ドル円は先週、約1カ月ぶりに114円台を回復しました。今年最大のイベントであった米中間選挙では、事前予想通り上院では引き続き共和党が過半数を維持し、下院では民主党が過半数を奪回し、いわゆる「ねじれ議会」になりましたが、市場では株価が大きく上昇し、ドル円を押し上げました。また8日に公表されたFOMC声明文でも、「さらなる利上げが正当化される」との文言があり、12月のFOMCでの利上げ観測が高まったことも、ドル円が114円台に乗せる一因になったようです。
ドルは対円だけではなく、主要通貨に対して強含みで推移しており、その意味では「円安」ではなく、「ドル高」というべき状況です。長期金利を見ると、ドルは円やユーロだけではなく、ポンドや豪ドルよりも高水準で、今や主要通貨ではドルは「高金利通貨」と言えます。本来マネーは金利の高い通貨へ流れる傾向があります。では、トルコリラなど、さらに金利の高い通貨が強くなるはずといった意見も出そうですが、トルコではインフレ率が政策金利を大きく上回る状況が続いており、直近10月の消費者物価指数も25%を超えていました。
ここでは、「実質金利」を見る必要があります。実質金利は、「表面金利」(名目金利)から「インフレ率」をひいたものです。米国の10月の消費者物価指数は年率で2.3%で、長期金利は3.2%前後ですから、実質金利は0.9%ということになります。トルコの政策金利である、1週間ものレポ金利は現在24%ですので、実質金利はマイナス1%以上ということになります。マネーが、リラではなくドルに流れる理由が理解できます。もっとも通貨リラが長い間下落してきたのは、高インフレ率だけではありません。
今後の焦点はもちろん米国の長期金利と株価の行方です。「恐怖指数」と呼ばれる「VIX指数」は「16台」まで下がり、恐怖の目安と見られている「20」を下回ってきました。まだ日中の振れ幅は依然として大きいですが、やや落ち着いてきた印象です。株価が落ち着き、再び上昇に向かえばドル円も再度114円台を回復して、115円をテストする可能性もあると予想しています。米中貿易戦争の影響から、中国経済は軟調な経済指標が出ています。ちょうどこのタイミングで、当社の取引先であるドイツ銀行が中国経済の見通しに関するセミナーを、中国拠点から専門家を呼び開催しました。筆者もこのセミナーに参加してきましたので、その内容は明日の「今日のアナリストレポート」でお話したいと思います。
ユーロドルが再び1.13台前半まで下落してきました。ドル高基調が続いている上に、ユーロ圏では景気の鈍化を示す指標が相次ぎ、さらにイタリアやドイツの政治的リスクも浮上しています。今回1.13を割り込めば、今度は1.12を割り込む水準までユーロ安が進むと予想しています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
