先週のドル円は週央に111円を割り込み、110円85銭までドル安が進みましたが、翌日には直ぐに切り返して、111円台後半まで反発し、先週末には今年3月以来となる112円台を回復しています。週明けの東京市場でも上値は重そうに見えるものの、112円前後で推移しており、予想外(?)の強さを見せています。
米経済指標は強弱まちまちな上、FRBの金融政策は中立で、相場を動かす材料に欠けることから決定的な動きにはなっていません。それでも再び112円台に乗せる動きは、日米金利差だけでは説明できず、市場はトランプ大統領の対中国やEUに対する強行姿勢にも慣れてきた可能性があります。そしてそれは、本日から始まる日米物品貿易協議(TAG)にも言えるのかもしれません。すでに協議に先立ってムニューシン財務長官は、為替問題も議題に載せることを宣言しており、協議には厳しい姿勢で臨むことを窺わせています。仮に「為替条項」が合意文書に盛り込まれるような事態になれば、ドル安円高が進むと考えられますが、市場は楽観的な見方をしているようです。
先週末のNYでドル円が112円台に乗せた理由の一つに、中国の景気回復を示す経済指標がありました。3月の貿易収支では、輸出が前年同月比14.2%伸び、通商摩擦が激化している中での輸出の伸びに、中国景気の底入れを指摘する声が急速に高まったことが挙げられます。今朝の報道でも、李克強中国首相は先週クロアチアで行われたビジネスフォーラムで3月以降の製造業に「かなり前向きな変化」があったとして、6−6.5%とした今年の政府目標である経済成長の達成に自信を見せていました。(ブルームバーグ)今週17日に発表される中国の1−3月期GDPは、6.3%と予想されていますが、上振れする可能性を指摘する声が高まっています。世界経済に与える影響も大きいことから、今回のGDPはかなり注目されていると見られます。
今週最も注目される材料は何と言っても、上記日米物品貿易協議の行方でしょう。日本側の代表である茂木経済再生担当大臣はこれまで「為替問題が議題に挙がるとは思わない」と発言していましたが、上で述べたように、米国側はそのつもりはありません。「為替条項」と並んで、「自動車問題」も重要な議題です。これについてもすでにトヨタは米国へのさらなる投資を表明し、自動車問題が議題にならないよう先手を打ってはいましたが、そこはトランプ大統領のこと、そう簡単に日本側に有利な配慮を行ってくれるかどうかは不明です。
チャートではドル高有利とのサインが点灯していますが、5週間ぶりの112円台ということもあり、輸出筋を中心にドル売り注文も出やすいでしょう。それらをこなして「年初来高値」を更新し、どこまで上値を伸ばせるかも注目です。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
