ドル円は、ゆっくりと、しかし確実に上昇しています。週明けの月曜日の午前中には、113円目前までドル高が進み、7月19日以来となる円安水準をつけました。米中貿易問題は昨日の24日には、今回の制裁関税の中では最大級である2000億ドル(約22兆6000億円)の関税引き上げが発動され、米中問題はまさに「貿易戦争」という領域に突入したと言えます。中国も同日に600億ドルの報復関税を発動しており、終わりの見えない「泥沼化」が続いています。それでも、市場参加者は楽観的な姿勢を崩さず、リスク許容度を高めています。NYダウは連日で最高値を更新しており、債券市場でも米10年債が売り込まれ、長期金利は3.1%に接近するなど、「リスクオン」の流れが続いています。
中国の王受文商務次官は25日の記者会見で、「中国はナイフをのどに突き付けられての交渉を行うことはできない」と述べています。(ブルームバーグ)ただ同時に、米国が誠実さを示し、約束を守る限り、貿易交渉を通じた解決策があり得る、とも述べており、貿易交渉をいつ再開するかは米国次第との見解を示しています。結局、閣僚級の協議ではなかなか解決の糸口は見つからず、米中トップ会談の必要性が徐々に増しているように思われます。その意味では、米中貿易戦争は、本来は中国が米国の知的財産権を大きく侵害していることに対する制裁の意味で始まった関税引き上げでしたが、いつの間にか「関税<引き上げ」が一人歩きしてしまっている印象です。今や、どちらが先に音を上げるかという「消耗戦」になっている状況です。
今週は米中問題は一服し、今度は日米通商協議(FFR)に焦点が移ります。本来なら本日(25日)、茂木経済再生担当相が米USTR代表のライトハイザー氏と協議に望む予定でしたが、本日米国側から延期の申し出があり、協議は遅れています。安倍首相は昨日のトランプ大統領との会談で、日米の通商問題については26日には最終判断を下す意向を示しています。その前に、トランプ大統領との首脳会談を控えており、日米通商問題も山場を迎えそうな状況です。
ドル円は順調に上昇してきましたが、よく見ると、対ドルよりも対ユーロなどの「クロス円」に対して、より売られています。出口戦略のメドがたってきたユーロ圏では来年後半には「利上げ」に踏み切るものと思われ、出口の見えない円の独歩安が、対主要通貨では鮮明になっています。足元の「円、ドル、ユーロ」の動きを見ると、ユーロが最強の通貨で、円が最弱通貨という展開になっています。
今週は明日FOMCが開かれ、今年3回目となる利上げは確実視されています。そのため注目点は、「利上げでは」なく、その後のパウエル議長の発言や、FOMCメンバーのFF金利の先行き見通しなどから、「12月のFOMCでの利上げの可能性を探る」ことです。今年8月のジャクソンホールでのパウエル議長の発言で「利上げは急がない」ことが確認されましたが、現時点では12月利上げの可能性が消えたわけではありません。12月利上げの可能性が再浮上するようだと、ドル円は113円台を回復し、足元の動きと同じように下値を徐々に切り上げる展開が予想されますが、一方で激化する貿易戦争の影響を織り込む形での言及が、パウエル議長からあるかもしれません。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
