ドル円は先週末、米GDP速報値が予想を上回ったことや、米長期金利が2.75%台まで上昇したことを材料に、約2カ月ぶりに112円台までドル高が進みました。それまで続いた110円台前半〜111円台前半のレンジを上抜けし、112円08銭までドルが買われたことで、ようやく狭いレンジを上抜けし、上値がどこまであるのかを試す展開が予想されます。同時にこれで、これまでの動きのないドル円も動き出すのではないかと思います。「レンジブレイク」を果たしたドル円が、今週はどこまで上値を追えるのかを見極めることになろうかと思います。
米中通商協議の進展や、米政府機関再閉鎖を回避できたにもかかわらず上昇しないドル円でしたが、やはりその重い腰を動かしたのは、米長期金利でした。米長期金利が2カ月ぶりに2.75%台に乗せたことで、金利差に着目したドル買いが出たものと思われます。日足の200日移平均線という重要なレジスタンスラインを超えたことで、テクニカル的にもドルの上昇を示唆し、ストップを巻き込んでの上昇につながったと見られます。
今週はそこそこ材料が揃っているため、これまでよりも値幅を伴った動きが予想されます。明日5日からは中国で「全人代」が開催されます。これは日本で言う「国会」に相当するもので、この初日に李克強首相が政府活動報告を行い、景気刺激策にも言及する可能性があります。中国は昨年のGDPが6.6%と、米中貿易戦争の影響もあり急激に成長が鈍化しており、減税などを含めた大規模な景気刺激策が実施されるとの見方が強まっています。景気刺激策の規模が市場予想を超えるようだと、世界景気全体に与える影響から株価やドルが上昇する可能性があります。心配された米国との通商協議は、早ければ今月中旬にもトランプ大統領と習近平主席が直接会談を行い、何とか合意に達する見通しです。
週末には2月の雇用統計が発表されます。市場予想は、失業率が3.9%で、非農業部門雇用者数は18.5万人と、先月よりは減少すると見られていますが、それでもこの内容に近い結果がでれば、引き続き労働市場は堅調に拡大していると判断されます。従って、今回も雇用統計が相場を大きく動かす要因にはなりにくいと考えられます。ただ、結果が大きく下振れした際には、相場の波乱要因にはなり得るため、注意が必要です。
今週はトランプ大統領の個人的なスキャンダルも材料になるかもしれません。先週、ちょうど米朝首脳会談が行われていたタイミングで、トランプ氏の元顧問弁護士のマイケル・コーエン被告が下院で証言を行い、大統領が「さまざまな犯罪」に直接関与していたことを明らかにしています。ブルームバーグによると、これを受け下院司法委員会は、60人余りに資料提出を求める要請を行うことを決め、弾劾手続きの資料集めに着手する予定だと伝えています。この問題で結論が出るのはまだ先のようですが、「トランプリスク」は依然として残っているのは事実です。これらも含めて、今週は111円台を固めることができるのかという点が注目です。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
