ドル円は先週一時112円台に落とされる場面もありましたが、ほぼ113円台で推移し、「米中首脳会談」に注目しながらも113円台半ばで越週しました。「米中首脳会談」では、米国は中国に対する追加関税の25%への引き上げを猶予しトランプ大統領は「首脳同士によるすばらしい取引だ」と自賛しましたが、今後は閣僚レベルで知財保護やサイバー攻撃など、5分野で協議を行うことで合意し、90日間の猶予を決めました。ただし、90日間で合意に達しなかった場合には、25%の関税引き上げを実施するというものです。今回のトップ会談で「交渉決裂」という最悪の事態は回避できましたが、まだ貿易戦争の終結を見るには至っていないことになります。
ただ米中が世界経済への影響を考え、お互いに歩み寄ったことは評価していいと思います。今回の会談が決裂すれば、来年早々から2000億ドル(約22兆7000億円)相当の 中国製品に対して25%の関税が適応されることになり、景気減速が鮮明な中国景気をさらに冷やすことになり、これは米国にとっても中国からの輸入品が大きく値上がりすることを意味し、米景気にとっても厳しいことになります。
経済規模で世界第1位の米国と第2位の中国が景気減速に陥れば、第3位の日本も無傷ではいられません。そして世界第1位から3位までの国が景気後退に陥れば、その先には世界の景気低迷という状況になる可能性が高いと予想されます。今回の会談ではひとまずそのリスクは避けられたという意味で、評価できるかと思います。
先週行われたパウエルFRB議長の講演は、かなり市場へのインパクトがありました。議長は現行の政策金利が「中立にわずかに低い水準」だとの認識を示しました。クラリダFRB副議長や一部連銀総裁などが、今後の利上げには慎重な姿勢を見せていましたが、FRBのトップが同じように「ハト派的」な認識に変わってきたことで、来年3回と見られていた「利上げ観測」が大きく修正を迫られ、「利上げ停止観測」が台頭してきました。この発言以来、米債券市場では債券を買う動きが強まり、10年債利回りは2カ月半ぶりに3%の大台を割り込む水準まで低下してきました。今後米金利が上昇しないとすれば、これまで金利高に支えられてきたドルも、一段のドル高が見込みにくいことになります。今週は5日(水)にパウエル議長の議会証言があります。ここでの発言内容に再び注目が集まりそうです。
今週末は毎月恒例の「雇用統計」の発表です。市場予想は、失業率が前回と同じく「3.7%」で、非農業部門雇用者数は前回の25万人から減少して「19.9万人」と予想されています。雇用者数で前回よりも大幅な減少が予想されてはいますが、仮に予想通りであれば、20万人前後ということで、大きな影響はないと思われます。今年後半の傾向として、雇用統計の結果には以前ほど為替市場への影響力はありません。それは、3カ月単位で見れば雇用者数の伸びはおおむね均衡していることと、そもそも好調な米景気に対する見方は変わっていないとういうことが、理由として挙げられそうです。
ただそうは言っても、先月26日には、米自動車メーカー最大手のGMが北米の5工場の生産停止を発表しました。貿易戦争の影響から、鉄鋼とアルミニウムの原材料費が高騰していることが、その理由です。GMは生産停止に伴い約6300人のリストラを発表しており、このような動きが今後も他の製造メーカから出るようだと雇用統計にも変化が出て、再び「注目」を集め、発表される度に相場のかく乱要因になるかもしれません。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
