米中通商協議に関して、これまでに何度も「すばらしく進展している」と述べてきたトランプ大統領が突然、10日から中国に対する関税を現行の10%から25%に引け上げることをツイートしたことは「寝耳に水」でした。市場は、「ほぼ合意に近い状況」と予想していただけにインパクトも大きく、ドル円は111円台前半から110円台前半へと急落し、6日の上海株式市場では6%近い下落幅を記録して取引を終えています。中国側は予定通り9日から10日にワシントンで米中協議を行うための準備をしていると公表していますが、現時点では今週10日から実際に関税が引き上げられるのかも含めて、極めて不透明です。
確かに米中通商協議は昨年後半から何度も協議が重ねられてきましたが、いまだに最終合意には達していません。それでも、中国側がかなりの譲歩をみせたことで、最後は関税の全面撤廃を主張する中国と、一部を残すことを主張する米国との間で、どのような調整が見られるのかという点が注目されていましたが、ここにきて25%への関税適用といった「出発点」に戻るという状況は想定外です。仮に関税が25%に引き上げられれば、米国と中国だけではなく、世界経済に与える影響は小さくはありません。連休明けの東京株式市場では、午後には日経平均株価が360円ほど下げる場面もあり、連休前の株先高観はすっかりなりを潜めた状況になっています。同時に関税引き上げが実施されれば、低金利と株高がほどよく続く「適温相場」も終焉を迎えることになる可能性もあります。
いずれにしても今週は米中協議の動きが相場を大きく左右するものと思われます。ドル円がこれまでの111円〜112円の狭いレンジに戻るのか、あるいは110円台前半まで急落した後やや値を戻していますが、再び円買いが再燃して110円を大きく割り込んでいくのか、正念場になりそうです。チャートでは、110円30銭前後が日足の雲の下限にあたり、ここを明確に割り込むとドル円の新しいトレンドが形成される可能性が出てきます。低下傾向にあった「VIX指数」も「トランプ・リスク」を織り込む形で連休明けには「15.5」近辺まで上昇を見せています。投資家が、そろりと身構えていることを物語っています。先週発表された4月の米雇用当統計で再確認されたように、米労働市場は依然として良好です。この状況がすぐに崩れることはないとしても、ドル円については目線をやや下方に修正をしておく必要はあろうかと思います。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。
