないようだと、1週間程度の猶予期間を経て、さらなる追加制裁を発動すると明言しています。このまま釈放されないようだと、今週中にも追加制裁が発表される可能性があり、再びトルコリラの下落に伴い、ユーロ円などのクロス円が売られる可能性があります。
このように考えると今週は、先週同様に110円割れを試すことになろうかと思います。米経済指標もどちらかといえば、下振れする傾向が強まっており、経済指標がドル円を押し上げる材料にはなりにくいと言えます。上記2つの材料が好転すれば話は別でしょうが、そうでなければ現時点でドル高材料を探すのは簡単ではありません。唯一考えられるのが、3つ目のイベントである「ジャクソンホール」でのパウエルFRB議長の講演でしょう。ご承知の通り、9月のFOMCでは今年3回目となる利上げの可能性は高く、現時点でも90%を超える確率となっています。パウエル議長が講演で、上記米中貿易問題や対トルコへの制裁など悪材料があるにも関わらず、米景気に対する自信を示すようだと、12月利上げ観測の高まりにもつながり、ドルが買われることになります
足元のドル円はレンジの下限を試しており、先週も110円割れを試して失敗しています。110円前後が底堅いのは事実ですが、底堅ければ底堅いほど、割り込んだ際の勢いも強く、一気に下落するパターンは、今回のユーロドルの1.15割れでも確認したところです。110円割れには注意が必要です。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
