ドル円はこれまでとは違って、ようやく動きが出てきました。今月9月は重要なイベントが多いことから、少なくとも8月のように値幅の出ないことはないと思っていましたが、先週後半からようやく本来の動きが戻ってきたようです。
先週は週前半にドル高が進み、5日のNY市場では111円76銭までドル高が進みました。約1カ月ぶりのドル高水準をつけたことで、筆者はもう少しドル高が進むと予想しましたが、その後に110円台前半までドル安が進みました。トランプ大統領が日本との貿易関係に不満を持っているとの報道がきっかけでした。そもそもトランプ大統領が日本との貿易赤字に不満を持っていることは誰もが認識していましたが、それが活字となって報道されると、やはり円高に振れてしまいます。
大統領は7日にも、「合意に達しなければ日本は大変な問題になる」と述べ、今後の日本に対しても貿易の不均衡解消を積極的に迫ってくると予想されます。大統領は日本に対して大人しい姿勢を維持してきたのは、「日本との貿易協議に本腰を入れてこなかった唯一の理由は、中国と協議していたことだ」と述べ、中国への追加関税引き上げがじわじわと進んでおり、早ければ今週にも追加関税第3弾が発動される可能性があることから、「次のターゲットは日本だ」ということで、いよいよ矛先が日本に向いてきました。日米貿易協議は今月下旬に開催される予定になっていますが、ここで何らかの進展がないと、再びトランプ氏の「口撃」が強まることになります。
ドル円は先週、上にも下にもややレンジを抜けたような動きがありましたが、結局111円を挟んだ水準に戻り、明確な方向性は出てきません。先週末の雇用統計で、8月の平均賃金は2.9%(前年比)と発表されました。実に2009年6月以来の高水準でしたが、企業業績の上振れや失業率の低下などで、企業で働く先端の人々まで賃金が上昇していると見られます。それでもドル円の上値は重く、112円が近いようで届きません。これは偏に米国の貿易問題の先行きが読めないことに行き着きます。
トランプ大統領の保護貿易主義は留まるところを知りません。メキシコとはNAFTAの再交渉で大筋合意に達しましたが、カナダには手こずっています。貿易戦争の行方は中国、カナダ、日本がある程度譲歩しない限り、終わりが見えない状況です。従って、足元の111円を挟むドル円の水準は「良好な米経済と貿易問題」が綱引きをしている状態と見られます。言い変えれば、貿易問題がある程度の落ち着きを見せれば、ドル円は113円〜115円程度まで上昇する可能性があり、反対にさらに悪化するようだと、110円を割り込むこともあり得ると予想しています。今月は上記貿易問題や通商協議、さらにはFOMCなど重要なイベントがあり、国内に目を向けると自民党の総裁選も控えています。110−112円のレンジをどちらかに抜ける可能性は高いと思われます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
