ドル円は先週後半には、約1カ月ぶりとなる111円83銭までドル高が進み、テクニカルでも妙味が出てき、上昇期待もありましたが、結局112円テストには至らず、再び111円を割り込む水準に押し戻されてきました。トランプ大統領が2000億ドルの追加関税を来週にも発動するのではないかとの関係者の観測が報道され、米中貿易問題がさらにエスカレートするのは避けられないとの見方が広がっています。また新興国通貨が再び下げ足を早め、アルゼンチンペソなどが大きく売られたことも、リスク回避の流れに傾き、円を買う動きにつながっていました。
今週の焦点はやはり上記、対中国への2000億ドルの追加関税引き上げが実施されるのかどうかと、同時にカナダとのNAFTA再交渉が同意に達するかどうかという点です。どちらも今のところ、トランプ大統領の強行姿勢は変わらないと見られているため、リスク回避の流れに傾く可能性の方が高いと予想しています。ただ、それでも先週のように、ドル円は110円を割り込んでも、「ばねが仕掛けられているかのように」直ぐに反発して戻ってきます。
この極めて安定したドル円の動きにはどのような背景があるのでしょうか?ドルを支えているのは言うまでもなく、「米国の一人勝ち」と言われている、景気の良さです。そのため、3%では安定しないまでも、2.85%台という足元の金利水準は魅力的で、特にゼロ金利に苦しんでいる日本の投資家にとって米国は、運用先としては重要な地位を占めていると言えるでしょう。今後金利差が拡大すればするほど、円を売ってドルを買い、そのドルで米国債などへの投資が増えるのは、自然な流れです。
一方ドルの上値を抑えているのが、「トランプリスク」と言えます。上述のように、中国への「制裁関税第3弾」は早ければ今週中にも発動日が発表される可能性があります。実施されれば、これまでとは規模が異なり、様々な影響が出てくることも予想されます。同時に、中国が米国に対してどのような報復措置を講じてくるのかも注目されます。そしてもう一つはNAFTA再交渉が進まないカナダとの貿易交渉です。こちらは、カナダの外相が強気の姿勢を示せば、トランプ大統領も「われわれが米国にとって公正な合意を結ぶことにならなければ、カナダが出て行くことになる」と主張し一歩も引きません。
カナダとの貿易交渉が合意に至らなければ、日本の自動車メーカーにとっても事は重大で、トヨタ自動車などは、カナダで自動車を製造し、米国へ輸出しています。メキシコでも同じように現地生産して米国へ輸出していますが、その数はメキシコの比ではありません。仮に、カナダからの輸入車に25%の関税が掛けられれば、日本の自動車メーカーにとっても、生産調整を余儀なくさせられることになるかもしれません。発動されれば、円買い材料かと思われます。
このように、ドル円は基本的には110−112円の間で微妙なバランスを保っており、レンジ相場が続いていますが、今週はそれに加えて週末には雇用統計もあります。この雇用統計についても、ここ4カ月ほどは発表後ほとんど相場が動かず、これまでの雇用統計のイメージはありません。ただ、こちらも安心しきってはいけません。今回も動かないという保証はありません。今日から9月相場が始まりました。今月のFOMCでは利上げも予想されていることもあり、少なくとも今月は先月のような動きではないと予想しています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
