先週は日米株価の下落が止らず、さらに長期金利も節目の3%を大きく割りこみ、一時は2.84%台まで低下したことが、ドルの上値を抑えて来ました。ドル円は、さらにFRBによる利上げ観測が急速に後退し、112円台前半まで下落しました。ドルの上値が徐々に重くなり、どこまでドルを売り込めるのかといった雰囲気の中ですが、112円台を割り込まずに反発した動きを見ると、上値が重いものの現時点では底堅いとも言えそうです。
問題は株価の今後の行方と、長期金利の動きです。どちらも、「どこまで下がるのか?」によってドル円も再び114円の方向に向かうのか、あるいは9月以来となる110円に向かうのかが決まってきそうです。そして、その株価と金利に大きな影響を与えると見られるのが、「米中貿易戦争」です。「貿易戦争」が今後収束に向かうのか、あるいは現在10%の関税が25%に引き上げられるのかが鍵を握っています。
今月1日のブエノスアイレスでの「米中首脳会談」では、関税引き上げはひとまず見送られ、90日間の猶予が設けられました。90日間の猶予が終わる来年2月末までに中国がどこまで米国を納得させられるのかきわめて不透明で、予測も出来ません。現時点ではこの間での合意は難しく、結局25%への関税引き上げが発動されるといった見方が有力ですが、決め込むのは危険です。
仮にそのような事態になった場合、既に景気減速の兆候が鮮明な中国の景気がさらに悪化することになります。同時に、中国からの輸入品が値上がりし、米国の輸入物価を押し上げることにもなり、米国景気への影響も避けられないことになります。足元の株価の下落要因のひとつが、FRBによる利上げシナリオがあります。金利が急速に上昇したことで、リスク資産の株が大きく売られました。米景気が悪化すれば、来年のどこかで「利上げ休止」となる公算が高いと思われますが、それはそれで、「金利引き上げができないほど景気が悪い」ことが注目され、今度は景気の悪さに株価が低迷することも考えられます。既にアップルなどのIT株は高値から相当下げていますが、今後さらに株価下落が続くようだと、「逆資産効果」から景気を下押しすることも予想されます。
先週末に発表された11月の米雇用統計は、全般的には予想を下回りましたが、それでも失業率や賃金などは「良好」でした。欧州では「ブレグジット」や「イタリアの財政問題」に加え、ドイツの欧州のリーダー国として地位にも不安がでています。また、日本でも来年は10月に消費税が引き上げられる可能性が高く、景気への影響も懸念されます。これらは基本的には「自国通貨売り材料」となるため、このままドルが大きく売られていくかどうかも疑問です。今週はクリスマス前の最後のラリーになるかもしれませんが、ドル円はやや下値目線で見ていますが、112円を維持できるかどうかも、目先の注目ポイントになりそうです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
