3月の雇用統計では、失業率が3.8%と前月と変わらず、注目されていた非農業部門雇用者数は、予想を大きく上回る19.6万人でした。さらに2月分と1月分も若干ですが、上方修正され、これで1〜3月の平均で見ると、18万人を超えており、まずまずの内容です。少なくとも、現時点では労働市場の減速は見られず、好調な労働市場は維持されていると見られます。
また、同時に今回の結果を踏まえて、米景気に対する悲観論はひとまず後退したと見ることもできます。好調な雇用統計が出たことで、FRBによる利上げ期待も高まりそうな予想もありますが、物価上昇率はインフレとは無縁で、賃金上昇率の鈍化とあいまって金融政策は「ニュートラル」と見るのが自然かと思います。先週末のNY市場で株価と長期金利がともに上昇したことが、市場が「適温相場の再来」と受け止めている証左と言えます。今後の金利政策で、FRBが利上げに動くのか、あるいは利下げに動くのかは、まさに今後の経済データ次第です。
為替市場にとっては、引き続き方向感を見つけにくい相場展開が続くと見ていますが、材料不足が続く中、やはり重要な材料としては「米中通商協議」が挙げられます。先週末時点で中国の代表団との協議は一旦終わり、トランプ大統領は「大成功」と評価したものの、合意に達するかどうかは明言を避けています。ホワイトハウスは声明で.「重要な作業が残っており、交渉責任者や次官ら、交渉団メンバーは引き続き、残る問題の解決に向け協議する」と説明しており、クドロー国家経済会議(NEC)委員長もCBSの番組で、「慎重ながらも楽観的見解もしくはそれ以上のもの」発言し、今後は多くの電話会議を通じて通商合意に「一段と近づいている」との認識を示しました。一方中国国営新華社は、「残っているのは全て難問だ」と指摘しています。(ブルームバーグ)焦点は、今後の協議で中国側がさらに踏み込んだ譲歩ができるかどうかという点かと思います。
もう一つの材料は言うまでもなく、今週金曜日にEUからの離脱期限が来る Brexitです。メイ首相の3回の修正案は否決されたものの、最大野党である労働党のコービン党首と建設的な案を協議するとしたことで、まだ「合意なき離脱」を回避できる可能性は残っていますが、残された時間は多くありません。メイ首相は依然として「短期の離脱延期」をEU側に求めていますが、EU側はその前提として議会での承認を求めています。イングランド銀行のカーニー総裁は、合意なき離脱のリスクが「驚くほど高い状況にある」と述べており、今週は再び通貨ポンドが乱高下する「ポンドウィーク」になると予想されます。
ドル円については、上値は限定的と見ていましたが、予想以上の底堅さが続いています。今月は機関投資家にとっては新年度にあたるため、新規のドル買いが出易いという状況もありますが、112円台乗せも手の届くところまできました。焦点は、112円台に乗せた場合、先月記録した112円14銭のドル高値を抜けるかどうかということになります。個人的には依然として慎重姿勢を維持したいところと考えています。また、1.12割れが底堅いユーロドルの、1.11台後半が下抜けできるのかどうかという点にも注目したいと思います。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
