先週は米国発の株価の急落の影響が世界中に伝播し、「リスク回避の嵐」が吹き荒れました。日本株も先週末は小幅高で終わりましたが、11日(木)には日経平均株価が1000円を超える下げを見せるなど、「対岸のぼやが、気がつけば自分の家が燃えた」といった状況でした。ドル円の動きは、株式市場ほど混乱は見られなかったものの、それでもNY市場では一時111円83銭まで円が買い戻される場面もありました。
日本株が小幅高で越週したこともあり、先週末のNY株式市場も反発して終わっています。しかし週明けの月曜日は再び日本株が大幅な下落を見せています。先週末インドネシアのバリ島で行われた「G20」会合後に、ムニューシン米財務長官が記者団に「これからの貿易交渉では、どの国とも為替問題を協議していく。日本を例外にすることはしない」と述べたことで、今後交渉が行われる日米物品貿易協定(TAG)で、為替条項が盛り込まれる可能性が浮上したことが株価を押し下げています。その後、茂木経済・再生担当大臣はこれを否定していますが、これまでのトランプ政権の対応を考えると、日本も例外ではないことは想像に難くありません。
さらにドル円の上値を重くしているのが、早ければ今週にも発表されると見られる米財務省の「為替報告書」で、中国が為替操作国に認定されるかどうかです。もし中国が操作国として認定されれば、米中関係はさらに悪化し、市場ではリスク回避の流れが強まり、円高が進むことになります。またその場合、米通商代表部(USTR)の日本に対する対応も一段と強行になることも想定されます。「為替報告書」は年に2回、財務省が作成し議会に報告するものです。
足元のドル円は株価の動きに歩調を合わせ上下しています。そのため、株価の安定がドル円反発へのドライバーになりますが、現時点での円を取り巻く環境を見ると、やや円買い材料の方が多いと見られます。上記「為替条項」や「為替報告書」だけではなく、米国とサウジアラビアの関係も微妙になってきました。サウジアラビア政府に批判的な記者が殺害された疑惑に関して、サウジ政府が関与した可能性が出てきたことで、トランプ大統領はサウジ政府が関与していれば、「われわれは厳しく憤慨する。厳罰が待っている」と述べ、サウジへの制裁をほのめかしています。
株価は週明けの東京株式市場で再び大幅な下げになっていることから、週明けのNY市場でも同じような展開になれば、「負の連鎖」につながり、ドル円も111円台半ばを試す可能性も出てきます。国際社会はかなり流動的で、不透明です。ここは株価の行方をじっくりと見るしかありません。111円の半ばを明確に下回るようだと、「日足」チャートでもトレンドの転換が確認される可能性が出てきます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
