先週は2月の米雇用統計で、雇用者数の増加が思ったほど伸びず、ドル円は110円台後半まで押し戻されました。米中通商協議の合意観測や、ISM非製造業の上振れを手がかりに112円台前半まで続伸したドル円でしたが、112円台定着には至っていません。
考えてみれば、1月3日の早朝に104円台まで急落したドル円は、市場関係者の間では年初から円の先高観が強く、「今年前半は円高に振れる」といった見方が優勢でした。年初のドルの急落は、その相場観を印象付けるのに十分な役割を果たしたと言えます。ところが実際には、その後ドル円は極めて緩やかですが着実に下値を切り上げ、112円台まで到達したわけです。ある意味、よく112円台を回復したという印象でした。
そのドル円も112円台をつけて上昇も一服という状況ですが、今週は目先の上値の限界を確認したことから、今度は底値がどこまであるのかを確認する展開だと予想しています。ただドル円を取り巻く状況では、目だって円を買う理由も見つかりません。あえて探すとすれば、中国や欧州では景気減速が鮮明で、米国でも先週の雇用統計のように、経済指標の下振れが散見され、今後のデータ次第ではFRBによる年内利上げが「ゼロ」になることも考えられます。ECBは、「利上げは早くとも来年以降」と、年内の金利正常化への道をあきらめています。また、中国人民銀行もさらなる金融緩和に踏み切るタイミングを図っています。翻って日本では追加緩和の余地は限られており、米欧や中国で金利低下が続いても、いま以上の金利低下は望みにくいと言えます。従って、今後主要国の景気減速がさらに進むようだと、例えば、日米の金利差が縮小する可能性があり、ドル安要因になり得ます。
今週は英国のEU離脱の採決が最も注目される材料になります。12日には修正案の採決があり、否決された場合、今度は合意なき離脱に関して採決が行われます。市場の見方は「否決される」との方向に傾いていますが、残された日数は残り少ないため、今週末にはある程度の方向性が見えてくると思われます。その方向に沿ってポンドも大きく振れると予想されます。ドル円はポンド/ドルの影響を受ける可能性がありますが、引き続き多大きな値動きは期待薄でしょう。足元の動きは110−112円のレンジを形成しているものと思います。
円との相関が高い米長期金利は先週、2.62%台で取引きを終えています。この金利水準は今年1月3日以来、2カ月ぶりの低水準です。順調に回復していた米株式市場が再び下落傾向を見せていることで、債券に資金が流れていることが背景ですが、ドル円はこの金利水準ほど売られてはいません。ただ、今後さらに金利が下がるようだと、ドル円も明確に追随してくることも予想されます。「Brexit」の行方とともに、米長期金利の動きにも注意したいところです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
