注目された先週末のパウエルFRB議長の講演では、緩やかな利上げを継続するも、急がないという点を強調していたという印象です。「利上げを急げば景気後退のリスクを招き、利上げを遅らせれば物価の加熱を招く」と指摘しながらも、その物価上昇については、「2%を超えて加速する明確な兆しはみえず、加熱するリスクの高まりもない」と述べています。つまり、利上げを遅らせても良いという風に理解できます。
この辺りのニュアンスを感じ取って、市場の一部には「FRBは利上げ路線を停止する」との見方が広がったものと思われます。カプラン・ダラス連銀総裁も「あと3、4回の追加利上げは適切だが、その後はいったん離れて、さまざまな経済指標を点検すべきだ」と述べており、FOMCメンバーの中にも、その意見に同調する中銀総裁が他にもいるようです。2019年には、FF金利の中立的な水準も、ある程度見えてくるのではないでしょうか。
先週、もう一つ注目されたイベントは、米中通商協議の行方でした。こちらは予想通り、何ら進展や成果はありませんでした。毎朝更新している「アナリストレポート」でも触れましたが、結局中国側の大幅な譲歩はなかったということです。現時点では、米国側は強気の姿勢を崩しておらず、何らかの解決案が示されるとすれば、それはすなわち中国側が、大きく譲歩したことを意味すると考えます。
この結果、中国からの輸入品にさらに2000億ドル(約22兆3000億円)相当の関税引き上げを行う、第3弾の発動も現実味を帯びてきました。ブルームバーグニュースは、この夏の間、リスクを検討したり警告をしてきたトランプ政権の「対中タカ派」が「ハト派」を制し、秋には攻勢に出る見通しだと報じています。その「タカ派」のメンバーとして、同メディアは、ライトハイザー通商代表部(USTR)代表と、ナバロ国家通商会議(NTC)委員長の名前を挙げています。
現在、第3弾の追加制裁はパブリックコメントの期間を9月6日に終え、それ以降に発動されると見られていますが、発動されれば、これまでとは規模が大きく異なり、米中の景気にもじわりとその影響が及ぶものと思われます。そして、さらには日本を含む世界の景気にも影響を与え、GDPの下振れ要因になることは、既にIMFが警告している通りです。その際には、堅調に推移しているドル円にも下落圧力がかかってくると予想しています。先週前半に一時110円を割り込み、109円77銭までドル安円高が進みましたが、好調な米景気を材料に直ぐに反発し、再び111円台半ばまでドルが買い戻されていますが、再度ドル売りが活発になるものと予想しています。米長期金利も3%から緩やかに下落傾向を見せており、本来ならもう少しドル円の水準は下方に位置していてもおかしくはないと思っていますが、好調な米景気とそれに伴う株高が、唯一ドル高を支えていると見ています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
